スタンリー・タレンタイン:太く歌うテナーサックスで聴くブルースとソウルジャズの名盤ガイド
プロフィール
スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)は、1934年3月5日、アメリカ・ペンシルベニア州ピッツバーグ生まれのテナーサクソフォン奏者で、2000年9月12日に逝去しました。ブルースとゴスペルに根ざした温かく太い音色、歌うようなフレージングで知られ、ハードバップやソウルジャズの重要人物として評価されています。兄にトランペッターのトミー・タレンタイン(Tommy Turrentine)がおり、オルガニストのシャーリー・スコット(Shirley Scott)とは共演・共同生活を含む関係がありました。
音楽的魅力 — なぜ聴くべきか
- 声のようなテナー・トーン:タレンタインの音は非常に人間的で「歌う」感覚があります。太く丸みを帯び、柔らかなビブラートと鋭いアクセントを自在に使い分けるため、メロディをそのまま語るような演奏が魅力です。
- ブルースとソウルの融合:彼のフレージングにはゴスペルやR&Bの語法が色濃く反映されており、ジャズの即興性にポピュラー音楽の親しみやすさが混ざります。これにより、ジャズに詳しくないリスナーにも響きやすい表現力を持ちます。
- 間(ま)と節回しの巧みさ:過度に音を詰め込まない「間」を活かした演奏は、聴き手にフレーズの余韻を与え、歌心を際立たせます。テーマの繰り返しやモチーフの発展で簡潔に感情を伝えるのが得意です。
- ジャンルを横断する適応力:ブルー・ノートでのハードバップ/ソウルジャズ期から、CTIでのオーケストレーションを伴うクロスオーバー期まで、時代や編成に応じた表現を自然にこなしました。
演奏スタイルとテクニックの特徴
タレンタインの演奏は、技巧的な速弾きよりも「色気」と「間」を重視します。主な特徴は以下の通りです。
- 音色重視:中低音域を中心に豊かな倍音を含む音色で、聴けばすぐに彼と分かる個性的なサウンド。
- ブルージーなフレーズ構築:短いビブラート、ブルーノートの活用、コール&レスポンス的なフレーズを頻繁に用いる。
- リズム感とグルーヴ:オルガンやリズムセクションと絡む際のスウィング感とグルーブの作り方が抜群で、聴き手を自然に体を揺らせます。
- 簡潔なモチーフ発展:長尺でも同じモチーフを巧みに変奏し、物語性のあるソロを展開します。
代表作・名盤(入門と深掘りのためのおすすめ)
- Look Out!(Blue Note時代の初期作)— 若き日の直球な表現が聴ける作品。ハードバップ/ソウルジャズの魅力が凝縮されています。
- Back at the Chicken Shack(Jimmy Smithとの共演作品)— オルガン・トリオ/カルテットでの相性の良さが際立つ名盤群の一例。ソウルフルなグルーヴが魅力です。
- Sugar(CTI、1970年)— 商業的にも成功した一枚。ストリングスやホーンアレンジを含む豪華編成で、タイトル曲をはじめとするドラマティックな演奏が光ります。
- その他のBlue Note / CTI期の諸作— 両レーベルでの録音群を通して、タレンタインの多面性(生々しいブルース感から洗練されたクロスオーバーまで)を味わえます。
キャリアの流れと主なコラボレーション
キャリア初期はブルー・ノートを中心にハードバップ/ソウルジャズ系のリーダー作やセッションで名を上げ、オルガニストとの共演で特に人気を博しました。その後、1970年前後にCTIへ参加してより大編成・プロダクション志向の録音を行い、ジャズとポピュラーの境界を越える作品で幅広い聴衆を獲得しました。共演者としては、シャーリー・スコット(組合せとしては特に有名)、ジミー・スミス、フレディ・ハバードやジョージ・ベンソンら(CTI期)との関係が挙げられます。
聴きどころガイド(曲をどう聴くか)
- イントロの音色に注目:最初の一音でタレンタインかどうか分かるほど特徴的。息の使い方、トーンの厚さに耳を傾けてください。
- フレーズの「間」を味わう:速いパッセージが続かない場合でも、間と余韻で語られる情感を楽しむと彼らしさが伝わります。
- リズムセクションとの対話:オルガンやギター、ドラムとの呼応が多いので、伴奏との掛け合いも聴きどころです。
- テーマの反復と変奏:同じモチーフが少しずつ変化していく過程を追うと、即興の構築法が見えてきます。
影響とレガシー
タレンタインはソウルジャズ/ブルース寄りのテナー奏法を広め、ジャズのより大きな聴衆獲得に貢献しました。彼の「歌う」語法は後続のサクソフォン奏者やクロスオーバー志向のミュージシャンに影響を与え、近年ではサンプリングやプレイリストを通じて新たな世代にも再発見されています。テナーの音色や歌心を重視するプレイヤーたちにとって、教科書的な存在といえるでしょう。
まとめ
スタンリー・タレンタインは、太く温かい音色とブルースに根差した表現力で、ジャズの多くの場面に「歌」をもたらした奏者です。ハードバップやソウルジャズの文脈での直球勝負な演奏から、CTI期の洗練されたクロスオーバー表現まで、どの時期の録音にも彼の個性が一貫して表れています。まずは代表作を数枚聴き、フレーズの間や音色の変化に注目すると、タレンタインの魅力がより深く伝わるはずです。
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参考文献
- Stanley Turrentine — Wikipedia
- Stanley Turrentine — Biography & Discography | AllMusic
- Stanley Turrentine — Blue Note Records (artist page)


