ベルナール・パルメジャーニ入門: 電子音楽とミュージック・コンクレートの音の物質感を聴くガイド

はじめに — ベルナール・パルメジャーニとは

ベルナール・パルメジャーニ(Bernard Parmegiani, 1927–2013)は、フランスを代表する電子音楽/ミュージック・コンクレートの作曲家の一人です。GRM(Groupe de Recherches Musicales)を中心に活動し、テープ音響や音の変容、物質的な音の質感(テクスチャー)を徹底的に追究した作風で知られます。コンサート作品からラジオ・テープ作品、映画や舞台音楽まで多彩に残し、現代のサウンドアートや音響制作に大きな影響を与えました。

聴きどころの共通点

  • 音の物質感:楽器音や物体音を電子的に変換し、原音の「質感」を軸に構成していく点が特徴です。
  • 空間性と動き:音が空間を移動するような感覚、層の重なりや時間的展開への注意が必要です。
  • 物語性よりも音の事象:描写的な意味づけより、音そのものの生成・変容過程を楽しむ聴き方が向きます。

おすすめレコード(レーベルや入手のヒント含む)

ここでは「はじめて触れる人に特に薦めたい作品」と「作風の幅を体感できる編集盤」を中心にピックアップします。各項目では音楽的特徴と聴き方のポイントを添えます。

  • 『De natura sonorum』

    1969年の代表作で、楽器/物体の音を収集し、その自然な「音の性質(=natura)」を電子的・テープ的に変容させる一大実験作です。長時間にわたって音色の細部が展開するため、短時間での印象だけでは掴みにくい層が多く存在します。

    聴きどころ:音の生成過程に耳を傾け、同じ音がどのように時間経過で変貌するかを追うこと。最初は断片的に聴こえるかもしれませんが、繰り返し聴くことで有機的な「生態系」のように構造が見えてきます。

    入手ヒント:この作品はGRM系やINAの音源として幾度か再発されています。盤の表記や収録年を確認して、オリジナル・テイクに忠実なライン(INA/GRMのリリース等)を選ぶと良いでしょう。

  • 作曲家のエレクトロアコースティック期をまとめた編集盤(INA/GRM 編集)

    Parmegiani はラジオ作品、短編、劇音楽など幅広いメディアに音を遺しました。INA(フランス国立視聴覚研究所)やGRMによる編集盤は、1950〜1980年代の重要作をコンパクトに集めていることが多く、作家の変遷と様式の広がりを一度に掴むには最適です。

    聴きどころ:短いラジオ用作品や音響実験が並ぶため、作曲手法の“断片”を体系的に比較できるのが魅力です。時代毎の音作りの違い(テープ処理の変化、素材の選択)を聴き比べてください。

    入手ヒント:編集盤は内容が充実する反面、トラック分けや解説が重要です。解説書(ライナーノート)付きのものを選ぶと、各作品の制作背景が理解しやすくなります。

  • 映画・舞台音楽を集めたコンピレーション

    Parmegiani は劇場や映像のための音楽も多数手がけています。こうした実用的な音楽からは、実場面での音響効果の発想や音像作りのテクニックが強く覗えます。映画音楽集は、実験音響がどのように「場」を作るかを見る上で興味深い資料です。

    聴きどころ:視覚と結びついたときの音の役割(間、襞、緊張の作り方)を意識して聴くと、新たな気づきがあります。純粋なコンサート作品と並べて聴くと差が分かりやすいです。

    入手ヒント:曲目に使用された映像作品名や制作年が明記された盤を選ぶと、オリジナルのコンテクストを後から調べやすくなります。

  • 近年の再発LP・コレクション(リマスター盤)

    近年、Parmegiani の重要作はアナログ再発やリマスターCDとして再刊されることが多く、音質面で当時の磁気テープのニュアンスがよりクリアに楽しめるものがあります。オリジナル・テープの素材感を重視するファンには特におすすめです。

    聴きどころ:リマスターによって浮かび上がる微細な倍音や残響の変化に注目してください。パルメジャーニの作品は「細部」が芸術的価値を持つため、音質の違いが鑑賞体験に直結します。

    入手ヒント:再発盤でも、マスタリングのポリシー(可能な限りオリジナルに忠実か、聴感上の改善を優先するか)は盤によって異なります。レビューやリリース元の解説を確認するのが良いでしょう。

  • 入門者向けセレクション(ベスト・オブ/アンソロジー)

    まず幅広い作品を短時間で体験したい場合は「ベスト」や「アンソロジー」的な編集盤から入るのが効率的です。代表作の抜粋や短めの実験作品を組み合わせることで、作風の主要ポイントが掴みやすくなります。

    聴きどころ:各トラックごとに異なる音響戦略(素材、加工、配置)を意識すると、Parmegiani のメソッドが短時間で理解できます。

聴くときの具体的なアドバイス(機材の話を除く)

  • 1回の通しだけで判断しない:多層的な音響構造は繰り返し聴くことで表情を現します。
  • 「音の動き」を追う:メロディではなく、音の生成・消滅・移動を追跡する聴き方が相性が良いです。
  • 背景情報を活用する:作曲年代や制作背景(GRMでの実験など)を知ると、使われている手法や目的が見えてきます。

おすすめの聴き進め方(順序)

  • まずアンソロジーや短め曲で「耳慣らし」→ 次に『De Natura Sonorum』のような大作へ。
  • コンサート作品と映像音楽を交互に聴いて、抽象的音響と実用的音響の違いを比較する。
  • 気に入った技法(テクスチャー、ループ処理、空間演出)が見つかったら、同時代の他作曲家(Schaeffer、BoulezではなくFerrariやPi etc.)と聴き比べると理解が深まります。

最後に — 何度も反芻して味わう音

Parmegiani の音楽は、即時の「感動」よりも、何度も反芻することで深みが増す作品群です。最初は不可思議に感じるかもしれませんが、音のテクスチャーや動きにじっくり向き合うことで、そこに設計された時間的・空間的な論理が見えてきます。レコード/CDの個別タイトルにこだわるより「代表作」「編集盤」「映像音楽集」を組み合わせると、彼の音響世界を立体的に理解しやすくなります。

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参考文献