スタンリー・タレンタイン 名盤ガイド:初期ハードバップからCTI期までの聴き比べレコードと厳選5盤
はじめに — スタンリー・タレンタインという音楽家
Stanley Turrentine(スタンリー・タレンタイン)は、ソウルフルで温かみのあるテナー・サックスの音色で知られるジャズ・レジェンドです。ブルースやゴスペルの感性を持ち込みつつ、ハードバップ、ソウルジャズ、そして70年代のCTI時代にはより洗練されたクロスオーバー路線まで幅広く活躍しました。本稿では「レコードで聴くと格別」なおすすめ盤を、キャリアの流れと音楽的特徴を踏まえて深掘りします。各盤の聴きどころ、代表的な曲、選ぶ理由、購入時のチェックポイントなども併せて解説します(レコードの再生・保管・メンテナンスのコツそのものは扱いません)。
選び方の視点(短く)
- キャリアごとの代表作を押さえる:初期のブルース寄りハードバップ〜ソウルジャズ期、シャーリー・スコットらとのオルガン・コンボ期、1970年代CTI期の豪華アレンジ期の3段階で聴くと流れがつかめます。
- 「雰囲気」で選ぶ:骨太で泥臭いグルーヴを楽しみたいなら初期〜オルガン系、洗練されたファンク/フュージョン風味を求めるならCTI期がおすすめ。
- 盤の版(オリジナル/リイシュー)を確認:オリジナルの音色やジャケットの雰囲気を重視するか、リマスターの音像を重視するかで選び方が変わります。下で目安を示します。
おすすめ盤 1:Blue Hour — The Three Sounds と共演(初期の名盤)
なぜ聴くべきか:The Three Sounds(ピアノ・トリオ)との共演作は、タレンタインの温かく歌うようなテナーが際立つ名演集です。ピアノ・トリオのゆったりとしたハーモニーに乗るテナーの「歌心」がストレートに伝わり、ジャズの聴きやすさと深さを同時に味わえます。
- 音楽的特徴:ゆったりしたテンポ、ブルージーでソウルフルなフレーズ、親しみやすいメロディの扱い。
- 代表的な聴きどころ:タイトル曲のムード、バラードでの聞かせどころ、トリオの隙間を活かす呼吸感。
- 選ぶ理由:入門にも最適。タレンタインの「声」としてのサックスを純粋に楽しめる。
- 購入時のチェック:オリジナル盤の雰囲気を重視するか、後年のリマスターで音の分離感を重視するかを決めるとよい。
おすすめ盤 2:初期リーダー作(ブルース感とハードバップの接点)
なぜ聴くべきか:タレンタインのリーダー作(1960年前後~60年代初頭)は、ハードバップの堅牢さとソウルジャズの即効性が同居しています。ここでの演奏から「歌うテナー」という彼の本質が確立されます。
- 音楽的特徴:ブルースに根ざしたフレーズ、短めのテーマに対するソロの展開、リズムセクションとの強いグルーヴ。
- 代表的な聴きどころ:イントロからソロへの流れ、シンプルなテーマが即興で豊かに展開される部分。
- 選ぶ理由:タレンタインの“基礎”を知るには最適。ジャズの王道を楽しみたいリスナーにおすすめ。
- 購入時のチェック:当時の録音は演奏の熱気が魅力なのでオリジナル盤に価値があります。再発は音質の違いを確認して選びましょう。
おすすめ盤 3:Shirley Scott とのオルガン・コンボ作品群(ソウルジャズの真髄)
なぜ聴くべきか:オルガン奏者の Shirley Scott(タレンタインはのちに結婚)との共演作は、特にソウルジャズ/グルーヴ志向のファンにとって外せません。オルガンとテナーの相性が抜群で、歌心あるフレーズとドライヴ感のあるビートが魅力です。
- 音楽的特徴:オルガンのウォームな低音・裏打ち、テナーのメロウな歌い回し、ダンスにも向くグルーヴ感。
- 代表的な聴きどころ:テーマのキャッチーさ、オルガンとのコール&レスポンス、ソウルフルな短いソロの切れ味。
- 選ぶ理由:ソウルジャズ好きならまずこのコンボ群へ。ジャズとR&Bの接点を強烈に感じられます。
- 購入時のチェック:コンピレーションやまとめ盤も多いので、気に入った演奏が収録されているかトラックリストを確認してください。
おすすめ盤 4:Sugar(CTI期の代表作 — 1970年代の傑作)
なぜ聴くべきか:"Sugar"はタレンタインの代表作として広く知られる一枚で、CTIレーベルらしい豪華制作・アレンジとタレンタインの濃密なサックスが混じり合った名盤です。ソウル/ファンクの要素を取り入れつつ、ジャズ的なインタープレイも保たれているため、両方の魅力を味わえます。
- 音楽的特徴:長尺の叙情的な演奏、ホーンやアレンジの彩り、ファンク/ソウルのグルーヴを取り込んだサウンドプロダクション。
- 代表的な聴きどころ:タイトル曲のダイナミックな展開、リラックスしたが濃密なソロの時間感。
- 選ぶ理由:タレンタインの“聴かせる”能力が最も際立つ時期で、ジャズ入門者からコアなファンまで広くおすすめできます。
- 購入時のチェック:CTIのオリジナル盤はジャケットや音像の質感も楽しめます。リイシューでの音質向上も多いので、視聴して選ぶのがよいでしょう。
おすすめ盤 5:CTI期の他の作品(アレンジの妙とクロスオーバー)
なぜ聴くべきか:1970年代のCTI期は、タレンタインがよりアレンジ志向で幅広いリスナーにリーチした時期。ストリングスやブラスを配した編成で、ジャズの域を越えた“洗練されたグルーヴ”を提示します。夜のドライブ、バータイムなどシチュエーションに合うものが多いです。
- 音楽的特徴:豪華な編成、長めのトラック、ポップス/ソウルのカバーをジャズ的に料理。
- 代表的な聴きどころ:アレンジとの対話、シンプルなメロディラインを引き伸ばす即興。
- 選ぶ理由:音質やアレンジの好みで選ぶことで、ジャズの別側面を楽しめる。
- 購入時のチェック:CTIの盤は盤質やマスタリング差が影響するため、盤ごとの音を試聴できると安心です。
聴き比べの進め方(実践プラン)
- ステップ1(入門):「Blue Hour」やオルガン・コンボ盤でタレンタインの“声”としてのサックスを感じる。
- ステップ2(理解):初期リーダー作でハードバップ/ソウルジャズの文脈を抑える。
- ステップ3(展開):「Sugar」などCTI期でサウンドスケールの大きさとアレンジの影響を体感する。
- ステップ4(掘り下げ):気に入った時期のセッションをさらに追いかけ、共演者(例:Shirley Scott、The Three Sounds、CTI周辺の一流ミュージシャン)に注目する。
購入時の実用的アドバイス(盤選びのチェックポイント)
- ジャケットとマトリクス:オリジナル盤はジャケットやレーベル表記、マトリクス(Runout)の確認で真贋やプレス情報を確認。
- マスターの違い:オリジナル・アナログ・マスターの風合いと、近年のデジタル・リマスターのクリアさは好みが分かれます。試聴できれば比較を推奨。
- 版による音質差:特にCTIやBlue Noteの再発はマスタリングが多数あるので、音の厚みや低域の出方を確認すると満足度が上がります。
- 国内盤/輸入盤:国内(日本)盤のリイシューはしばしば音が良いものがあり、コレクター向けの帯付き仕様も存在します。
まとめ — どこから聴くか?
はじめてタレンタインをレコードで楽しむなら、まずは「Blue Hour」(The Three Sounds共演)でその歌うようなテナー・サウンドに耳を奪われ、その後「Sugar」などで彼の表現の幅(ソウル〜クロスオーバー)を体験するのが王道ルートです。シャーリー・スコットとのオルガン作品群は、その中間に位置するソウルジャズの楽しさを存分に与えてくれます。
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参考文献
- Stanley Turrentine — Wikipedia
- Sugar (Stanley Turrentine album) — Wikipedia
- Blue Hour (The Three Sounds & Stanley Turrentine) — Wikipedia
- Stanley Turrentine — AllMusic
- Stanley Turrentine — Discogs(詳細ディスコグラフィ)


