スタンリー・タレンタインの音色と歌心—太く暖かなテナーで聴くソウルジャズ入門
プロフィール
スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine, 1934–2000)は、アメリカ出身のテナーサックス奏者。深く太い音色とブルージーでソウルフルなフレージングで知られ、ソウル・ジャズやハード・バップの重要人物として長年にわたり評価されてきました。ブルーノート(Blue Note)での60年代の録音で名をあげ、70年代にはCTIレーベルで商業的にも成功を収めました。
音楽的特徴と魅力
- 温かく厚みのある音色:タレンタインの音は太く、ブロウする力を感じさせつつも丸みがあり、聞き手の感情に直接働きかけます。
- ブルースとゴスペルに根ざした語り口:フレーズにブルース的なスケールやゴスペル由来のニュアンスが自然に混ざり、ジャズの即興がより“歌う”ようになります。
- シンプルさの中の深さ:技巧的に高速フレーズを連ねるタイプではなく、短いモチーフを繰り返し、微妙なタイミングとニュアンスで感情を表現するのが得意です。
- リズム感とスウィング:グルーヴを作る能力に長け、オルガンやリズムセクションとの相互作用で心地よいノリを生み出します。
- レパートリーの幅:バラードからファンキーなソウル・ジャズ、コンテンポラリーなクロスオーバーまで幅広くこなし、多様な聴衆を惹きつけました。
キャリアの流れと主要コラボレーション
タレンタインはR&Bや小編成の現場で磨かれた感覚を持ち、それをジャズに持ち込んだことで独自性を確立しました。初期からブルーノート期にはモダン・ジャズの文脈で硬軟自在にプレイし、後年のCTI期ではプロダクション志向の音作りと相まって幅広いリスナーを獲得しました。
- オルガン奏者との相性が特に良く、シャーリー・スコット(Shirley Scott)とは多数の共演作を残し、ソウルジャズの代表的なコンビとなりました。
- CTIでの活動時は、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)などの名手やアレンジャーと組んで、より洗練されたサウンドにも取り組みました。
- スタンダードやポピュラー曲のジャズ化にも長け、誰もが知る曲を自分の色で染め上げる解釈力も魅力です。
代表曲・名盤(入門ガイド)
まずは彼の「声」を知ることが肝心です。以下は入門〜深掘りにおすすめの作品群です。
- Sugar(CTI期の代表作)— タイトでソウルフルな演奏、美しいバラードからグルーヴィーなナンバーまでを収録。CTIサウンドとの融合が傑出しています。
- Blue Note期のアルバム群— 60年代に残した一連の録音は、ハード・バップとソウルジャズの橋渡しをする演奏が多く、タレンタインの基礎がよくわかります。
- Shirley Scottとの共演盤— オルガントリオとの相互作用で、タレンタインのブルージーさとメロディの歌心がはっきり現れます。
- ベスト/コンピレーション— 初めて聴く人はまず選曲の良いベスト盤で“らしさ”を把握してから、気に入った時期のオリジナル・アルバムに進むと理解が深まります。
聴くときのポイント(鑑賞ガイド)
- まずは音色に注目する:息の使い方、アタックと持続のバランス、トーンの暖かさを感じ取ってください。
- フレーズの「間(ま)」に耳を澄ます:短い休符や呼吸の処理が表情につながります。
- バラードとアップテンポでの対比を聴き分ける:バラードでは歌心が、ファンキーな曲ではグルーヴ感が際立ちます。
- 伴奏楽器との会話を観察する:特にオルガンやギター、ベースとの呼吸でタレンタインの音楽性がよく見えます。
- 歌ものカヴァーを探す:ポピュラー曲をどう自分のものにしているかを見ると、彼の解釈力がよく分かります。
影響とレガシー
タレンタインは「テナーの歌い手」として後続のプレイヤーに大きな影響を与えました。ジャズだけでなくソウルやR&B寄りのグルーヴをジャズに持ち込んだ点は、1970年代のクロスオーバー/フュージョンの文脈にもつながります。また、セッションや共演を通じて多くのミュージシャンにとって“頼れる存在”であり続けました。
どこから聴き始めるか(初心者向けの順序)
- まずは代表曲・代表作のベスト盤で“声”に慣れる
- 気に入ったらCTIの「Sugar」を聴いてサウンドの幅を知る
- ブルーノート期のセッションで初期の色合いや共演者との化学反応を掘る
- シャーリー・スコット等との共演作でオルガン・コンボでの魅力を確認する
まとめ
スタンリー・タレンタインは、太く暖かい音色とソウルフルな表現で、ジャズの中に「歌うテナー」の世界を強く残した人物です。技術や速さだけで評価されがちな時代でも、彼は“歌心”と“グルーヴ”を第一に据えた表現で多くのリスナーを惹きつけました。ジャズ入門者から深い愛好家まで、幅広く勧められるアーティストです。
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参考文献
- Stanley Turrentine — Wikipedia
- Stanley Turrentine — AllMusic Biography
- Stanley Turrentine — Discogs(ディスコグラフィ)
- Stanley Turrentine, 66, Jazz Saxophonist — The New York Times (obituary)


