クラウス・オガーマンの名盤徹底ガイド|ジャズとボサノヴァを彩る編曲技法を聴く
序文 — クラウス・オガーマンとは
クラウス・オガーマン(Claus Ogerman、1930–2016)はドイツ出身の編曲家/指揮者/作曲家で、ジャズ、ボサノヴァ、ポップス、映画音楽まで幅広く手がけた巨匠です。弦の書法や管弦楽的な色彩感覚に優れ、ソロ奏者や歌手の表現を引き立てる"装飾ではない"アレンジで知られます。本コラムではレコード愛好家向けに「聴くべきオガーマン関係盤」を厳選して紹介し、それぞれの聴きどころや背景を深掘りします。
おすすめレコード(厳選)
Antonio Carlos Jobim — Wave (1967)
おすすめ理由:オガーマンのブラジリアン・センスとオーケストレーションが明確に表れる名盤。ジョビンのメロディを邪魔せずに豊かな弦や木管で色付けし、ボサノヴァの柔らかい質感と都会的な洗練を両立させます。
代表曲・聴きどころ:タイトル曲「Wave」はもちろん、弦の編成とハーモニーの広がりを聴くとオガーマンの技法(分散和音、色彩的なブラス/木管の配置)がよく分かります。テンポやアーティキュレーションで生まれる「余裕感」を注目して聴いてください。
Frank Sinatra & Antônio Carlos Jobim (1967)
おすすめ理由:大物歌手とブラジル音楽作家の共演作を、オガーマンが洗練された室内オーケストラで取りまとめた一枚。シンプルで透明感のあるアレンジは、シナトラのヴォーカル表現を際立たせます。
代表曲・聴きどころ:「The Girl from Ipanema」や「Dindi」的レパートリーの解釈で、弦の微細な動きや間の取り方がシナトラのフレージングをどう支えているかを確認しましょう。余計な装飾を避け、和聲の色味で感情を引き出す手腕が聴けます。
Bill Evans & Claus Ogerman — Symbiosis (1974)
おすすめ理由:ジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスとの協働で作られたコンチェルト的作品。オガーマン自身の作曲・管弦楽の技量が前面に出ており、ジャズ・即興と交響的アレンジの接合を試みた野心作です。
代表曲・聴きどころ:ジャズ・トリオやソロの即興が、オーケストラのスコアとどう対話するかが最大の聴きどころ。和声進行の細やかな変化、オーケストレーションによるダイナミクスの構築に注目してください。
Antonio Carlos Jobim — ほかのジョビン作品(オガーマン編曲のもの)
おすすめ理由:オガーマンはジョビンと複数回組み、曲ごとに異なる色彩感を与えています。ジョビンのレパートリーを深く味わいたい人は、オガーマン編曲のトラックを意識して探すと新たな魅力が見つかります。
聴きどころ:曲ごとに用いる弦アーティキュレーションやハーモニーの差異、打楽器/ギターの配置感など、アレンジの「選択」が曲の気分をどう変えるかを比較してみてください。
Claus Ogerman(リーダー作/インスト作品) — 諸LP・コンピレーション
おすすめ理由:映画音楽的テクスチャーやインストのショート・ピース、あるいはラウンジ的な録音など、オガーマン名義の作品群は彼のオーケストレーション技法を純粋に楽しめる資料です。いわゆる「easy listening」的な側面もありますが、細部は職人的で聴き応えがあります。
聴きどころ:楽器配置、弦の刻み方、管の使い分け、和声の色付け。作品によってはストリング・アレンジの実験的側面が明確に出るため、研究的に聴くのもおすすめです。
オガーマン作品を深く聴くためのポイント
和声の「色」を聴く — オガーマンは和声によって楽器の色を変える名手です。単にコードが変わるのを追うのではなく、どの楽器にどんな分割和音・伸ばしを与えているかを注意深く聴いてください。
間(スペース)の活用 — 彼のアレンジは「詰め込みすぎない」ことで知られます。休符や間の取り方、沈黙の扱いが歌やソロを引き立てる点に注目しましょう。
ソロとオーケストラの対話 — 特に「Symbiosis」のような作品では、ソリスト(ピアノ、ギター、歌)とオーケストラの掛け合いが構造の要です。どの瞬間で管弦楽が主導し、どの瞬間で引くかを追えば作曲・編曲の意図が見えてきます。
録音時代とプロダクション — 1960〜70年代のジャズ/ブラジル音楽、CTI/Verve系の音作りの文脈で聴くと、オガーマンの編曲がどう「当時の音」に組み込まれているか理解が深まります。
聴き比べのすすめ
同じ曲をオガーマン編曲版と他の編曲家版で聴き比べると、アレンジの違いが際立ちます。例えばジョビンの代表曲をオガーマン編曲(弦主体)と、よりジャズ寄り・小編成寄りのアレンジで比べると、曲の表情やリズム感がどのように変わるかがよく分かります。
コレクター向けの探し方(簡潔に)
オガーマン名義のオリジナルLPや、彼が編曲を担当した著名アルバム(Jobim、Sinatra、Bill Evans など)を中心に探すとよいです。
コンピレーションやリマスター盤も多数出ており、初期マスターに近い音質を求めるなら信頼できるリイシュー・レーベル(公式リマスター)を選ぶのが安心です。
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参考文献
- Claus Ogerman — Wikipedia
- Wave (Antônio Carlos Jobim album) — Wikipedia
- Francis Albert Sinatra & Antônio Carlos Jobim — Wikipedia
- Symbiosis (Bill Evans & Claus Ogerman) — Wikipedia
- Claus Ogerman — AllMusic(ディスコグラフィ等)
- Claus Ogerman — Discogs(詳細なレコーディング情報)


