Count Basie完全ガイド:入門から深掘りまでの名盤解説と聴き方ポイント
はじめに — カウント・ベイシーという存在
Count Basie(ウィリアム・ジェームズ・ベイシー、1904–1984)は、ビッグバンド・スウィングの代名詞であり、ジャズ・アレンジとリズム感覚に革命をもたらしたバンドリーダー/ピアニストです。シンプルで無駄のないピアノ、タイトなリズム・セクション(特にギターのフレディ・グリーン)、“ヘッド・アレンジ”やシャウト・コーラスを核にした吹奏感は、スウィングの基本形を確立しました。本コラムでは、ベイシー入門から通好みの名盤まで、レコード(アルバム)を通して深堀りして解説します。
ベイシーの音楽的特徴を聴くポイント
リズム・セクションの“間”(スウィングの間合い):ベイシー・バンドは拍の“空間”を活かす演奏が多く、ドライブ感を出しつつも余裕を感じさせます。
ヘッド・アレンジ(口承・即興で作られたバンドのテーマ):緻密な書き譜だけでなく、バンド員同士の即興的な合意によるアンサンブルが多い点に注目してください。
ソロの「語り口」:レスター・ヤング、フランク・フォスター、ジョー・ウィリアムスらのソロは“歌う”ようなフレーズが特徴です。ソロ/伴奏のバランスを意識して聴くと発見が多いです。
ダイナミクスと掛け合い:ブラス・セクションの“シャウト”やブレイク、リズムとホーンの対話が曲のドラマ性を作ります。
おすすめレコード(厳選)
以下はジャンルや時代を横断して、ベイシーの魅力を最もよく表すアルバム群です。各盤ごとに聴きどころと推薦理由を示します。
The Original American Decca Recordings (1937–1939)
なぜ聴くか:ベイシーの“カンザス・シティ時代”の原点が詰まった音源集。レスター・ヤング、ウォルター・ページ、ジョー・ジョーンズといった黄金期の顔ぶれが揃い、シンプルなヘッド・アレンジとスウィングの原理を学べます。
聴きどころ:「One O'Clock Jump」や「Jumpin' at the Woodside」など、即興とアンサンブルが融合した代表曲群。
April in Paris (1956)
なぜ聴くか:50年代のベイシー・オーケストラの完成度を示す名盤。定番曲「April in Paris」をはじめ、バンドの一体感とアレンジの巧みさが光ります。ライブ感と緻密な書き譜が共存する好例です。
聴きどころ:ホーンのシャウト・セクションや、テーマとソロの切り替えに注目してください。バンドのダイナミクスコントロールがよく分かります。
The Atomic Mr. Basie (1957)
なぜ聴くか:ニール・ヘフティらによるモダンでエネルギッシュなアレンジが多数。ベイシー楽団の“新しさ”と伝統的スウィングのバランスが絶妙で、ビッグバンド・ジャズの金字塔とされる一枚です。
聴きどころ:アレンジの色彩感、リズム・セクションの突進力、ホーン群のカウンターメロディ。アルバムを通して“爆発力”を体感できます。
Count Basie Swings, Joe Williams Sings(1955頃の共演作)
なぜ聴くか:シンガーのジョー・ウィリアムスと組んだ作品は、ベイシーのもう一つの顔──ヴォーカルものの魅力を教えてくれます。ブルース・フィーリングを前面に出した楽曲が多く、温度感のある演奏が特徴です。
聴きどころ:「Every Day I Have the Blues」など、ヴォーカルとバンドの呼吸、ソロの“語り”を味わってください。
First Time! The Count Meets the Duke(1961)
なぜ聴くか:デューク・エリントンとの夢の共演。両者の楽曲や編曲が交差することで、ビッグバンドの表現の幅が広がります。ジャズ史上重要な交流記録です。
聴きどころ:ベイシーのリズム・アプローチとエリントンの和声感の対比。アンサンブルの異なる色彩を聴き比べる楽しさがあります。
It Might as Well Be Swing / Sinatra at the Sands(フランク・シナトラとの共演)
なぜ聴くか:シナトラとの共演作は、ベイシー・オーケストラの“伴奏力”が如何に優れているかを示します。スタンダードの歌ものをビッグバンドでどう膨らませるか、実演的に学べます。ライブ盤「Sinatra at the Sands」は特に熱演で知られます。
聴きどころ:シンガーとの呼吸、バンドのダイナミクス、即興的な応酬がライブならではの魅力です。
代表曲・コンピレーション(入門用): The Essential Count Basie, Best of Basie など
なぜ聴くか:初めて聴く人には代表曲を年代順に追えるコンピ盤が便利です。ベイシーの変遷(カンザス・シティ期→スウィング期→50s以降のモダン期)が一枚で理解できます。
聴きどころ:時代ごとのサウンドの差、ソロイストの変遷、編成(ホーンの厚み/リズムの感覚)を比較してみてください。
各盤の聴き方(具体的なガイド)
初めてなら:コンピレーションや「April in Paris」あたりでベイシー・サウンドの核心(タイトなリズム、シンプルなピアノ、シャウト)を掴む。
歴史的な流れを掴む:まずはDecca時代(1930s)→50年代の再評価(Roulette期やモダン編曲)→1960年代以降のコラボ作の順で聴くと、バンドの変遷が明瞭になります。
ソロを楽しむ:ベイシー楽団は名手が多いので、ソロの“語り口”に注目。レスター・ヤングのメロウさ、フランク・フォスターの造形、ジョー・ウィリアムスの歌唱表現など、個々の表現を意識して聴くと新たな発見があります。
編曲を味わう:「The Atomic Mr. Basie」のようにアレンジの個性が強い盤は、ホーンの配置やリフの運び、コントラスト(静→爆発)に注目すると楽しめます。
マニア向けの楽しみ方・深掘りポイント
ライブ録音の比較:同じ曲でもスタジオとライブでアプローチが異なることが多いです。ライブではソロの自由度やブレイクの扱いが変わるので聴き比べがおすすめです。
メンバーごとの時代差:同じ“Count Basie Orchestra”でも、戦前〜戦後〜50s以降で人員が変わるため、同一楽曲の演奏が大きく変わる点を追うと当時の音楽事情やジャズ史の流れが見えてきます。
編曲者の影響:ニール・ヘフティ、フランク・フォスターら、アレンジャーごとの色がバンドの個性に強く影響します。編曲クレジットをチェックして聴き比べると面白いです。
これから聴き始める人へのおすすめ順
入門:代表曲集や「April in Paris」→
基礎理解:Decca時代の編集盤(1937–39)で“原点”を確認→
深掘り:The Atomic Mr. Basieでアレンジの革新を体感→
応用:ジョー・ウィリアムスやシナトラとの共演で伴奏力や歌への寄り添いを学ぶ→
まとめ
Count Basieは“省略の美”と“タイム感”によって、ビッグバンド・ジャズの核を作り上げた稀有な存在です。まずは代表盤でその基礎を体感し、時代ごとの音の変化や編曲者・ソリストの個性を追うことで、より深い理解と多くの発見が得られるでしょう。レコードはアルバムごとに異なる物語を持っており、聴く順番や比べ方で新たな表情を見せてくれます。
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参考文献
- Count Basie — Wikipedia
- Count Basie Discography — AllMusic
- Count Basie Discography — JazzDiscography.org
- Count Basie — Encyclopaedia Britannica


