Current 93 入門ガイド:デイヴィッド・チベットのアポカリプティック・フォーク名作と聴きどころを徹底解説
Current 93 — 概要と聞きどころ
Current 93 はデイヴィッド・チベット(David Tibet)を中心に1980年代初頭に結成されたイギリスの音楽プロジェクトで、初期は産業ノイズやポストパンク的な実験音楽を経て、やがて「アポカリプティック・フォーク(apocalyptic folk)」と呼ばれる独自の領域を確立しました。宗教的ビジョン、神秘主義、終末論、民謡的要素、詩的語りが交差する独特の世界観が特徴です。
以下は、Current 93 の入門〜深化向けに押さえておきたい推薦アルバムの紹介と、その聴きどころ・背景解説です。年代順に並べ、各作の代表曲や聴くときのポイントも挙げます。
1. Nature Unveiled (1984)
・スタイル:初期の工業音楽/実験的ノイズと宗教的な朗読の混合。Current 93 の出発点を示す重要作。
- 聴きどころ:生々しいノイズと怖ろしく宗教的な詩の語りが組み合わさり、後のアコースティック志向とは対照的な“儀式”的世界を提示します。チベットの初期の思想や主題がここに凝縮されています。
- 代表曲:アルバム全体が一つの作品的扱いですが、冒頭部の強い印象が非常に重要です。
- おすすめ層:Current 93 の原点を理解したい人、ノイズ/インダストリアル的な衝撃を体験したい人。
2. Thunder Perfect Mind (1992)
・スタイル:フォーク的要素とバロック的アレンジ、朗読と歌が融合した転機的傑作。以降の「アポカリプティック・フォーク」期を牽引した一枚。
- 聴きどころ:神話的・聖書的イメージと個人的ビジョンが豊かなメロディとともに展開します。暖かい弦やアコースティック楽器が描く暗闇の風景が印象的です。
- 代表曲:タイトル曲に象徴されるような物語性ある楽曲群。コーラスやゲスト・ヴォーカルが雰囲気作りに貢献しています。
- おすすめ層:メロディアスな要素のあるCurrent 93 を聴きたい人、詩と音楽の融合に興味がある人。
3. All the Pretty Little Horses (1996)
・スタイル:ドリーミーで内省的なフォーク作品。伝承歌や子守歌に通じる感覚をチベットの視点で再構築したアルバム。
- 聴きどころ:声のニュアンスと静謐なアレンジが中心。牧歌的ながらどこか不穏な影が差す、夢と悪夢の狭間のような音像です。
- 代表曲:タイトル曲を含む、メランコリックな旋律の連なり。
- おすすめ層:静かな歌もの/叙情的フォークを好むリスナー。
4. Soft Black Stars (1998)
・スタイル:ピアノ中心の歌唱曲集。ほぼ歌詞とピアノに集中した、密度の高い室内楽的作品。
- 聴きどころ:楽器は抑制され、チベットの朗誦に近い歌い方が前面に出ます。歌詞の詩的世界をじっくり味わうアルバムです。
- 代表曲:全曲が一連の歌として機能します。詩のフレーズや繰り返しに耳を傾けると深まる体験。
- おすすめ層:詩的表現やミニマルな編成に惹かれる人。
5. Sleep Has His House (1995/2000 年代再発で認知度拡大)
・スタイル:アンビエント、フォーク、メランコリーなドローンが交差する作風。内省的で静かな終末感を持つ作品。
- 聴きどころ:テンポが遅く、空間性と残響を重視した音作り。長尺のトラックが多く、瞑想的に聴けるアルバムです。
- 代表曲:アルバム全体のまとまりと流れを重視して聴くのが良いでしょう。
- おすすめ層:深い集中で聴くことを好むリスナー、アンビエント〜ドローン好き。
6. Black Ships Ate the Sky (2006)
・スタイル:ゲスト参加が多く、合唱やコール&レスポンス的手法を用いた壮大な作品。多声的で儀式的な空気があります。
- 聴きどころ:「参加者と共同作業による祭儀」とも言える構成。多くの異なる声が重なり、物語性の高いトラック群を形成します。
- 代表曲:参加ヴォーカルを活かした曲が複数。聴くたびに新しい発見がある層の厚いアルバムです。
- おすすめ層:ゲスト・コラボや多声的な合唱表現に興味がある人。
7. The Light Is Leaving Us All (2018)
・スタイル:近年作の代表作。静謐さと断片的な歌曲が混ざり合い、過去作の集約と新たな表現が見られる作品。
- 聴きどころ:老成した視点からの終末観や救済のテーマ。音響的には洗練され、各楽器・声の配置が明確でドラマ性があります。
- 代表曲:アルバム全体が一つの深い物語を紡ぐため、通して聴くと強い印象を受けます。
- おすすめ層:近作に興味がある人、Current 93 の進化を追ってきたリスナー。
聴き方のヒント(順番・コンテキスト)
- 初めてなら:Thunder Perfect Mind を入口にして、そこから Soft Black Stars や All the Pretty Little Horses へ進むと「歌と詩」に重点がある側面がよくわかります。
- 初期の実験性を知りたいなら:Nature Unveiled を聴き、そこから徐々にフォーク的要素が強まる流れを追うと変化が見えて面白いです。
- 深掘りするなら:Black Ships Ate the Sky や The Light Is Leaving Us All のような後期作を通しで聴き、ゲスト参加やアレンジの幅を体験してください。
- 歌詞重視:デイヴィッド・チベットの語り・詩世界が核心なので、歌詞を読みながら聴くと理解が深まります(歌詞カードや公式サイトの転載を参照)。
コラボレーターと影響
Current 93 の作品は多くのゲストや共同制作者を迎えて作られています。ニック・ケイヴ(Nick Cave)やマーク・アルモンド(Marc Almond)、スティーヴン・ステイプルトン(Nurse With Wound)やマイケル・キャシュモア(Michael Cashmore)など、さまざまな音楽家が参加しており、それが音楽の多様性に寄与しています。また、神秘主義、キリスト教終末思想、アレイスター・クロウリーなどの影響も作品世界を形成する重要な要素です。
これから聴き始める人へのおすすめまとめ
- 入口:Thunder Perfect Mind(歌と物語性のバランスが取りやすい)
- 詩や声を楽しむ:Soft Black Stars、All the Pretty Little Horses
- 初期の激しさを知る:Nature Unveiled
- 多声的・儀式的な体験:Black Ships Ate the Sky
- 近作の深み:The Light Is Leaving Us All
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参考文献
- Current 93 — Wikipedia (英語)
- Current 93 公式サイト
- Current 93 — Discogs ディスコグラフィ
- Current 93 — AllMusic(バイオ/レビュー)


