ジム・スタインマンのロックオペラを聴く:必聴アルバムと聴き方のコツ

はじめに — ジム・スタインマンという音楽家

ジム・スタインマン(Jim Steinman)は、ロックをオペラティックに膨らませる独自の作曲・プロデュース感覚で知られるソングライター/プロデューサーです。ドラマティックで長尺の楽曲、映画的なアレンジ、叙情的かつ大仰な歌詞世界──これらはいわゆる「ワーグナー的ロック(Wagnerian rock)」とも呼ばれ、Meat Loaf(ミート・ローフ)やBonnie Tyler(ボニー・タイラー)、Celine Dion(セリーヌ・ディオン)など名だたる歌手たちと協働して名曲を生み出しました。本コラムでは、スタインマン作品の中から「レコードとして聴くべき」おすすめ盤を選び、その魅力と聴きどころを深掘りしていきます。

おすすめレコード(代表作と必聴ポイント)

Meat Loaf — Bat Out of Hell(1977)

スタインマン=ミート・ローフの出会いが生んだ金字塔的名盤。ロック・オペラの代表作と呼べる大作で、ドラマ性とポップ性を両立させています。

  • 代表曲: “Bat Out of Hell”、 “Paradise by the Dashboard Light”、 “Two Out of Three Ain't Bad”
  • 聴きどころ: 長尺曲の展開美、コーラスやブラスの重厚な重ね、語りや劇的な間(ま)を活かした構成。ストーリーテリングとしての歌詞にも注目。
  • 背景: トッド・ラングレン(Todd Rundgren)によるプロデュースとの相互作用、レコードというフォーマットで聴くとアルバム全体の起伏が際立ちます。

Meat Loaf — Bat Out of Hell II: Back into Hell(1993)

オリジナルの精神を受け継ぎつつ、90年代のサウンド感で再構築した続編。シングル“ I'd Do Anything for Love (But I Won't Do That) ”の成功で再び大衆の注目を浴びました。

  • 代表曲: “I'd Do Anything for Love (But I Won't Do That)”、 “Objects in the Rear View Mirror May Appear Closer Than They Are”
  • 聴きどころ: 90年代ならではのプロダクション感と、スタインマンらしいシネマティックなクライマックスの融合。名バラードと大曲のコントラスト。
  • 背景: オリジナルの流れを踏襲しつつ、レコーディング技術の進化がもたらす音像の広がりも魅力です。

Jim Steinman — Bad for Good(1981)

本来ミート・ローフに提供されるはずだった楽曲群を、スタインマン本人が表現したソロ作品。ソングライターとしての原点や構想が色濃く出た一枚です。

  • 聴きどころ: スタインマン自身の声で聴くことで見えてくるフレーズの意図や、デモ的な熱量。特に楽曲のスケール感、アレンジの過剰さがファンには聴きどころになります。
  • 背景: ミート・ローフ側に事情がありスタインマンが自ら歌う形になった経緯があり、作品としては稀有なドキュメント性があります。

Pandora's Box — Original Sin(1989)

スタインマンがプロデュースしたコンセプト・プロジェクト。女性ヴォーカリストたちが歌うことで、彼の世界観が別角度から提示されます。

  • 代表曲(筆頭例): スタインマン作の“You're All Coming Back to Me Now”(のオリジナル・バージョン)など、後に他アーティストによってヒットした曲の原型に触れられます。
  • 聴きどころ: 男性ヴォーカルとは違う表情の劇性、コーラスやハーモニーのアレンジが豊富。スタインマンの曲が他者に歌われることで開く新たな解釈を味わえます。
  • 背景: アルバムはコンセプト的・劇場的な構成を持ち、スタインマンの「物語作り」の側面が強調されています。

Bonnie Tyler — Faster Than the Speed of Night(1983)

スタインマンが楽曲とプロデュースで深く関わったボニー・タイラーの代表作。彼の書く大仰なメロディが女性ヴォーカルと相性良く花開いています。

  • 代表曲: “Total Eclipse of the Heart”
  • 聴きどころ: 声量のある女性ヴォーカルを最大限にドラマ化するスタインマンのアレンジ、映画的なビルドアップ。シングルとしての完成度も非常に高い。
  • 背景: スタインマンの作風がポップ・シングルとして成功した好例で、アルバム全体を通しての起伏も魅力です。

Celine Dion — Falling into You(1996)(収録曲:“It's All Coming Back to Me Now”)

スタインマン作品がポップ・スタンダードとして大成した代表例。セリーヌ・ディオンの歌唱力とスタインマンのメロディ/構築が結びついて世界的大ヒットになりました。

  • 代表曲(該当アルバム内): “It's All Coming Back to Me Now”
  • 聴きどころ: オリジナルの作曲意図がポップスの文脈でどのように拡張されたか、壮大なバラードの表現力を確認できます。
  • 背景: カバー/再解釈によって曲が再評価される良い例で、スタインマンの楽曲がジャンルや時代を超えて機能することを示しています。

舞台版:Bat Out of Hell — The Musical(オリジナル・キャスト盤)

スタインマンの楽曲群を舞台化したミュージカル。アルバムとして聴くと、楽曲同士のつながりや物語構成がより明確になります。

  • 聴きどころ: スタインマンのナラティヴ性を舞台演出で体感できる点。アルバム単体でも劇的な流れが楽しめます。
  • 背景: オリジナル曲の再編成や演出効果により、作品としての受け取り方が変わる面白さがあります。

聴き方のコツ(楽曲分析的視点)

スタインマン作品を深く味わうためのポイント:

  • 楽曲を「場面」として聴く:曲中にドラマがあるため、短いフレーズを断片的に聴くよりアルバムや長尺曲を通して聴くと発見が多い。
  • アレンジの変化に注目:ブラス、ストリングス、コーラスが入る瞬間のダイナミクスや、イントロ→ビルド→クライマックスの作り方に特徴がある。
  • 歌詞の反復表現:同じモチーフが歌詞やメロディで何度も反復され、物語性を高める手法をよく使っています。繰り返し聴くことで構造が見えてくる。
  • 別バージョンを比較する:同じ曲の別アーティストによる録音(Pandora's Box版とCeline Dion版など)を比較すると作曲の強度や解釈の幅が理解しやすいです。

まとめ

ジム・スタインマンの作品は、単なる“ロック曲”にとどまらず、叙事詩的な物語や映画的なスケールを感じさせます。レコード(アルバム)というフォーマットで通しで聴くことで、彼の提示する世界観がより強烈に伝わります。まずは『Bat Out of Hell』(1977)を起点に、ソロ作やプロデュース作、ミュージカル版へと広げていくと、スタインマンの音楽的宇宙を縦横に楽しめるはずです。

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参考文献