ジャック・デジョネットの名盤ガイド|おすすめLPと聴き方のポイント

はじめに — Jack DeJohnetteという存在

ジャック・デジョネット(Jack DeJohnette)は、20世紀後半から現在に至るまでジャズの最前線で活躍するドラマー/コンポーザーのひとりです。ビートの多様性、メロディックなアクセント、そして即興のフォルムを自在に操る演奏は、モード・ジャズからフリー、エレクトリックな領域まで広く貢献してきました。本コラムでは、彼のキャリアを俯瞰しつつ、レコード(LP)で聴く価値の高いおすすめ盤をピックアップし、それぞれの聴きどころや歴史的・音楽的な意義を深掘りして解説します。

The DeJohnette Complex (1969)

意味:デジョネットのリーダー初期作。若きドラマーの作曲力とリーダーシップが表出した一枚です。

  • ポイント:まだ"伴奏"にとどまらない、フレーズ感と色彩感を持ったドラムで、バンド全体のダイナミクスを牽引します。
  • 代表的な楽曲:アルバム全体がまとまりのある作品群で、曲ごとに異なるアプローチ(リズムの変化、コンポジションの多様性)を示します。初期の作風を知るうえで必聴。
  • 聴きどころ:ドラムが"テクスチャ"や"対話"の役割を果たす場面。若さゆえのエネルギーと作曲意欲を感じられます。

Forest Flower — Charles Lloyd Quartet(1966)

意味:デジョネットが幅広く注目されるきっかけとなったライブ作品。カルテットの一員としての重要な記録です。

  • ポイント:若き日のデジョネットが、即興性の強いライブ空間で如何にして場を作るかが明瞭に聴けます。インタープレイ(共演者との対話)が際立つ名盤。
  • 代表的な楽曲:「Forest Flower」など、ドラマティックな展開を伴う長尺の即興曲が印象的。
  • 聴きどころ:ソロやテーマの提示だけでなく、全体の推進力を与えるドラミング。ダイナミクスの切り替えに注目。

Bitches Brew — Miles Davis(1969)

意味:マイルス・デイヴィスの電化・実験期の代表作。デジョネットはそのリズム体制の中核を担い、ロック的ビートとジャズ的即興を橋渡ししました。

  • ポイント:デジョネットのビート感覚とテクスチャー作りは、このアルバムの音世界を支える重要要素。サウンドの厚みやグルーヴの生成に大きく貢献しています。
  • 代表的な楽曲:「Pharaoh's Dance」「Bitches Brew」など、大きなサウンドスケープと反復的なグルーヴが特徴。
  • 聴きどころ:単に「叩く」以上の、ロールやアクセント、サウンドの扱いで場を形成する力。現代的なリズム観の起点として必聴です。

Gateway — Gateway (John Abercrombie / Dave Holland / Jack DeJohnette)(1976)

意味:アコースティック志向のトリオで、即興の密度と響きの繊細さが際立つ名作。デジョネットの柔軟な時間感覚が光ります。

  • ポイント:ドラムが単にリズムを保持するのではなく、ベースやギターと等価に音楽を構築していく、インタープレイの好例。
  • 代表的な楽曲:穏やかなテーマと繊細な即興が交差する楽曲群。各演奏者の呼吸が聴き取れるようなレコーディング。
  • 聴きどころ:テンポ感の流動性や、空間を使った演奏。アーティキュレーション(音の出し方)に注意して聴くと面白いです。

Special Edition(1980頃)

意味:デジョネットが自身のバンド「Special Edition」を率い、ソロや作曲での表現を拡げた時期の重要作群の総称的な一枚。

  • ポイント:先鋭的なサクソフォンやトロンボーンなどを擁する編成で、モーダルかつアグレッシブな側面が出ています。デジョネットの作曲センスとアレンジ力が前面に出る。
  • 代表的な楽曲:エッジの効いたテーマ、自由なソロ、複雑なリズム・パターンが並びます。
  • 聴きどころ:ドラマーとしてのインパクトだけでなく、バンドリーダー/作曲家としての発想に注目してください。

Standards, Vol. 1 — Keith Jarrett Trio(1983)

意味:スタンダード・トリオ(キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・デジョネット)による代表作のひとつ。既成曲を即興で再解釈するアプローチが鮮烈です。

  • ポイント:デジョネットはここで「伴奏を超える伴奏」を示します。相手のフレーズに対する即応性、空間を生かす叩き方が卓越しています。
  • 代表的な楽曲:多くはジャズ・スタンダードの解釈で、テーマの提示→展開→再構築の流れが論理的かつ情感豊か。
  • 聴きどころ:ピアノとベースとの対話、特に静かな間(ま)やアクセントの付け方に注目すると、デジョネット独自の美学が見えてきます。

Irresistible Forces(1987)

意味:エレクトリック/クロスオーヴァー的要素を取り入れた時期の作品で、音色や編成の実験性が高い一枚です。

  • ポイント:リズムの多層化、電子音やエフェクトの使用など、従来のジャズ枠を横断するサウンドが楽しめます。
  • 代表的な楽曲:アップテンポのファンク感ある曲から、スペーシーな音像までバラエティ豊富。
  • 聴きどころ:ビートのユニークさ、ドラムの音色選択、そして全体のグルーヴ作りをどう行っているかを味わってください。

Made in Chicago(2015)

意味:地元シカゴに戻って制作された作品で、若き日のルーツや仲間へのリスペクトが反映された近年の傑作の一つ。

  • ポイント:シカゴの歴史的プレイヤーたちと共演し、音楽的な"再接続"が行われています。成熟した表現と温かみのあるサウンドが魅力。
  • 代表的な楽曲:伝統と革新が同居する演奏の数々。デジョネットの円熟したドラムワークが随所に光ります。
  • 聴きどころ:長年の経験に基づく"間"の取り方、リズムの捉え方の懐の深さを感じてください。

聴き方の視点 — デジョネットの「何」を聴くか

以下はどの作品にも共通して使える聴取のヒントです。単に速い/遅いを追うだけでなく、音楽的な役割の多層性に目を向けてみてください。

  • 「時間感覚(タイム)とグルーヴの変化」:同じテンポでも拍の置き方やアクセントの付け方で音楽が変わります。そこに注目。
  • 「テクスチャーとしてのドラム」:シンバルやスネアの使い分けで背景の色が変わります。旋律と対話するドラムの"声"を聴き取る。
  • 「インタープレイ(対話)」:ソロよりもむしろ他プレイヤーとの応答でこそデジョネットの魅力が発揮される場面が多いです。
  • 「作曲/編曲的視点」:リズムの変化が曲構成の要素になっていることも多いので、曲全体の構築を見ると理解が深まります。

まとめ — 何を揃えるべきか

初めてデジョネットをレコードで掘るなら、まずは彼が重要な役割を果たした作品(例:Bitches Brew)と、リーダー作品/トリオ作品(例:The DeJohnette Complex、Gateway、Standards)を押さえることをおすすめします。年代順に聴くことで、彼のスタイルの変遷 — 若さと実験性、アコースティックな対話、エレクトリックな探求、そして円熟 — がはっきり見えてきます。

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参考文献