Current 93 入門ガイド: ネオフォークと実験音楽の名盤7選と聴き方

Current 93 — 概要と位置づけ

Current 93(カレント93)は、デイヴィッド・チベット(David Tibet)を中心に1980年代初頭から活動するイギリスの実験音楽/ネオフォーク・プロジェクトです。初期はノイズ/インダストリアル寄りのサウンドから出発し、次第に宗教的・黙示録的な詩世界、フォーク・アレンジ、室内楽的なアプローチへと移行しました。作風は非常に多様で、短期的なメンバー交代やコラボレーターの影響が色濃く反映されるため、アルバムごとに別世界のような表情を見せます。

聴く前の心構え

  • 歌詞(詩)と物語性が中心:音像以上に言葉やイメージが強力な作品が多いので、歌詞カードや英訳を手元に置いて聴くと理解が深まります。
  • 変化を楽しむ:あるアルバムを気に入っても、次に聴く作品が大きく変わることが常です。音楽的・主題的な“移動”自体がCurrent 93の魅力です。
  • コラボレーターに注目:Michael CashmoreやSteven Stapleton(Nurse With Wound)など、繰り返し登場する人物の影響を追うと聴きどころが増えます。

おすすめレコード(アルバム別 深掘り)

1. Nature Unveiled(1984)

概要:Current 93の初期代表作。インダストリアル/実験音響の影響が色濃い作品で、荒涼とした電子音、ノイズ、チベットの荒ぶる語りが中心。

  • 聴きどころ:初期のアグレッシブな精神性と黙示録的なテーマ。後期ネオフォーク路線とは異なる“生の暴力性”を体感できます。
  • 入手・盤情報:オリジナルは希少ですが、近年の再発やコンピレーションでアクセス可能。初期作の“荒々しさ”を好むならオリジナルプレスを探す価値があります。

2. Swastikas for Noddy(1988)

概要:物議を醸したタイトルのため流通が限定されることが多かった作品。イメージと言葉遊び、ブラックユーモア、宗教観やイデオロギーの戯れが混在します。

  • 聴きどころ:挑発的なコンセプトとサウンドの実験性。Current 93の“挑発的・境界を押す”側面を知るには重要。
  • 注意点:タイトル/内容上、流通と扱いに敏感なアルバムなので購入時は出自やライナーノーツを確認することを推奨します。

3. Thunder Perfect Mind(1992)

概要:Current 93の“転換点”としてよく挙げられる重要作。フォーク的な楽器配列と詩的な歌唱が強調され、聴きやすさと深さを兼ね備えています。

  • 代表曲的要素:叙情的かつ黙示録的な世界観が凝縮されており、初心者にもおすすめできる入門盤の一つ。
  • なぜ買うか:思想的奥行きとメロディの親密さが共存しており、Current 93の“典型”的な魅力を堪能できます。
  • 盤事情:再発が複数存在するため、サウンドの好み(オリジナル・マスタリング vs リマスター)に応じて選ぶとよいです。

4. Sleep Has His House(1991)

概要:瞑想的・暗鬱な空気のアルバム。サウンドスケープ寄りで、フォーク寄りの楽曲よりも静かな持続感が特徴です。

  • 聴きどころ:テンポや表情を抑えた中で言葉がより際立つ作品。夜間や沈思黙考に向いた音楽です。
  • 買いどころ:深い集中を求めるリスナーにおすすめ。アナログでの再生は音の奥行きが楽しめます。

5. All the Pretty Little Horses(1996)

概要:フォークと室内楽的な編成を中心に据えた作品で、抑制された美が前面に出たアルバム。しばしばCurrent 93の“成熟期”の一枚として挙げられます。

  • 聴きどころ:シンプルながらも深いミニマルなアレンジ。歌詞の牧歌性と暗いトーンの対比が印象的です。
  • コレクター向け:リイシューや限定盤が存在するため、付属のライナーノーツやアートワークの違いをチェックすると良いでしょう。

6. Soft Black Stars(1998)

概要:ピアノと歌を中心にした、非常に親密で詩的なミニマリズム作品。アルバム全体が詩の連続のように構成されています。

  • 聴きどころ:デイヴィッド・チベットの語りと歌の“近さ”が最大の魅力。集中して歌詞を追うと深い味わいが得られます。
  • おすすめポイント:静かな夜、ヘッドフォンでの深聴取が最適。音数の少なさが逆に感情を強調します。

7. Black Ships Ate the Sky(2006)

概要:大規模なコラボレーション作品で、多数のゲストヴォーカルやミュージシャンが参加した“現代の口承詩”的なアルバム。合唱的/群像劇的な展開が特徴。

  • 聴きどころ:多声的な演出と物語性。アルバム全体を物語として受け止めるのが楽しみ方の一つです。
  • コレクション性:コラボ参加者や限定仕様の違いで価値が変わることがあるので、関心がある場合はクレジットを確認してください。

聴き方・選び方の実践アドバイス

  • 入門者:まずは「Thunder Perfect Mind」か「All the Pretty Little Horses」から。比較的取り付きやすくCurrent 93らしさが分かります。
  • 実験性を味わいたい人:初期の「Nature Unveiled」や「Swastikas for Noddy」を試すと、過激さと思想性の原点が見えます。
  • 詩を重視する人:「Soft Black Stars」は歌詞を味わうのに最適。歌詞カードを見ながら聴くことを勧めます。
  • アルバム通読を楽しむ:物語やテーマを追いながら一枚を通して聴くと、断片的な曲の集まり以上の体験が得られます。

コレクター向けの買い方ポイント(盤そのもののメンテ以外)

  • プレス違いを確認:初期プレス、限定色盤、再発リマスターなどで音質や収録曲が異なる場合があります。欲しい音源(ボーナストラック、別ミックス)があるか確認しましょう。
  • ライナーノーツとクレジット:ゲスト参加者の情報やリリース解説は作品理解に重要。見開きジャケットやインサートの有無も価値に影響します。
  • 流通の事情:一部作品(例:物議を呼んだタイトルや限定リリース)は流通が限定されがちです。信頼できる販売元やディスコグラフィ(Discogs等)で出自を確認してください。
  • 再発のメリット:リマスターやボーナストラック、改善されたパッケージがある再発は、音質や資料性を重視する場合は有利です。

深掘りのための関連アーティスト・参考作品

  • Nurse With Wound(Steven Stapleton) — Current 93と密接な関係を持つ実験音楽プロジェクト。プロデューサー/コラボレーターとしても関与。
  • Coil — 同時代の実験音楽シーンで交流があり、影響関係があるアーティスト。
  • Death in June / Sol Invictus などのネオフォーク系 — 共通のテーマ性や美学を持つサイドリファレンスとして有用。

最後に — Current 93をレコードで楽しむ理由

Current 93は一貫したジャンルでは括れない“詩的な音楽プロジェクト”です。アナログで聴くことで、音の厚みやアートワーク、付属資料との一体感が高まり、アルバムごとの独立した世界に没入しやすくなります。どのアルバムも一筋縄ではいかないため、好奇心に任せて“試聴と反芻”を繰り返すのが何よりの楽しみ方です。

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参考文献