Sidney Bechetのジャズ史を辿る:初心者からコレクターまで楽しめるおすすめレコードと聴きどころ
Sidney Bechet — ジャズ史に残るソロイストを聴く
Sidney Bechet(シドニー・ベシェ)は、20世紀前半のジャズを語るうえで欠かせない存在です。独特の太くて情感あふれる音色、豊かなビブラート、そしてソロの明快さは、クラリネットとソプラノ・サックスの両面で多くの聴き手を魅了してきました。本稿では「レコードで聴く」ことに重点を置き、入門者からコレクターまで楽しめるおすすめ盤(および代表的なセッション/編集盤)を、曲の聴きどころや背景コメントとともに紹介します。
なぜBechetを聴くべきか
ソプラノ・サックスを即興ソロ楽器として確立した先駆者の一人であり、トーンとフレージング(歌い回し)での個性が明確。
ニューオーリンズ・ジャズの流れをそのまま携えつつ、モダンな感性でも表現できる橋渡し的な存在で、20〜50年代の音源を通じてその変遷を追えます。
録音時期や編成(小編成のホット・ジャズから、フランスでの人気期における歌心のある演奏まで)によって表情が大きく変わるため、録音ごとの比較が楽しい。
おすすめレコード(セッション/編集方針に基づく)
以下は「まず手に入れたい」「じっくり聴き込む価値あり」といえる選りすぐりのセッション/編集盤です。オリジナル盤は入手が難しいことが多いので、良好なリマスター/編集盤を選ぶと聴きやすいです。
初期のNY/Clarence Williams関連セッション(1920年代 初期)
Bechetが頭角を現した重要な時期で、彼のソロ語法がはっきり聴けます。小編成での即興が多く、ニューオーリンズ直系のリズム感と、ソロの強い個性が堪能できます。歴史的価値が高く、コンピレーション(「Complete 1923–●●」等)でまとめて聴くのがおすすめです。
1930年代〜40年代のリーダー作・セッション
この時期は録音技術の向上とともにBechetの音の輪郭もより明瞭になっていきます。クラリネットでの熱演や、バンドとのインタープレイ(掛け合い)を楽しめる録音が多く、表現の深まりを感じられます。年代順に追うと、彼の表現の幅がよくわかります。
パリ(フランス)録音群 — 「Petite Fleur」など(1940s〜1950s)
Bechetは戦後のパリで非常に高い人気を得ました。特に「Petite Fleur」は国際的なヒットとなり、歌心に満ちたメロディ・プレイが際立ちます。フランス録音は温かみと歌うようなソロが特徴で、初めて聴く人にも強く訴えます。
ライヴ録音(ヨーロッパ公演など)
ステージでの即興の熱量、客席との呼応、バンドとのスリリングなやりとりはライヴならでは。会場の空気感が伝わる良盤を選べば、Bechetのライブの魅力を直接味わえます。
網羅的なボックス/編集盤(“Complete”系)
初期の78回転音源から晩年の録音までを時系列に追える編集盤は、様式の変化や成長を一気に把握するのに最適です。解説の充実したリマスター盤を選べば、史料的な価値も高くなります。
各盤(またはセッション)を聴くときの注目ポイント
音色の違い:Bechetはクラリネットとソプラノ・サックスの両方で録音しています。クラリネットはより“ニューオーリンズ的”な響き、ソプラノは太く人の声に近い表現が魅力です。曲ごとにどちらを使っているか注目すると面白い。
ビブラートとフレージング:Bechetの特徴は豊かなビブラートと旋律の“歌わせ方”。同じ曲の別テイクを聴き比べると、表現の差がはっきりわかります。
対話(コール&レスポンス):小編成のセッションでは、ギターやピアノ、コルネット(トランペット)との掛け合いが見どころ。誰とどんな反応をしているかを追うと、演奏の構造が掴めます。
録音時期を意識する:1920〜30年代は演奏様式も録音環境も異なります。時代ごとの音作りや編成の違いを踏まえると、Bechetの表現が時代とどう共振しているかが見えてきます。
入手のヒント(編集盤の選び方)
なるべく解説の充実した国内外のリイシューを選ぶと、セッション背景や演奏メンバーの情報が得られて理解が深まります。
「Complete」「The Essential」「Anthology」といった冠の付く編集盤は、初めての人が全体像を把握するには便利。ただし、トラックの出典(オリジナル盤の年・セッション)が明示されているものを選ぶと良いです。
名曲(例:Petite Fleur)は多くのコンピに収録されますが、元のフルセッションや別テイクも聴くとBechetの演奏の幅がよりよく分かります。
代表曲・キートラック(まずはここから)
Petite Fleur — フランス期を代表する歌心あふれる一曲。メロディの美しさとBechetらしい表現が凝縮されています。
(初期のホット・ジャズの代表曲群) — 1920年代の小編成での即興ソロを味わえるトラック群。ニューオーリンズ直系のスイング感と鋭いソロが光ります。
ライブ録音の名演 — スタジオ録音とは異なる即興の切迫感、バンドとの呼吸が楽しめます。代表曲の別テイクや長尺のソロが入っていることが多いです。
最後に — Bechetを“繰り返し”聴く価値
Bechetの音楽は「一度で分かる」タイプのものではなく、同じフレーズの中にも繰り返し聴くことで新しい発見がある演奏が多いです。録音年代や編成を変えて同じタイトルを聴き比べると、彼の表現の多様性と一貫性(個性の強さ)を実感できます。まずは代表曲と時代の異なる編集盤を1~2枚手に入れて、そこから興味のある時期を深堀りしていくスタイルがおすすめです。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
エバープレイは、ジャズの名演や選りすぐりのレコードを紹介するコンテンツを提供しています。本コラムのようなアーティスト別ガイドやおすすめ盤の解説を通じて、音楽との出会いをサポートします。
参考文献
投稿者プロフィール
最新の投稿
音楽2025.11.23ジミー・リード(Jimmy Reed)— ブルースの名歌と影響を徹底解説、代表曲と聴き方ガイド
音楽2025.11.23Johnnie Taylorを聴く理由と名盤ガイド:ゴスペル起源の泥臭いソウルからサザンソウルとクロスオーバー時代まで
音楽2025.11.23Johnnie Taylorの軌跡—ゴスペル起源の南部ソウルからDisco Ladyまでのクロスオーバー史
音楽2025.11.23Little Junior Parker(ジュニア・パーカー)のレコード聴き方ガイド—Mystery Train から Next Time You See Me まで、初心者〜中級者向け厳選盤と収集ポイント

