クセナキスの名盤をLPで聴く完全ガイド|演奏者別のおすすめレコードと聴き方のポイント

Iannis Xenakis — レコードで聴くためのおすすめガイド

20世紀後半における作曲の最前線を体現した作曲家イアニス・クセナキス(Iannis Xenakis, 1922–2001)。数学や建築、確率論・群集音響の発想を音楽に持ち込み、「音響の塊」や「集団的運動」を志向するその音楽は、レコードで聴くときに独特の物理的な迫力とテクスチャが際立ちます。本稿ではレコード(LP)で手に入れたい代表作・名盤(演奏者/演奏団体の目安)をジャンル別に紹介し、それぞれの聴きどころや選び方のポイントを深掘りします。

クセナキスの音楽を聴く前に押さえておきたい基本点

  • 音響的・構造的アプローチ:メロディや和声進行よりも「時間内での音の分布」「密度」「確率的運動」が重要。

  • ダイナミクスとテクスチャ:一音一音を追うよりも、音の「塊」や「流れ」を俯瞰して聴くと理解が深まる。

  • 演奏者固有の個性が結果に大きく影響する:クセナキス作品は演奏技術・アンサンブル感覚により表情が大きく変わるため、録音ごとの差を楽しむ価値が高い。

おすすめレコード(作品別/聴きどころと演奏者の目安)

1) オーケストラ作品:Metastasis / Pithoprakta

  • 代表作の特徴:Metastaseis(1953–54)は大編成を使った巨大なグリッサンドやスペクトル的な動きが聴きどころ。Pithoprakta(1955–56)は統計力学的手法を用いた弦楽/管楽の運動が特徴。

  • おすすめ演奏:クセナキス作品に造詣の深い指揮者や現代音楽を得意とするオーケストラ(例えば20世紀末から21世紀初頭にかけての名盤は、現代音楽専門の演奏者や指揮者が関わる録音が多い)。演奏の明瞭さ・ダイナミックレンジが重要です。

  • 聴きどころ:大きな音塊の形成と崩壊、弦/管の「温度差」、音の濃度変化に注目すると発見が多い。

2) 室内・弦楽四重奏:Xenakisの室内楽/弦楽四重奏曲群

  • 代表作の特徴:弦楽四重奏では微細なピッチ操作、持続音群、複雑なリズム群が凝縮される。文字通り「小編成での宇宙」を感じさせる作品が多い。

  • おすすめ演奏:Arditti Quartet(アルディッティ弦楽四重奏団)など、現代作品に定評のあるカルテットの録音は基本。彼らの演奏は技術的精度と解釈の大胆さのバランスが良く、クセナキスの四重奏曲群を理解するうえで参考になります。

  • 聴きどころ:パート間の相互作用、微細な揺らぎや音色の違い、極端な密度変化を追うこと。

3) 打楽器群・打楽器ソロ:Pléïades / Rebonds など

  • 代表作の特徴:Pléïades(1979)は複数打楽器奏者による色彩的な効果が魅力。Rebonds(1987)はソロ打楽器の技巧とダイナミクスの幅を問う。

  • おすすめ演奏:Les Percussions de Strasbourg(ストラスブール打楽器アンサンブル)や著名ソロ奏者による録音。打楽器の種類と配置、奏者間の緊張感が音盤上で明瞭に出る録音を選ぶと良い。

  • 聴きどころ:各打楽器の音色対比、空間的に広がる打撃の配置、持続音と短打の対比。

4) 声楽・斬新な編成:Eonta など(管楽器や独奏奏者が際立つ作品)

  • 代表作の特徴:Eonta(1963)はトロンボーン独奏を含む挑戦的な編成で、特殊奏法や演奏者の身体性を刺激する作品。

  • おすすめ演奏:当該楽器に精通したソロ奏者と現代音楽を演奏するオーケストラ/アンサンブル。演奏者のテクニックと決断がそのまま音像に反映される。

  • 聴きどころ:独奏楽器の出現と消失、倍音成分や特殊奏法の痕跡に耳を澄ます。

5) 電子音/サウンドインスタレーション系:Persepolis / Concrete PH(テープ作品)

  • 代表作の特徴:Persepolis(1971)は劇場的インスタレーション作品で、重低音・マイク配置・会場空間を含めての音楽。Concrete PH などのテープ作品は音響的素材の操作が中心。

  • おすすめ演奏(録音):電気音響系のリリースや現代音楽レーベルから出る原典に近い録音を探すと良い。録音時のマイク配置やミキシングが作品体験に直結するので、ライナーノートで制作情報が詳しい盤を選ぶのがポイントです。

  • 聴きどころ:空間性、低域の動き、電子音と加入楽器群の関係性。

レコードを選ぶときの実用的な視点(録音・演奏の吟味ポイント)

  • 演奏者(団体・ソロ)の経歴:クセナキスを繰り返し演奏している団体・指揮者の録音は解釈の確かさが期待できる。

  • ライブ録音かスタジオ録音か:ライブ録音は空間や物理的衝撃が忠実に捉えられる場合が多いが、音のバランスが荒れることもあります。スタジオ録音は明瞭だが空間感がやや抑えられることがある。

  • ライナーノートの充実度:クセナキス作品は作曲の背景や楽曲思想を知るほど聴取が深まるので、詳しい解説やスコアの断片が載っている盤を優先するのが良い。

  • 複数録音を並べて比較する:同じ作品でも演奏・録音で印象が大きく変わるため、気に入った曲は別録音と比べることをおすすめします。

具体的に探したい「名盤」の候補例(探し方のヒント)

  • 弦楽四重奏の名演:Arditti Quartet の録音群(Xenakisの四重奏曲を中心に収録している盤)は入門にも参照にも向く。

  • 打楽器作品の定評盤:Les Percussions de Strasbourg による録音や、著名な打楽器奏者がソロで録音した盤をチェック。

  • オーケストラ作品の注目録音:現代音楽の専門オーケストラや、クセナキスの常連指揮者(長年レパートリーにしている人物)が参加している録音を優先。

  • 電気音響・インスタレーション系:Persepolis の収録盤は複数あるため、付随する制作ノートや録音場所(劇場・ホール)が明記されている盤を選ぶと、作品の意図に近い体験が得られる。

聴き方のコツ(作品ごとの入り方)

  • 大編成の作品:最初は全体の「流れ」をつかむ。部分的なモチーフよりも、密度の変化・テクスチャの転換を追う。

  • 室内楽・四重奏:楽器ごとの輪郭が出るようヘッドフォンや良好なステレオ再生で、各声部の動きを追う。

  • 打楽器系:音色の差異や叩き方の身体性に注目。楽器の持つ「素材感」を把握すると作品の構造が見えてくる。

  • 電子音響:音の定位や低域の動きを意識し、空間の広がりに耳を開く。

どのレコードを優先して探すべきか(優先順位の提案)

  • まずは弦楽四重奏(Arditti Quartet等)でクセナキスの語法を“凝縮版”として体験。

  • 次にMetastaseis / Pithoprakta などのオーケストラ作品で“大きな音塊”を体感。

  • さらにPléïades や打楽器系で音色の重層性を聴く。最後に Persepolis 等の電子音響で空間芸術性を確認する—という流れが理解を深めやすいでしょう。

まとめ

クセナキスは「聴く人に積極的な聴取姿勢」を求める作曲家です。LPという物質性のあるメディアで聴くと、音の塊や空間がより体感的に伝わります。演奏者の個性や録音の制作背景が結果に大きく影響するため、ライナーノート、演奏者情報、録音形式をチェックしつつ、複数盤を比較して自分なりの“定盤”を見つけるのが最も楽しいアプローチです。

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参考文献