Einstürzende Neubauten 完全ガイド: プロフィール・名盤・ライブで辿る音の建築と実験精神

Einstürzende Neubauten — プロフィールと全貌

Einstürzende Neubauten(アインシュテルツェンデ・ノイバウテン)は、1980年に西ベルリンで結成された実験音楽/インダストリアルの先駆的バンドです。バンド名は直訳すると「崩れ落ちる新築(建物)」を意味し、その名前が示すように、既存の音楽語法や楽器の構造を文字どおり「破壊」して再構築するアプローチで知られます。ヴォーカルと詩的な言語感覚で知られるブリクサ・バルゲルト(Blixa Bargeld)を中心に、N.U. Unruh、F.M. Einheit、アレクサンダー・ハッケらによる実験的打楽器・工作音響がバンドの核です。

何がユニークか — 音作りと表現の手法

  • 非楽器の楽器化:工具、建築資材、金属板、電動工具、廃材などを打楽器や共鳴板として用い、「音の素材」を演奏可能なインストゥルメントに変換します。これにより一般的なドラムやギターとは異なる、工場や工事現場を思わせるテクスチャが生まれます。

  • リズムと秩序の共存:一見ランダムでカオティックな音響でも、細かく計算されたリズムやアンサンブル感が存在します。破壊的なサウンドの中に強いビートやポリリズムが隠れており、その緊張感が聴き手を惹きつけます。

  • 言語・詩の実験:歌詞はドイツ語が中心で、言葉の断片化、反復、音声的な実験(語感や口音の利用)を通じて、意味と言葉の身体性を探ります。ブリクサのヴォーカルは語り・叫び・囁き・メロディを自在に往復します。

  • パフォーマンス・アート性:ステージはしばしば劇場的かつ実験的です。楽器の破壊や工作音響の即興、観客を巻き込む演出など、コンサートは単なる音楽演奏を超えた実験の場となります。

  • 進化するサウンド:初期の徹底したノイズ/破壊志向から、次第に曲構成やメロディ、電子音やフィールドレコーディングの導入なども取り入れ、柔軟に変化してきました。

ライブの魅力 — 体感する音の建築

Einstürzende Neubautenのライヴは音響だけでなく視覚・身体を巻き込む体験です。巨大な金属片を叩く音、火花、機械音、そして静寂の使い方が交互に現れることで、「破壊」と「再生」を体感的に示します。凶暴に見えて緻密なアンサンブルがあり、聴衆は物理的に音の振動を受け取る──つまり「音の空間」を浴びる感覚になります。

代表作・名盤とその聴きどころ

  • Kollaps (1981) — 初期の衝動と原始的なノイズ性が顕著に出た作品。既存の楽器概念を破る実験精神を直に味わえます。荒く、攻撃的で、当時のアンダーグラウンド・ベルリンを象徴する一枚。

  • Zeichnungen des Patienten O.T. (1983) — 実験性を深化させつつ、音の空間処理やテクスチャにより豊かな表情を与えた作品。ノイズと音楽性の境界線を曖昧にします。

  • Halber Mensch (1985) — より構築的な曲作りと、詩的で暗い歌詞世界が結びついた名盤。迫力あるリズムと抑制されたメロディが共存し、バンドの評価を決定づけました。

  • Haus der Lüge (1989) — 表現の幅が広がり、サウンドスケープや実験的編曲がより洗練された時期の作品。物語性や舞台性を感じさせます。

  • Tabula Rasa (1993) / Ende Neu (1996) — 90年代に入ってからの作品群は、電子音や伝統的ソングライティングの要素を取り込み、ノイズとポップの境界を探る試みが見られます。特にEnde Neuは再編成後の新たなバランスを示します。

  • Silence Is Sexy (2000) / Alles wieder offen (2007) — 静寂や空白を意識的に使う成熟期の作品。初期の破壊的な衝動を内包しつつ、音楽的な緩急や歌の美しさを強めたアルバムです。

ビジネス面での革新 — サポーター制度

Neubautenは早くからファンとの直接的な関係構築に取り組みました。公式サイトを通じたサポーター(支援者)プログラムでは、制作過程の公開、限定音源やツアー招待などを提供して資金とコミュニティを確立。これにより従来のレーベル依存から距離を置き、独立した創作活動を継続するモデルを実践しました。インディーズ/アーティスト直販化の先駆例としてしばしば引用されます。

影響力と評価 — なぜ今でも重要か

  • インダストリアル/ノイズ/ポストパンクなど、多くのジャンルに対する実験的影響力は大きいです。多様なミュージシャンや音響作家が彼らの手法や音世界から着想を得ています。

  • アート作品としての音楽──サウンドアートやパフォーマンスアートの交差点に位置することで、美術館や現代音楽の文脈でも評価されます。

  • 技術的・表現的な自由を追求した姿勢は、現在のDIY精神やクラウドファンディング的手法の先駆けとして再評価されることが多いです。

入門ガイド — どう聴くか、どこから始めるか

  • 「まずは代表作で輪郭を掴む」:Halber Mensch や Kollaps を通して初期の衝動とサウンドの基礎を把握し、その後に Haus der Lüge や Silence Is Sexy などで音楽性の幅を確認するのが良い流れです。

  • ライブ映像やライヴ音源を観る/聴く:彼らの音楽は視覚情報とともにこそ成立する部分が大きいため、コンサート映像やライヴ録音を併せて見ると理解が深まります。

  • 言葉の響きに注目する:歌詞の具体的な意味だけでなく、語音や反復が作るリズム感、空気の動きにも耳を傾けると新たな魅力が見えてきます。

まとめ — 破壊のその先にある構築性

Einstürzende Neubautenは単に騒音を生み出すバンドではありません。既成の楽器・表現を解体し、新しい音の建築を行うことで、私たちの「音楽」の概念そのものを問い直してきました。過激な手法と詩的な言語感覚の両立、そしてファンとの新しい関係構築は、今日でも多くのクリエイターに示唆を与え続けています。初めて触れる人には衝撃的かもしれませんが、少しずつテクスチャや構造に注意を向けると、驚くほど深い音の世界が開けます。

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参考文献