Fundo de Quintalのパゴージとサンバ史:裏庭サンバから生まれたリオの伝説的グループ

Fundo de Quintal — プロフィールと概説

Fundo de Quintal(フンド・ジ・キンタウ)は、ブラジル・リオデジャネイロのサンバ/パゴージ(pagode)シーンを象徴するグループの一つです。1970年代後半、リオのコミュニティや娯楽クラブ、特に「Cacique de Ramos」の裏庭的な集まり(fundo de quintal=“裏庭”)から誕生し、サンバの伝統を継承しつつ新しい演奏フォーマットと音色で若い世代に強い影響を与えました。

結成の背景と文脈

1970年代末のリオでは、サンバの伝統的要素がコミュニティで受け継がれ、夜ごと小規模な集いで生演奏が行われていました。Fundo de Quintalは、そうした“裏庭サンバ”の実践から自然発生的に結成され、スタジオ録音や大きな舞台に出る以前からローカルなパーティーやサンバ・ブロッコ(blk)で評判を作っていきました。

音楽的特徴と革新点

  • 新しいアンサンブル編成:従来のサンバに比べ、Fundo de Quintalはカヴァキーニョ(小型ギター)、バンジョ(ブラジル風のバンジョ/カヴァキーニョの役割を兼ねる奏法)、タンタン(低音のパーカッション)、手で叩くレパイク(hand-repique)などを組み合わせ、より密度の高いリズム隊とメロディックな即興を実現しました。これが後に「パゴージ」と呼ばれるスタイルの礎になりました。

  • リズムの柔軟性とグルーヴ:彼らの演奏はサンバの伝統的な循環ビートを保ちながら、合いの手や掛け合い(レスポンス)を多用してライブ感を重視します。即興のコーラスや掛け声(cavacoやpandeiroによる)が楽曲に躍動感を与えます。

  • 歌詞の親密さと共同体性:歌詞は日常、友情、恋愛、コミュニティの誇り、時に社会的テーマを扱い、聴衆が一緒に歌える親しみやすさがあります。

主要メンバーとその役割(概観)

Fundo de Quintalは結成以来メンバーの入れ替わりを繰り返しながら活動してきました。その中からソロで成功したメンバーも多数おり、特にアルミール・ギネット(Almir Guineto)やアルリンド・クルース(Arlindo Cruz)などはソロ作や作曲家としても広く知られています。グループは個々の個性を尊重しつつ、合奏での一体感を大事にするのが特徴です。

代表曲・名盤(聴きどころの提案)

Fundo de Quintalの魅力を理解するためには、初期の録音とライブ感のある作品を聴くのが有効です。以下は入門として聴く価値のあるポイントです。

  • デビュー期の録音:グループの初期録音からは、パゴージ誕生期の生々しいエネルギーや新しい編成の効果を感じ取れます。レコードやCDの初期作は、その史的価値と当時のサウンドを味わうには最適です。
  • Beth Carvalhoなどによる楽曲提供・カバー曲:地元の著名アーティストが彼らの楽曲を取り上げたことで知名度が拡大しました。そういったカバー音源も合わせて聴くと、楽曲の普遍性やアレンジの違いがわかります。
  • ライブ録音・ベスト盤:Fundo de Quintalの真髄はライブにあるため、ライブアルバムやベスト盤は演奏のダイナミクスを掴むのに向いています。

ライブ体験の魅力

Fundo de Quintalの演奏は、客席との距離が非常に近く、参加型の空気が支配します。観客は手拍子や掛け声で演奏に加わり、ソロやコール&レスポンスで一体感が生まれます。演奏時間は長めで、曲と曲のあいだに即興トークや短いジャムが挟まれることも多く、観客は「その場で作られる音楽」を体感できます。

文化的・歴史的な意義

  • パゴージの確立:Fundo de Quintalは「パゴージ」という呼称とスタイルを一般化させたグループの一つで、80年代以降のブラジル都市部におけるサンバの再解釈に大きく貢献しました。
  • コミュニティ文化の可視化:裏庭で行われる小さなサンバの集いを都市全体へ伝播させたことで、ローカルな文化が国民的・国際的な注目を浴びるきっかけとなりました。
  • 後進ミュージシャンへの影響:数多くの若手パゴージ奏者・歌手が彼らの編成や演奏手法を踏襲・発展させ、今日のサンバ/パゴージ・シーンはFundo de Quintalの影響の上に成り立っている部分が多くあります。

聴き方・楽しみ方のコツ

  • 歌詞の内容に注意して聴く:親しみやすい言葉でコミュニティや日常を描いていることが多いので、歌詞を訳して意味を追うと親近感が増します。
  • リズムのパート分解を試す:カヴァキーニョ、バンジョ、パンドエイロ、タンタンなど各楽器の役割を意識するとアンサンブルの妙がわかります。
  • ライブ映像を観る:スタジオ録音よりも、ライブでの客との掛け合いや即興のテンションが分かりやすいです。

現代への影響と継承

Fundo de Quintalのアイデアや音色は、現在のブラジル音楽にも色濃く残っています。現代のパゴージやサンバ・グループは、彼らが築いた「小さな共同体から生まれる音楽」という価値観を受け継ぎながら、新しいテクノロジーや都市文化と融合させています。また、過去の名曲やメンバーのソロ作品を通じて若い世代が学ぶことで、伝統は継続していきます。

聴くべき理由(まとめ)

  • サンバの“人間味”と即興性を最もストレートに味わえる。
  • パゴージというジャンルの成立過程を知るうえでの実証的資料である。
  • コミュニティ文化と音楽の結び付きが現代にも示す示唆に富む。

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参考文献