L. Shankar—カルナータカ音楽とジャズを融合した十弦ヴァイオリンの革新者
プロフィール
L. Shankar(ラキシュミナラヤナ・シャンカール、通称 L. Shankar)は、インド古典音楽を土台に世界のジャズ/ワールドミュージックと強く融合した革新的なヴァイオリニスト/作曲家です。南インドの伝統(カルナータカ音楽)での修練に始まり、若い頃から国際的な舞台で演奏を重ね、1970年代以降はジャズやロック系ミュージシャンとも積極的に交流しました。
キャリアの要点
- カルナータカ音楽の技法を基盤に、即興(ラガの展開)とリズム(タラ)の感覚を国際的な舞台に持ち込んだ。
- 西洋のジャズ/フュージョン系ミュージシャンとの共演を通してジャンル横断的な表現を確立。特にジョン・マクラフリン、ザキール・フセインらと組んだグループ「Shakti」での活動は広く知られている。
- 電気楽器やエレクトロニクスを取り入れた拡張的なヴァイオリン演奏を推進。独自に設計した十弦の「ダブル・ヴァイオリン」(幅広い音域を一人でまかなえる楽器)を用いるなど、音響的な可能性を拡張している。
- ヴァイオリン演奏だけでなく、声(ファルセットやささやきに近い声法)を楽器的に用いる歌唱表現も特徴。
音楽的特徴と奏法の魅力
L. Shankar の最大の魅力は、伝統と革新を自然に結びつける演奏姿勢です。以下のポイントでその特色を整理します。
- 技術と表現の両立:
カルナータカ音楽で培われた精緻な装飾音(ガマカ)や微分音的なニュアンスを、極めて流麗かつ強烈な表現で行き来します。技巧的なパッセージでも感情が先に立つため、難解さがなく聴き手に直接届きます。
- 新しい楽器観:
十弦ダブル・ヴァイオリンなどの使用によって、メロディ、和声、低音まで一人で扱える演奏可能性を獲得。これによりソロでの多層的なサウンド作りや、アンサンブルでのユニークな役割分担が可能になっています。
- ジャズやフュージョン的語法との親和性:
モード的な即興、クロスリズムへの応答、コード進行的な展開にも柔軟に対応。西洋の即興体系とインド古典の即興が互いに刺激し合う独特の会話を作り出します。
- 声と弦の融合:
歌唱的なフレーズや声を楽器化するアプローチ。人声のようなビブラートや装飾をヴァイオリンで再現し、時には自身の声を重ねて表情の幅を広げます。
代表作・名盤(ピックアップ)
以下は彼の音楽世界を知るうえでの代表的な取り組みや聴きどころです(抜粋)。
- Shakti(グループとして)
ジョン・マクラフリン、ザキール・フセインらと結成したShaktiでの作品群は、インド古典とジャズが高度に融解した傑作群です。弦とパーカッションが極めて緊密に対話する演奏は、L. Shankar のアプローチと表現力を知る上で必聴です。
- ソロ/リーダー作(概観)
ソロ名義やリーダー作では、エレクトリックなサウンドや多重録音を駆使した実験的で映像的な作品も残しています。ソロ作を通じて彼の編曲能力や映画音楽的な情景感覚にも触れられます。
- コラボレーション作品
西洋のジャズ・ロック系の第一線ミュージシャンとの共演作は多く、異ジャンルへの橋渡しとしての側面が強いです。異文化間の「会話」をそのまま録音に残したような作品が多くあります。
ライブパフォーマンスの魅力
録音とライブではまた違ったインパクトがあります。ライブでの魅力は以下の通りです。
- 即興の自由度が高く、毎回異なるドラマを生む。
- 十弦ダブル・ヴァイオリンなど視覚的にも珍しい楽器の存在感が強い。
- 技巧と情感が高度に融合しているため、技術好きも情緒的な体験を求める聴衆も満足させる。
- パーカッションとの掛け合い(特に北南インドのリズム概念との融合)が身体的な高揚を生む。
なぜ今聴くべきか — 現代の文脈での意義
グローバル化した現代の音楽シーンにおいて、L. Shankar の音楽は「ジャンルをまたいで対話する」ことの先駆けとして重要です。民族音楽の伝統を尊重しつつ、その枠を超えて新しい音楽言語を築く姿勢は、今日のクロスオーバー/ワールドミュージックの潮流を理解するうえで示唆に富んでいます。また、アコースティック/エレクトリックの垣根を越えた楽器設計やサウンド作りは、現代の表現者にも多くの示唆を与えます。
聴き方のアドバイス
- 初めて聴く場合は、まずShaktiのアルバムで基礎的な対話感を味わうと分かりやすい。
- ソロ作を聴く際は、アレンジや多重録音によるテクスチャーの変化に注目すると新たな発見がある。
- 演奏中のトーンやビブラート、微分音的な装飾(ガマカ)を耳で追うことで、彼の表現上の細やかな工夫が見えてくる。
まとめ
L. Shankar は、伝統に根ざしながら同時に既成概念を打ち破ることを怖れないアーティストです。技術的な卓越さ、美的な直感、そして異文化間の対話を音楽に落とし込む姿勢は、いまなお多くの演奏家や聴き手に影響を与えています。ヴァイオリンという楽器の可能性を再定義した彼の仕事は、音楽の境界線を意図的に曖昧にしながら新たな表現地平を切り開いてきました。世界音楽、即興、そして弦楽表現に興味があるなら、ぜひ深く踏み込んで聴いてみてください。
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参考文献
- L. Shankar — Wikipedia
- Shakti (band) — Wikipedia
- L. Shankar — AllMusic(ディスコグラフィー等)
- L. Shankar(公式サイト、存在する場合)


