クラスAのIPアドレス徹底解説:IPv4の定義からCIDR・NATまで実務に活かす
クラスAのIPアドレスとは —— 基礎から実務までの解説
「クラスAのIPアドレス」は、IPv4アドレス体系における古典的なクラスフル(classful)アドレッシングの一種です。歴史的に用いられた分類で、非常に大きなネットワークを想定した設計を表します。本コラムでは定義、範囲・計算方法、特別扱いのアドレス、実務での扱い(CIDRやプライベートアドレス、NATなど)まで、できるだけ正確に、かつ実用的に解説します。
基本定義とビット構成
クラスAアドレスは、IPv4アドレスの最上位ビットが「0」で始まるアドレス範囲を指します。IPv4は32ビット長で、オクテット(8ビット)ごとに区切られるため、クラスAは“最初のオクテットの先頭ビットが0”という条件で判定できます。
- 先頭ビットパターン:0xxxxxxxx(最初のビットが0)
- デフォルトサブネットマスク:255.0.0.0(/8)
- ネットワーク部の長さ:8ビット(うち1ビットはクラス識別の0、ネットワーク識別に7ビット)
- ホスト部の長さ:24ビット(各ネットワークあたり2^24のアドレス)
アドレス範囲と利用可能数
理論上、最初のオクテットの値は0から127までですが、実務的には以下のように扱われます。
- 実際のクラスAで利用される範囲:1.0.0.0 ~ 126.255.255.255(最初のオクテットが1〜126)
- 127.0.0.0/8:ループバック(localhost)用に予約(127.0.0.1など)
- 0.0.0.0/8:特殊用途(「このホスト」「このネットワーク」など)で予約
したがって、クラスAの「ネットワーク数」は1〜126で計126個、1つのクラスAネットワークあたりのアドレス総数は2^24 = 16,777,216個です(通常、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスを除いた可用ホスト数は16,777,214台となります)。クラスA全体でのアドレス数は約21億強(126 × 2^24 ≒ 2,113,929,216)です。
代表的な例とプライベート領域
代表的なクラスAアドレスの例として、プライベートアドレスの範囲である10.0.0.0/8はクラスAの範囲に入ります。RFC 1918によりプライベート利用が定義されており、企業内や家庭内ネットワークで広く使われています(10.0.0.0〜10.255.255.255)。
- プライベート(RFC 1918): 10.0.0.0/8(クラスA相当)
- パブリック/グローバル:1.0.0.0〜9.255.255.255、11.0.0.0〜126.255.255.255など(ただし一部はIANAや各国が割当てや特殊用途で管理)
ネットワーク・ブロードキャストの計算(例)
デフォルトのクラスAサブネット(/8)を例に取ると、ネットワークアドレスとブロードキャストアドレスの計算は簡単です。
- 例:ネットワーク 10.0.0.0/8 の場合
- ネットワークアドレス:10.0.0.0
- ブロードキャスト:10.255.255.255
- 利用可能ホスト範囲:10.0.0.1 ~ 10.255.255.254
クラスAでサブネット化(更に細かい分割)する場合は、デフォルトの/8から長くすることでホスト数を絞り、必要なサブネット数を得ます(例:/16であれば1ネットワークあたり2^16個のアドレス)。
歴史と問題点:クラスフルからクラスレスへ
クラスA/B/Cといったクラスフルな設計はIPv4初期に導入されましたが、アドレス空間の非効率な割当てを招きました。大規模組織にクラスAの節を与えれば大量の未使用アドレスが寝てしまう一方、中小組織は十分なアドレスを得られないことがありました。
この問題を解決するため、1993年にCIDR(Classless Inter-Domain Routing、RFC 1519)が導入され、ルート集約(ルート表の縮小)および必要に応じたサイズのプレフィックス割当が可能になりました。現在は実務でのアドレス設計はCIDR/VLSM(可変長サブネットマスク)を前提にしており、「クラスA・B・C」は概念的な説明や互換的理解のために参照される程度です。
実務での扱い:NAT・プライベートアドレス・サブネット設計
実運用では、特にIPv4枯渇問題以降、プライベートアドレス(例:10.0.0.0/8)を使ってローカルネットワークを構築し、インターネットへはNAT(Network Address Translation)で出口アドレスを共有するのが一般的です。大規模な組織では、10.0.0.0/8を内部で複数の小さいサブネット(/16や/24等)に分割して管理します。
- メリット:プライベート領域は自由に使える、内部のアドレス管理が容易
- デメリット:NATに伴うトラブルシューティングの複雑化、P2P等での互換性問題、IPv6移行の必要性
クラスAという概念の現在の位置づけ
今日では、ネットワーク設計はクラスに頼らずにCIDRで行うのが標準です。ただし「クラスA」の語は次のような場面で出てきます。
- 教育・入門資料での説明(アドレスサイズ感や歴史を示すため)
- 10.0.0.0/8 のようなRFC1918プライベート領域を指すときの便宜的な表現
- 既存のレガシードキュメントや古い機器の仕様説明
従って、「クラスAアドレスとは?」に対する正しい理解は「かつてのIPv4クラス分けで最も大きなサイズを持つ範囲(/8相当)を指す概念で、現在はCIDRにより柔軟に扱われている」ということになります。
まとめ:ポイントのおさらい
- クラスAは先頭ビットが0で表され、デフォルトマスクは/8(255.0.0.0)
- 実際の利用範囲は1.0.0.0~126.255.255.255。127.0.0.0/8はループバックとして予約、0.0.0.0/8も特殊用途で予約
- 各クラスAネットワークは2^24個のアドレス(通常可用ホスト数は2^24−2)を持つ
- 現在はCIDRが標準で、クラス概念は教育的・歴史的な説明で参照されることが多い
参考文献
- RFC 791 - Internet Protocol (IPv4)
- RFC 1519 - Classless Inter-Domain Routing (CIDR)
- RFC 1918 - Address Allocation for Private Internets
- IANA — Special-Purpose Address Registry (IPv4)
- RFC 5735 - Special Use IPv4 Addresses


