セゴビアのおすすめレコード完全ガイド|聴きどころと録音史で読むギター名手の名盤解説
はじめに
アンドレス・セゴビア(Andrés Segovia)は20世紀を代表するクラシック・ギターの巨匠であり、彼の録音はギター音楽の標準を築きました。本コラムでは、セゴビアのおすすめレコード(LP/リイシュー含む)を選び、その聴きどころや録音ごとの特徴、レパートリー面での位置づけを深掘りして解説します。初心者が「どれを聴けばよいか」を迷わないよう、入門盤からコアな愛好家向けの盤まで網羅して紹介します。
セゴビアの音楽的特徴(聴きどころの整理)
音色の多彩さ:右手のニュアンス(爪と指の使い分け)で、ピアノ的な色彩や歌うようなレガートを実現します。録音を通じてその音作りの違いを聴き分けるのが楽しい点です。
編曲・トランスクリプションの妙:セゴビアはバッハやピアノ曲のギター編曲を普及させた立役者。原曲の構造を保ちながらギター的表現に落とし込む手腕が光ります。
近現代作品の普及者:ヴィラ=ロボス、ポンセ、ロドリーゴらの作品を紹介・委嘱し、ギターのレパートリー拡大に貢献しました。
録音史的価値:1920〜30年代の78回転録音、モノラル期、ステレオ期と録音技術の変遷をその演奏で追体験できます。演奏スタイルや録音の空気感を比較するのも醍醐味です。
おすすめレコード(ジャンル別・聴きどころと推奨盤)
1) バッハ作品集(セゴビアのバッハ)
おすすめ理由:セゴビアはバッハのリュート曲や鍵盤曲のトランスクリプションを通じて、ギターでのバッハ表現の基準を作りました。BWV 996(リュート組曲風)やBWV 998(前奏曲・フーガ)などは必聴です。
聴きどころ:対位法の明瞭さ、左手のライン処理、アーティキュレーションの違い。録音ごとにテンポ感や残響の使い方が異なるため、複数盤を聴き比べる価値があります。
推奨盤(入門):「Segovia Plays Bach」的なコンピレーション(主要録音を集めたリイシュー)。大手レーベルのリマスター盤を探すと聴きやすいです。
2) ヴィラ=ロボス:プレリュード/エチュード集
おすすめ理由:ヴィラ=ロボスはセゴビアと深いつながりがあり、ギター作品(5つのプレリュードや12のエチュード)はセゴビアのレパートリーの重要な柱です。ブラジル的な色彩とモダニズムが魅力。
聴きどころ:リズム感、ハーモニーの新鮮さ、民族的色彩の表現。セゴビアの自然なフレージングでヴィラ=ロボスの風景が立ち上がります。
推奨盤:ヴィラ=ロボス作品をまとめたセゴビアのアルバム、またはアンソロジー収録盤(リマスター盤を推奨)。
3) スペイン古典・ロマン派(タレガ、アルベニス、グラナドス)集
おすすめ理由:スペイン系レパートリーはセゴビアの「顔」を作った分野。特にタレガの名曲(Recuerdos de la Alhambra、Capricho Árabe)やアルベニスのピアノ曲のギター編曲(Asturias など)は定番です。
聴きどころ:歌心、情緒表現、スペイン的リズムと色彩感。セゴビアの演奏はナラティブ(物語性)が強く、各曲の背景を想像しやすいのが特徴です。
推奨盤:スペイン曲を集めたセゴビアのリサイタル盤や、代表曲を網羅したコンピレーション盤。
4) フェルナンド・ソル(Sor)作品集
おすすめ理由:ロマン派前夜のギター作品を代表するソルのソナタや変奏曲は、技術と音楽性の両面でセゴビアが大切にしていたレパートリーです。古典的様式の洗練を学べます。
聴きどころ:古典様式の均整、主題展開の明晰さ、表現の品位。セゴビアはソルの作品をギターの「教育的」かつ「音楽的」側面で普及させました。
推奨盤:ソル作品を収めたセゴビアの録音集やアンソロジー。
5) 近現代作品・委嘱作品集(ロドリーゴ、ポンセ、トローバら)
おすすめ理由:セゴビアは20世紀の作曲家に多数の作品を委嘱/奨励しました。ロドリーゴやポンセの小品は、ギターの近代的表現を知るうえで重要です。
聴きどころ:民族性の現代化、和声の拡張、個々の作曲家の語法がギター上でどのように鳴るか。セゴビアの解釈は作品受容に大きな影響を与えました。
推奨盤:ロドリーゴ/ポンセ作品を含むリサイタル盤や、セゴビアを中心とした現代作品集。
6) ライブ・リサイタル録音(歴史的ライヴ)
おすすめ理由:スタジオ録音とは異なる即興的な表現、聴衆とのインタラクション、そして演奏のエネルギーを味わえます。セゴビアの「人前での表現」は読み物的な魅力があります。
聴きどころ:拍手やMC、テンポの自由度、フレーズの伸び。特に戦前〜戦後にかけてのライヴ録音は「時代の空気」を伝えてくれます。
推奨盤:歴史的コンサート収録のリイシュー(大手レーベルやアーカイブシリーズで復刻されていることが多い)。
7) 初期録音(78回転やモノラル期)のコレクション
おすすめ理由:セゴビアの初期録音は録音技術の制約がある一方、演奏スタイルの原点を知る手がかりになります。音色やテンポ感の違いが興味深く、コレクター心をくすぐります。
聴きどころ:演奏上の選曲、フレージングの原型、当時の音響と録音技法が残す「質感」。歴史的価値が高いです。
推奨盤:78回転音源を集めたボックスセットやアーカイブ盤。
8) 入門に最適なアンソロジー/ベスト盤
おすすめ理由:まずセゴビアという名手の全体像を掴みたいなら、代表曲をコンパイルしたベスト盤やアンソロジーが便利です。幅広いレパートリーを短時間で把握できます。
聴きどころ:各時期の代表演奏が一枚にまとまっているため、録音史的比較の出発点として最適。
推奨盤:大手レーベルが出版している「The Art of Andrés Segovia」や「Segovia: The Great Guitarists」的な編集盤(リマスター盤を推奨)。
各盤を楽しむための聴き方(ポイント)
複数録音を比較する:同じ曲でも録音年代(戦前・戦後・ステレオ期)でテンポや音色が変わります。バッハやタレガなどで比較試聴すると違いが明確になります。
楽曲の歴史背景を調べる:セゴビアがなぜその曲を選んだか、誰が委嘱したかを知ると演奏の意図が見えてきます。
歌心に注目:ギターならではの“声”の作り方(ビブラート、レガート)に耳を澄ますと、セゴビアの解釈の深さをより実感できます。
演奏技法より“表現”を見る:技巧は当然ですが、セゴビアの価値は音楽的な語り口にあります。フレージングや呼吸感に注目すると新しい発見があります。
収集・購入の目安(何を基準に選ぶか)
リマスターの有無:モノラルや初期録音はリマスター盤の方が聞きやすい場合が多いので、信頼できるリイシューを優先すると良いです。
曲目の網羅性:単一作曲家に焦点を当てたいか、セゴビアの全体像を掴みたいかで選択が変わります。アンソロジーは入門、単独アルバムは深堀り向け。
音源のオリジナル年代:歴史的音源を重視するか、音質重視で近年のリマスターを選ぶかを明確にしましょう。
まとめ
セゴビアのレコードは「ギターの教科書」であると同時に、20世紀の演奏史を追う貴重な資料です。まずはバッハ集やスペイン系のリサイタル盤、ヴィラ=ロボスやソルなど作曲家別の録音を押さえ、その後で歴史的録音やライヴ、アンソロジーへと手を広げるのが自然な導線です。リイシュー選びでは音質と曲目のバランスを見て、複数盤の比較を楽しんでください。
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参考文献
- アンドレス・セゴビア - Wikipedia(日本語)
- Andrés Segovia - Wikipedia(英語)
- Andrés Segovia | AllMusic(ディスコグラフィーと解説)
- Andrés Segovia - Discogs(詳細な録音一覧)
- Andrés Segovia | Naxos(バイオグラフィー)


