Bernard Parmegiani(パルムジャン)— 電子音楽とアクースマティックの巨匠の生涯と技法
バーナード・パルムジャン(Bernard Parmegiani)──プロフィール
バーナード・パルムジャン(Bernard Parmegiani、1927–2013)は、フランスを代表する電子音楽/エレクトロアコースティック(musique concrète/acousmatic music)作曲家の一人です。もともと弦楽器を学んだ経歴を持ち、1950年代から音響素材の編集・変換を中心とする実験的な音楽制作に取り組み、ピエール・シェフェールが主導したGroupe de Recherches Musicales(GRM)に参加して活動の場を広げました。以後、ラジオや研究機関(INA-GRMなど)とも深く関わりつつ、生涯にわたって独創的なサウンド作品を多数発表しました。
作風と技術的特徴
音の素材への徹底したこだわり:パルムジャンは「素材」を単純に素材のまま使うのではなく、編集・加工・整形を通じて新たな音像を生み出すことに長けていました。フィールド録音、楽器演奏の断片、機械音などを出発点に、テープ操作やフィルタリング、位相操作、逆相など様々な加工技術を駆使しました。
ドラマトゥルギー志向の構成:単発の実験音ではなく、時間軸に沿って聴覚的な「物語」や緊張と解放のドラマを組み立てることを重視しました。音の質感(ティンバー)や空間感、時間的展開が物語性を帯びる点が特徴です。
アクースマティックと空間化:スピーカーを通じてのみ聴かれる「アクースマティック」表現において、音像の定位や移動を巧みに設計し、リスナーに対して音の発生源が見えないことを活かした心理的・空間的効果を生み出しました。
音響的ユーモアとエモーション:抽象的な音世界のなかにも、機微なユーモアや感情表現が顔を覗かせることが多く、聴き手にとって冷徹な実験音以上の親密さを伴います。
代表作と聴きどころ
De Natura Sonorum(1966) — パルムジャンを代表する一連の作品群で、楽器的・物理的な音の性質(打撃音、こすれる音、息や唸りなど)を題材に、それぞれの「性質」を音楽的に描き出す試みです。音のテクスチャーや微細な変化に注意して聴くことで、彼の音作りの核心が見えてきます。
(アンソロジー/編集盤) — INA-GRMや各レーベルから出ている編集盤は、時期や手法の異なる作品を横断的に聴けるため、パルムジャンの作風の幅と変遷を把握するのに適しています。
劇場音楽/映像関連作品 — パルムジャンは舞台や映像のための音楽や音響も手掛けており、視覚的要素と結びついたときの音の語り方を観察することで、彼の「音で語る」技術がより明確になります。
魅力の深掘り:なぜ多くの人を惹きつけるのか
「音そのもの」を主役にする表現力:音色や質感のわずかな差異を物語化する能力が突出しており、楽器のメロディや和声に依存しない音楽の可能性を強烈に提示します。
聴取の能動化を促す構成:作品は受動的に「流れていく」だけでなく、聴き手が能動的にディテールを拾い上げることで理解が深まる設計になっており、再聴の価値が非常に高いです。
サウンドデザインと音楽の境界を曖昧にする美学:映画やメディアの音響設計にも影響を与えるほど、音の「物語化」や空間表現において音楽とサウンドデザインを橋渡しする仕事をしてきました。
感覚の再教育──日常音の魔術師:日常や環境に潜む音を別の視点で提示することで、聴き手の耳を研ぎ澄ます。ありふれた音が異世界の質感を帯びる瞬間が生まれます。
初めて聴く人へのガイド(おすすめの聴き方)
ヘッドフォン/水平なリスニング環境:細かなテクスチャや定位感を掴むため、なるべくノイズの少ないヘッドフォンやステレオ環境で聴くのがおすすめです。
一回で全部を理解しようとしない:短時間で全貌を把握するのは難しいので、部分に注目して聴き返すことを繰り返すと新たな発見があります。
音の「動き」と「質感」を分けて聴く:音がどのように変化するか(時間軸)と、音自体の質(ティンバー)を別々に追ってみると構造が把握しやすくなります。
背景情報を合わせて読む:制作年や使用機材、目的(劇場用か独立作品か)を軽く調べておくと、その音選びや構成の意図が見えてきます。
影響と遺産
パルムジャンの仕事は、電子音楽やアクースマティック音楽における基盤の一部となり、サウンドアート、現代音楽、映画音響、ゲームサウンドなど幅広い領域へ影響を及ぼしました。GRM/INA-GRMを通じた教育・発信活動やレコード/編集盤の流通により、後続の作曲家や音響技術者たちにとって重要な参照点となっています。
まとめ
バーナード・パルムジャンは、音の素材に対する細やかな感受性と、それを時間芸術として構築する力によって、抽象的でありながら深い感情や物語性を帯びた音楽を生み出しました。その作品は一度で完璧に理解できる類のものではなく、繰り返し聴くことで新たな層が現れるタイプです。音そのものに関心があるリスナー、音響表現やサウンドデザインの起点を知りたい制作者、ともに得るものの大きい作曲家です。
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参考文献
- Bernard Parmegiani — Wikipedia (fr)
- INA-GRM — 公式サイト(Groupe de Recherches Musicales)
- France Musique — Bernard Parmegiani に関する記事
- Discogs — Bernard Parmegiani
- empreintes DIGITALes — Parmegiani 関連リリース


