Jordi Savallの世界:古楽ヴィオールの巨匠が紡ぐ名盤と聴き方ガイド
イントロダクション — Jordi Savallとは何者か
ジョルディ・サヴァール(Jordi Savall)はヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)の名手であり、音楽学者、指揮者、編曲者としても知られるカタルーニャ出身の演奏家です。古楽復興運動の中心人物の一人であり、古楽アンサンブル Hespèrion XX(のちに Hespèrion XXI)や La Capella Reial de Catalunya、Le Concert des Nations を率いて、中世〜ルネサンス〜バロック、更には地中海・大西洋横断の民族音楽的な接点まで幅広いレパートリーを掘り下げてきました。
サヴァールの音楽的特徴と聴きどころ
歴史的演奏慣習に基づく「語りかける」アプローチ:フレージングや装飾はテキストや情緒に根ざしており、演奏が物語を紡ぐような聴き心地があります。
編成と音色の多様性:ソロのヴィオールから古楽アンサンブル、合唱付きの宗教曲、民族楽器を交えた国際的プロジェクトまで、音色のレンジが広いのが特徴です。
学際的・社会的な視点:学術的な裏付けのあるプログラミングや、歴史的なテーマ(例:奴隷の道、地中海の交流、ユダヤ・セファルディ音楽など)を扱う作品群があります。
録音・制作のこだわり:自ら設立したレーベル“Alia Vox”を通じて、楽譜解釈や音響にも配慮した質の高い音源を多数発表しています。
おすすめレコード(代表作・名盤を深掘り)
Llibre Vermell de Montserrat(Hespèrion XX/Hespèrion XXI)
中世の巡礼歌集「モンセラートの赤本(Llibre Vermell)」を中心に据えた録音は、サヴァールの初期からの重要レパートリーです。生々しい声と古楽器アンサンブルによる演奏は、当時の宗教的な空気と巡礼の躍動感を伝えます。中世音楽の“原始性”に触れたい人、民衆の歌と教会音楽の交錯に興味がある人に強く薦めます。
聴きどころ:単旋律の中に見える装飾、合唱と器楽の掛け合い、教会空間を想起させる音響表現。
Tous les matins du monde(映画サウンドトラック)
映画『朝なき月のごとく(Tous les matins du monde)』のサウンドトラックは、サヴァールの名を一般に広めた作品のひとつです。Sainte-Colombe や Marin Marais の作品を中心に、ヴィオールの抒情性と哀感が際立つ演奏が収められています。映画音楽としての情感表現と歴史的演奏の両立が聴ける点が魅力です。
聴きどころ:ヴィオールの独特なビブラートの少ない表現、寂寥を帯びた低音域の語り、チェンバロやリュートとの繊細な対話。
Marin Marais / Pièces de viole(サヴァールのヴィオール独奏録音集)
フランス・バロックのヴィオール音楽、特に Marin Marais の作品はサヴァールの中心レパートリーのひとつです。技巧的かつ情緒豊かなバロック大作を通じて、ヴィオールの可能性と表現の深さを体感できます。ヴィオール奏法を学ぶ・味わう上での教科書的録音です。
聴きどころ:フレーズの呼吸、装飾の選択、低音弦を響かせることで生まれる官能的なニュアンス。
Les Routes de l'esclavage(The Routes of Slavery)
アフリカから大西洋・地中海を経て広がった音楽文化の軌跡を追う大型プロジェクト(録音・コンサート・書籍・映画を含む)です。古楽という枠を超え、アフリカ系の声やリズム、ヨーロッパの古い宗教音楽や民俗音楽を結びつける試みは、サヴァールの人文的関心と音楽家としての幅の広さを示しています。歴史の「見えなかった側面」を音で語る重要作です。
聴きどころ:異文化間の音楽的共鳴、声の使い分け(宗教歌、民謡、合唱)、民族楽器と古楽器の対話。
Orient-Occident(地中海諸文化の対話)
地中海地域を舞台に、アラブ、ユダヤ、キリスト教の音楽伝統が交わる接点を探索した作品群。異なる言語・旋法・リズムが相互に反響するさまは、サヴァールが長年取り組んできた「多文化的古楽」の魅力そのものです。旅するように聴けるアルバムとしておすすめです。
聴きどころ:モード(旋法)の交換、即興的な歌い回し、民族楽器の色彩。
Sephardic / ユダヤ・セファルディ音楽集
サヴァールはセファルディ(スペイン・ポルトガル出身のユダヤ人)の伝承音楽にも深く関わっています。スペイン史に根付く言語と詩を用いた歌曲は、哀愁と地中海的な暖かさが同居しており、サヴァールと合唱・声部の繊細なアンサンブルが魅力的です。歴史の繋がりを音で感じたい人に向きます。
聴きどころ:語りと歌の境界線、民謡的な歌唱法、古楽器による伴奏の色合い。
どの版(レーベル・録音)を選ぶか
初期録音は Harmonia Mundi / Auvidis 等のレーベルで出ており、近年は Jordi Savall 自身のレーベル Alia Vox からリマスター/再発されているものが多いです。音質やブックレット(解説)の充実度を重視するなら、Alia Vox の紙ジャケット/解説付き再発をチェックすると良いでしょう。
同じ曲目でもアンサンブル編成や録音年で解釈が異なることがあるため、気に入った演奏があれば初出の録音と再録を聴き比べるのがおすすめです。
映画サウンドトラック等はサントラ盤としても入手しやすく、映画を見ながら音楽の背景を味わうと理解が深まります。
聴き方のヒント(鑑賞の深め方)
テクスチャーに注目:声・弦楽器・リズムのレイヤーがどのように重なり合って感情を作るかを意識して聴いてみてください。
装飾と即興:サヴァールの演奏は装飾の選択が個性的です。同じ主題が繰り返される場面での装飾の変化に耳を澄ますと、演奏家の解釈が見えてきます。
歴史的文脈を読む:ライナーノーツや解説書を読むと、なぜその曲が選ばれたか、どのように復元されたかが理解でき、鑑賞がより深まります。
購入/収集のワンポイント(録音の選び方)
まずは代表作を1〜2枚選ぶ:入門には「Tous les matins du monde(サウンドトラック)」や「Llibre Vermell」が取り組みやすいです。
テーマ別に揃える:ヴィオール独奏、地中海プロジェクト、奴隷の道/民族音楽などテーマ単位で集めると楽しみや研究が深まります。
解説の有無をチェック:Alia Vox 等は解説や資料が充実していることが多く、初めての購入には役立ちます。
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参考文献
- Jordi Savall 公式サイト
- Alia Vox(Jordi Savall のレーベル)
- Jordi Savall — Wikipedia(英語)
- Hespèrion XXI — Wikipedia(英語)


