Laibach徹底ガイド|時代別おすすめアルバムと聴き方・選び方の完全解説
はじめに — Laibachという存在
スロベニア出身のアート・コレクティヴ兼バンド、Laibach(ライバッハ)は、1980年代初頭の東欧における前衛的な音楽/演劇的プロジェクトから生まれました。ファシズム的なヴィジュアルや軍事的なフォルムをあえて模倣・過剰化することで、国家・権力・アイデンティティを逆照射する批評的手法を取ります。音楽的にはインダストリアル、ミニマル、ネオクラシカル、ポップの要素を横断し、カバー曲の再解釈やオリジナル曲で独自の美学を確立してきました。
選び方の指針
- 「歴史的影響」を見たいなら初期のアルバムや論争作を。
- 「カバーの再解釈」を味わいたいなら彼らのカバー集/特定のアルバムを。
- 「近作の現代的表現」を知りたいなら2000年代以降のアルバムを。
- リスニング優先か、コレクション価値(オリジナル盤等)を重視するかで選択が変わります。
おすすめレコード(深掘り解説)
1. Nova Akropola(1986)
初期のエッセンスが濃縮された作品で、Laibachが「音とイメージで国家や権力を問い直す」出発点として重要です。粗いシンセ、重いドラムマシーン、メロディの反復と儀式感のある歌唱が特徴で、聴けば当時のアーティスト集団としての野心と美学が伝わってきます。初期ファン、また彼らの“プロパガンダ的”アプローチを理解したい人に最適。
おすすめポイント
- 初期の荒々しさと儀式的サウンドを体験できる。
- ライブで多用される楽曲が含まれており、Laibachのライブ感覚を知るのに良い。
2. Opus Dei(1987)
Laibachの国際的ブレイク作の一つ。よりプロダクションが整えられ、ポップなメロディの再解釈(既存のポップ/ロック曲をLaibach流に転換する手法)が前面に出ています。これにより彼らは地下性を保ちながらも広い聴衆に届きました。政治的メッセージと大衆音楽の接合が最も分かりやすく表現されているレコードです。
おすすめポイント
- “覆すことで意味を問う”というLaibachの方法論が聴き取りやすい。
- 当時のリリース・シングルがヒットし、Laibachを知る入口として優秀。
3. Let It Be(1988)
タイトルからも分かるように、The Beatlesの同名作をまるごと再解釈した問題作。原曲のメロディをベースに、Laibachはその旋律を圧縮・変容させ、宗教性や権威性の側面を強調することで新しい文脈を与えます。このアルバムは批評的議論を巻き起こし、Laibachの「カバー=批評」というアプローチを象徴する作品です。
おすすめポイント
- ポップ・ソングを政治的・儀式的に再構築する力を示す代表作。
- オリジナルを知っているほど比較の面白さが出る。
4. Macbeth(サウンドトラック、1990)
シェイクスピアの『マクベス』を題材にした演劇/映画のための音楽。劇的でダーク、そして古典的な要素があるため、Laibachのもっとも“演劇的”な側面を強く示します。重厚なアレンジとテクスチャーが光る作品です。
おすすめポイント
- サウンドトラックとしての統一感があり、映像作品との相性を考えると非常に深い。
- 劇的な雰囲気を楽しみたいリスナー向け。
5. Jesus Christ Superstars(1996)
宗教的モチーフやアイコンを素材に、商業文化や信仰を再解釈する傾向が強い作品。インダストリアル/ヘヴィなアレンジをベースに、宗教的寓意を重ねた歌詞世界が展開されます。Laibachの“宗教・権威”への執着/挑発が色濃く出ている一枚です。
おすすめポイント
- テーマ性が明確で、ラジカルな宗教解釈を体感できる。
- 中期以降のLaibachサウンドの進化が見える。
6. WAT(2003)
より現代的なロック/エレクトロのアレンジを取り入れたアルバム。ギターや電子音の比重が高まり、以前よりも「バンド」的音像が前に出ています。政治的メッセージや批評性は継承しつつ、聴きやすさと攻撃性のバランスが取れた作風。
おすすめポイント
- ロック的アプローチを好むリスナーに勧めやすい。
- ライブでの再現性も高く、近年のセットリストの理解に役立つ。
7. Volk(2006)
国歌(anthem)という「国家を象徴する音楽」を素材に、世界各国の国歌をLaibach流に再構築した野心作。各国のナショナル・アイデンティティを音楽的に分解・再構築することで、国家概念そのものを可視化し、問い直します。概念アルバムとしての評価が高く、Laibachの思想的到達点の一つと見なされています。
おすすめポイント
- コンセプトのユニークさと思想性の強さが際立つ。
- 各曲が持つ象徴性を読み解く楽しみがある。
8. Spectre(2014)
長らくの隔たりを経てリリースされた新作で、モダンなプロダクションと鋭い政治性が融合した作品。電子音とオーケストレーションが混在し、過去の延長線上にありながらも現代の問題意識(監視、グローバル政治、情報社会など)を音で表現しています。
おすすめポイント
- 現代的な視点でのLaibachを知るには最適。
- 過去作を知ることで、テーマの変遷が見える。
どの盤を探すか(エディション/リイシューの見どころ)
- 初期のオリジナル盤は音質・アートワークともコレクター価値が高いが価格も上がりがち。手に入りにくい場合は信頼できるリイシューで充分に楽しめます。
- 一部アルバムはCDとLPで収録曲やミックスが異なる場合があるため、収録内容(ボーナストラック、リミックス等)をチェックすると良いです。
- 公式リマスター盤や再発BOXは音質改善と解説ブックレットつきのものがあるので、歴史的背景を掴みたい場合はそうしたエディションが便利です。
ライブ/コンピレーション/リミックス作品の位置づけ
Laibachはライブ表現が重要なバンドです。ライブアルバムや映像(DVD/Blu‑ray)は彼らの演劇性と視覚イメージを理解するうえで欠かせません。またコンピレーションやリミックスは、彼らの解釈の幅や外部との関係性を示す資料として有用です。まずは上で挙げたスタジオ作を押さえ、その後にライブ盤や映像資料に手を伸ばすのがおすすめです。
聴き方のヒント
- 歌詞とヴィジュアル(アートワーク/映像)を合わせて眺めると、Laibachの「物語化された批評」がより明確になります。
- 既存のポップ曲や国歌の再解釈を聴く際は、オリジナル曲を事前に一度聴いておくと比較の面白さが増します。
- アルバムを時代順に聴くと、彼らの音楽的・思想的変遷が見えてきます。
最後に:Laibachを楽しむために
Laibachは「何を是とするか」を示すバンドではなく、「どう見えるか/どう感じさせるか」を徹底的に操作することで、受け手に問いを突きつける存在です。音としての魅力、パフォーマンスの力学、そして政治・文化への問いかけ。この三つを併せて受け止めると、彼らの作品群は一層深い意味を持ちます。
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