Jerry Goodmanのヴァイオリンが導くフュージョン入門:The FlockからMahavishnu Orchestraまでの名盤と聴きどころ

はじめに — Jerry Goodmanとは

Jerry Goodman(ジェリー・グッドマン)はアメリカ出身のヴァイオリニスト/作曲家で、ロック、ジャズ、フュージョンの境界を越えて活躍してきた稀有な存在です。エレクトリック・ヴァイオリンを用いた攻めの即興と、クラシック的なタッチを併せ持つ演奏は、1970年代のプログレッシブ・ロック/ジャズ・ロック・ムーブメントに大きな影響を与えました。本コラムでは、彼のキャリアを追いつつ、「まずはこれを聴け」というおすすめレコードをピックアップし、聴き所や背景を深堀します。

おすすめレコード総覧(5枚)

  • The Flock — The Flock(1969)
  • The Flock — Dinosaur Swamps(1970)
  • The Mahavishnu Orchestra — The Inner Mounting Flame(1971)
  • The Mahavishnu Orchestra — Birds of Fire(1973)
  • Jerry Goodman & Jan Hammer — Like Children(1974)
  • Jerry Goodman — On the Future of Aviation(ソロ/1980年代の作品)

The Flock — The Flock(1969)

Jerry Goodmanがプロとして広く知られる前に参加していたシカゴのバンド「The Flock」のデビュー作。サイケ/ジャズ・ロックの要素を併せ持ち、グッドマンのヴァイオリンは既にバンドの個性を決定づける重要な要素になっています。

  • 聴きどころ:ロック・リズムにヴァイオリンが入り込む瞬間の新鮮さ。ロックのグルーヴとジャズ的フレーズの接合点に注目。
  • 背景:1960年代末の実験的なロック・シーンの産物で、当時のアメリカ中西部における異色バンドのひとつ。
  • こう聴く:ヴォーカル/リズムの土台とヴァイオリンの絡みを比較し、グッドマンの音色の表現力を確認する。

The Flock — Dinosaur Swamps(1970)

デビュー作の延長線上にありつつ、よりジャズ寄り・実験寄りの方向性へと踏み込んだ作品。楽曲構成やアンサンブルの自由度が増し、グッドマンのソロや即興がより目立ちます。

  • 聴きどころ:より自由な編曲とソロ回し。エレクトリック楽器群とヴァイオリンのダイナミクス。
  • 背景:サイケデリックからの脱却と、より高度な音楽性を志向した時期の音。
  • こう聴く:曲ごとのアレンジの違い(よりジャズ寄りのパート vs ロック寄りのパート)に注目して、グッドマンのポジショニングを追う。

The Mahavishnu Orchestra — The Inner Mounting Flame(1971)

ジョン・マクラフリン率いるThe Mahavishnu Orchestraのファースト。グッドマンはエレクトリック・ヴァイオリンでバンドの特徴的なサウンドを形成し、ロック的な鋭さとジャズ/クラシック的技巧を同時に提示します。このアルバムはフュージョンの金字塔の一つに数えられます。

  • 代表曲(聴きどころ):「Meeting of the Spirits」など、アンサンブルの緊張感と高密度のインタープレイ。グッドマンのヴァイオリンはギターや鍵盤と対等に渡り合い、劇的なフレーズを生み出します。
  • 背景:プログレッシブかつスペーシーなアンサンブル、複雑なリズムと高速度の即興が特徴。
  • こう聴く:リズム隊(ドラム/ベース)とヴァイオリンの応答、及びソロの構築(フレーズの組み立て方やモチーフの発展)を追うと、グッドマンの即興構造が見えてきます。

The Mahavishnu Orchestra — Birds of Fire(1973)

バンドの2作目で、より幅広い音世界とアレンジの工夫が見られる一枚。テクニカルな演奏だけでなく、劇的な構成美やメロディの魅力も強化されています。グッドマンはフレーズの切れ味と情感表現の両立を示しており、ここでのプレイは彼の評判を確固たるものにしました。

  • 代表曲(聴きどころ):タイトル曲「Birds of Fire」をはじめ、アンサンブルとヴァイオリンのシンフォニックな絡みが聴きどころ。
  • 背景:前作の高密度さを保ちつつ、楽曲の幅を拡げた作品。ジャズ・ロックの枠を押し広げた影響力が大きい。
  • こう聴く:曲ごとのダイナミクスの変化に注目。グッドマンのヴァイオリンがメロディを担う瞬間と、即興で飛翔する瞬間の対比を楽しんでください。

Jerry Goodman & Jan Hammer — Like Children(1974)

グッドマンとキーボーディストのJan Hammerによるデュオ作。より親密で実験的な側面が強く、エレクトリック楽器同士の対話や、即興的なアプローチが前面に出ています。Mahavishnu時代とは違う“室内楽的”な緊張感が魅力です。

  • 聴きどころ:ヴァイオリンとキーボードの掛け合い、リリカルな瞬間とテクニカルな応酬のバランス。
  • 背景:フュージョン黎明期の良質な副産物で、二人のコンビネーションの妙を楽しめる。
  • こう聴く:各パートの役割がはっきりしているため、ギターやホーンの代わりにヴァイオリンがどのような役割を果たすかを意識して聞くと面白いです。

Jerry Goodman — On the Future of Aviation(1980年代のソロ作)

グッドマン名義のソロ/リーダー作品は、より個人的で多彩なサウンドスケープを提示します。ポップ、ニューエイジ、フュージョンの要素が混ざり合い、ヴァイオリンを中心に据えた様々なアレンジが楽しめます(※年代やタイトルはバージョンにより表記差がある場合があります)。

  • 聴きどころ:メロディ重視の曲構成とサウンド・デザイン。ヴァイオリンの音色の変化に注目。
  • 背景:1970年代のハード・フュージョン期から離れ、より内省的かつ多彩な表現を模索した時期の産物。
  • こう聴く:過去作(MahavishnuやThe Flock)と比較して、表現の幅やアプローチの変化を追うと、アーティストとしての成長が見えます。

聴きどころの共通点と、Jerry Goodmanの魅力

以下は、これらの作品を通じて見えてくるグッドマンの特徴です。

  • ジャンル横断性:ロック、ジャズ、クラシック的手法を自由に行き来するため、どのアルバムでも新しい発見がある。
  • 即興と構成のバランス:技巧的な即興だけでなく、楽曲構成に基づいたソロの展開を大切にする。
  • 音色の幅:エレクトリック/アコースティック双方のヴァイオリンを使い分け、攻撃的な音から繊細な音まで使い分ける。
  • アンサンブル感:バンド内での位置取りが的確で、独りよがりにならずに他パートとの化学反応を重視する。

入門から深掘りまでの聴き方ガイド

  • 初めてなら:Mahavishnu Orchestraの2枚(The Inner Mounting Flame / Birds of Fire)を先に聴くと、グッドマンの破格の存在感が掴みやすいです。
  • 次の一歩:The Flockの2作で若き日の実験精神を確認し、Like Childrenでデュオの親密さを味わいましょう。
  • ディープリスニング:ソロやライブ音源で、即興の組み立て方、モチーフの発展、音色変化に注目して聴くと新たな発見があります。
  • 他の聴き手と比較:グッドマンを中心に据えたプレイと、同時代のギタリスト/鍵盤奏者と比較すると、独自性がより際立ちます。

購買・フォローのヒント(作品の探し方)

  • オリジナル盤や初期プレスはコレクターズアイテムになりやすいですが、まずはCDや正規配信で音楽そのものを確認するのが実用的です。
  • リマスター盤やデラックスエディションが出ている場合は、ブックレットや未発表トラックで時代背景の理解が深まります。
  • ライブ録音はその時期の即興解釈を知る上で貴重なので、可能ならライブ盤もチェックしてください。

まとめ

Jerry Goodmanは「ヴァイオリンでロック/フュージョンを演奏する」という枠を超えた表現者です。Mahavishnu Orchestraでの破格の爆発力、The Flockでの若き日の実験精神、Like Childrenでの内向的かつ緻密な対話——それぞれの作品が違った顔を見せてくれます。本稿で挙げたアルバムを順番に聴いていけば、グッドマンというアーティストの全体像が自然に見えてくるはずです。

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参考文献