Cabaret Voltaire入門ガイド:時代別おすすめアルバムと聴きどころ
はじめに — Cabaret Voltaireとは
Cabaret Voltaire(キャバレー・ヴォルテール)は、1970年代末のイギリス、シェフィールドで生まれた実験的な電子音楽/ポストパンク・ユニットです。ノイズ、コラージュ、アナログ・シンセ、テープ操作、ダンス・ビートを横断する柔軟な姿勢で、インダストリアル/テクノ/ポストパンクの分岐点に大きな影響を与えました。メンバーの変遷はありますが、1979年〜80年代中盤にかけて発表した作品群は、現在でも多くのミュージシャンやレーベルに参照され続けています。
音楽的なフェーズと聴きどころ
Cabaret Voltaireの魅力は、大きく分けて次の3つのフェーズに整理できます。レコードを選ぶ際は、この流れを意識すると見通しがよくなります。
- 初期(実験・コラージュ):テープ・ループ、ノイズ、政治的な断章的語りなど実験性が強い。クラフト感と前衛性が光る作品群。
- 中期(構造化されたダンス/エレクトロ):エレクトロやダンスの要素を取り入れ、より「曲」として聴けるアレンジに。80年代前半〜中盤の名盤群がここに当たります。
- 後期(商業的/実験の折衷):80年代後半以降はモダンでプロダクション志向の強いサウンドが混在。音響的実験心は保ちつつも、88年以降はより洗練された音作りへ。
おすすめレコード(深堀り解説)
Mix-Up (1979)
初期の代表作で、バンドの実験的手法をストレートに体験できるアルバム。サンプリングやループ、カットアップ的な編集が前面に出ており、当時のDIY的なエレクトロニクス感が詰まっています。
- 聴きどころ:荒削りな音像、即興的な編集、寒々しい工業的雰囲気。
- 入門ポイント:先に進むための“背景”を理解するには最適。歴史的価値が高く、彼らの原点を知ることができます。
Voice of America (1980)
実験性を保ちつつ、構造化された曲作りが増えてくる過渡期の傑作です。政治的・社会的なテーマに対する皮肉と冷徹な観察が音響に反映されているのが特徴。
- 聴きどころ:ビートと音響の組合せ、サンプル的効果の使用、インダストリアル〜ポストパンクの交差点。
- 入門ポイント:初期ファンから電子音楽リスナーまで橋渡ししてくれる重要作。
Red Mecca (1981)
評価の高い名盤の一つ。初期の実験性と中期のビート指向が美しく融合し、全体として完成度の高いアルバムになっています。冷戦期の不穏さや都市の風景が音像化されており、当時の時代感も色濃く反映されています。
- 聴きどころ:堅牢なリズムと暗いシンセ、緊張感のあるミックス。
- 代表曲の提示:アルバム通しての雰囲気作りが秀逸で、個別のシングル以上にアルバム体験を推奨。
The Crackdown (1983)
よりダンス・ミュージック的な要素が強まった作品。ベースの効いたグルーヴ、クールで計算されたシンセワークが印象的で、クラブ影響下の音作りが顕著になります。ここから多くの後続のエレクトロニック・バンドが影響を受けました。
- 聴きどころ:ビートの躍動、ミニマルで効率的なアレンジ、より「聴きやすい」構造。
- 入門ポイント:ポストパンク/初期テクノ/エレクトロ好きに刺さる一枚。
Micro-Phonies (1984)
代表曲「Sensoria」を収録したアルバムで、Cabaret Voltaireが一般的な注目を得た作品の一つです。映像と連動したプロモーション(ミュージックビデオ)でも知られており、音の完成度とポップな要素のバランスが取れています。
- 聴きどころ:フックのあるシンセ・ライン、ダンサブルなトラック、映像映えする楽曲構成。
- 入門ポイント:彼らの“ヒット寄り”側を体験するのに良い。クラブ寄りの編集も楽しめます。
The Covenant, The Sword and the Arm of the Lord (1985)
高いプロダクション性と政治的な陰影が混ざり合う作品。よりシャープで洗練された音像になっており、当時のモダンなポストパンク〜ニュー・ウェイヴの影響を受けています。
- 聴きどころ:精緻なサウンドデザイン、冷たい美学とダンス要素の接合。
- 入門ポイント:バンドの成熟期を示す作として評価が高い。
Code (1987)
80年代後半の作で、よりレイヤー化されたサウンドと洗練されたプロダクションが特徴です。実験性は残しつつ、ポップ/商業的な側面が増した時期の代表作として聴く価値があります。
- 聴きどころ:滑らかなプロダクション、シンセとサンプルの精度の高さ。
- 入門ポイント:80年代後半以降のサウンド・アプローチを知るための資料的価値。
シングル/EPで押さえておきたいもの
短いフォーマットで鋭い攻撃性を示す作品も多数あります。初期の「Nag Nag Nag」などは、彼らの衝動性をそのまま切り取った代表的シングルです。EP類は時にアルバムとは異なる実験やダンス志向を示すので、アルバムと併せてチェックするのがおすすめです。
どの順で聴くと良いか(入門ガイド)
- まずはRed Mecca(1981)かMicro-Phonies(1984)で「バンドの良さ」を掴む。
- その後、Mix-UpやVoice of Americaで初期の実験性に遡ると音楽的背景が見えてくる。
- さらにThe CrackdownやCodeでダンス/プロダクション志向の変遷を追う。
購入時のチェックポイント(何を買うか決める際の視点)
- 時代ごとの音作りの違いを重視して選ぶ(「実験性」寄りか「ダンス/プロダクション」寄りか)。
- 初期プレスとリイシューではマスタリングや音像が異なることがあるので、レビューや仕様を確認する。
- シングルやEPはアルバムに未収録の貴重トラックや別ミックスが含まれることがあるため、コレクション価値が高い。
聴く場面・プレイリストの提案
- アンビエント的に聴くなら:Mix-UpやVoice of Americaの深いテクスチャを夜に流す。
- ダンス/クラブ寄りの雰囲気を楽しむなら:The CrackdownやMicro-Phoniesを音量高めで。
- 時代考察的に聴くなら:Red Mecca → The Crackdown → Micro-Phonies の順で変遷を追う。
まとめ
Cabaret Voltaireは、単に一時代の産物ではなく、ノイズ、サンプル、ビートを自在に操った先駆者です。レコードを集める際は「どの面(実験/ダンス/プロダクション)」に惹かれるかを軸に選ぶと、充実したコレクションになります。まずはRed MeccaかMicro-Phoniesあたりから入ってみるのがわかりやすいでしょう。
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参考文献
- Cabaret Voltaire - Wikipedia
- Cabaret Voltaire | AllMusic
- Cabaret Voltaire | Discogs
- Red Mecca - Wikipedia
- The Crackdown - Wikipedia
- Micro-Phonies - Wikipedia


