デイヴ・ホランド徹底解説:キャリア別おすすめアルバムと聴き方ガイド
はじめに
デイヴ・ホランド(Dave Holland)はジャズ史における最大級のベーシストかつバンドリーダーの一人です。1960年代末にマイルス・デイヴィスのグループで注目を浴び、その後リーダー作や様々な編成での活動を通じてモダン・ジャズの重要な流れを作り上げてきました。本稿では「聴いておきたい」おすすめレコードを、キャリアの流れとともに深掘りして解説します。各アルバムの音楽的特徴、編成、代表曲、聴きどころを中心に紹介しますので、リスニングの参考にしてください。
キャリア概観(要点)
- マイルス・デイヴィス期:1968–69頃にマイルスのバンドに参加。エレクトリック化が進む過渡期の重要作品群に関わり、モードとフリーを横断するアプローチを身につけました。
- 初期リーダー作(1970s):アヴァンギャルド〜フリー寄りの小編成で独自の作曲と即興の探求を行い、先鋭的な盟友たちと先端的な録音を残しました。
- 中期〜後期(1980s〜2000s):トリオ〜クァルテット〜クインテット、さらにはビッグバンドまで幅広い編成で活動。メロディと構成の緻密さ、リズムの変化に富んだ作品を多数発表しました。
おすすめレコード(深掘り解説)
In a Silent Way — Miles Davis(デイヴ・ホランド参加作)
なぜ聴くか:ホランドを語るうえで最初に触れておくべき作品。エレクトリック・ジャズ史におけるマイルスの重要作で、ホランドはベースで空間・グルーヴを支えつつ柔軟なアンサンブルの一員として存在感を示します。
特徴:アンビエント的な空間作り、繊細なモード進行。ホランドのベースは単なる低音補強ではなく、曲の進行と色彩を形作る役割を担っています。
聴きどころ:ミニマルながら緊張感のあるイントロ群、ベースがリズムとハーモニーを横断する瞬間。バックグラウンドでの音色の扱いにも注意を。
Conference of the Birds — Dave Holland(リーダー作)
なぜ聴くか:ホランドの初期を代表する名盤で、アヴァン・ジャズと構築的即興が融合した重要作です。アンソニー・ブラクストン、サム・リヴァースら先鋭的な面々との共演で、実験性と緊密なインタープレイが光ります。
特徴:自由度の高い即興と強いアンサンブル感の同居。ベースは旋律的・リズム的両面で中核を担い、曲ごとに異なる表情を見せます。
代表的な曲/パート:曲全体を通しての対話的インプロヴィゼーション。ソロのフォルムよりも集団即興のダイナミクスに注目すると味わいが深まります。
Points of View — Dave Holland(クァルテット)
なぜ聴くか:ホランドがメロディとハーモニーのバランスを極めた中期以降の代表作の一つ。比類ない作曲力とグループの密度が特徴で、聴きやすさと奥行きを同時に持ちます。
特徴:緻密に組み立てられたアレンジ、ブルースやモードの要素を取り入れた現代的ジャズ。ベースはしばしば楽曲の推進力とテーマ提示の両方を担います。
聴きどころ:テーマの展開、各メンバーのソロから再び集合する瞬間の完成度。リズム・セクションとメロディ楽器の対話に注意。
What Goes Around — Dave Holland Big Band
なぜ聴くか:ホランドがビッグバンド編成で見せた作曲/編曲センスの粋。小編成とは異なるスケールでのアンサンブル構築とダイナミクス管理を楽しめます。
特徴:複雑なリズムと緻密なホーン・アレンジ、ベースが全体の輪郭を形作る役割を持つ。モダンでかつ力強いビッグバンド音楽。
聴きどころ:楽曲ごとの色彩感、ブラスの厚みとリズム群の緻密な絡み。ベースがテーマやリズムを橋渡しする箇所に注目。
Dream of the Elders / Skyward — 小編成リーダー作(おすすめのひとつ)
なぜ聴くか:ホランドの作曲センスと小編成での洗練された即興の良いバランスを示す作品群。叙情性とインタープレイの高度さが魅力です。
特徴:温かみのあるメロディと複雑なハーモニー、透明感あるサウンド。聴きやすさと奥行きの両立がなされています。
聴きどころ:リズムの変化とメロディの揺らぎ、ベースのフレージングが楽曲全体を牽引する様子。
聴き方のヒント(作品ごとに深堀するために)
- 初めて聴くなら「Conference of the Birds」を通しで一聴。その後「In a Silent Way」などマイルス期の音像に戻ると、ホランドの音楽観の変遷がよく見えます。
- クインテットやビッグバンド作は編曲の妙を味わうとより面白い。個々のソロを追うだけでなく、セクション間の応答・呼吸に注目してください。
- ホランドの作品は「テーマ→展開→再集合」のフォルムを多用します。冒頭のテーマ提示とラストのまとめ方を聴き比べると作曲者としての意図が掴みやすいです。
- リズムの細かな変化(ポリリズム、非直線的なアクセント)に耳を傾けると、ベースが果たす構造的役割の重要性が実感できます。
まとめ(どのアルバムから聴くべきか)
入門的に聴くなら「In a Silent Way」でマイルス期の空気感を掴み、「Conference of the Birds」でホランドのリーダー像(実験性)を体感。その後「Points of View」やビッグバンド作で彼の作曲・編曲の幅広さを味わう流れが自然でおすすめです。ホランドはジャンル横断的で、聴き手の求める「即興」「構築」「グルーヴ」のどれにも応えてくれます。
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参考文献
- Dave Holland — Wikipedia
- In a Silent Way — Miles Davis(Wikipedia)
- Bitches Brew — Miles Davis(Wikipedia)
- Conference of the Birds — Wikipedia
- ECM Records(公式サイト) — Dave Holland 関連リリースや解説の参照に
- Dave Holland — AllMusic


