Berry Gordyが築いたモータウンの仕組みと名曲たち—育成・ブランド戦略まで徹底解剖

Berry Gordy — モータウンを生んだ仕掛け人としての位置づけ

Berry Gordy(ベリー・ゴーディー)は、単なるソングライターやプロデューサーを越えて、20世紀のポピュラー音楽の仕組みそのものを作り上げた人物です。1959年にTamla(翌年Motown設立)を創業して以降、楽曲制作体制(ハウスライター、ハウスバンド)、アーティスト育成、ブランド化、ラジオ/テレビ戦略を一体化させることで“モータウン・サウンド”を世界に浸透させました。本コラムでは、Gordyの影響が色濃く残る「おすすめレコード」を選び、その背景、Gordy側の関与、そして聴きどころを深掘りして解説します。

推薦レコード(選抜)

1. Barrett Strong — "Money (That's What I Want)"(シングル、1959)

なぜ重要か:Gordyが作詞/作曲に関わった初期のヒット。Motownの前身となる活動期に、商業的成功の手応えを掴んだ1曲であり、同レーベルのエンジンが動き出すきっかけとなった。

  • Gordyは共作者としてクレジットされ、以降の楽曲ビジネスのノウハウ形成に直結。
  • ソウル/R&Bの直球の魅力、シンプルだが強烈なフックを体感できる。
  • 聴きどころ:コール&レスポンス、グルーヴの芯、シンプルなコード進行に乗るヴォーカル表現。

2. Jackie Wilson — "Lonely Teardrops"(シングル、1958)

なぜ重要か:Gordyがソングライターとして名を上げた代表作のひとつ。Motown前夜に位置する楽曲だが、Gordyのメロディメイクとポップ/R&B感覚が既に結実している。

  • Gordyがソングライティングで商業的成功を掴む過程を知るための必聴曲。
  • 聴きどころ:ドラマティックなフレージング、ポップスとR&Bの境界を滑るアレンジ。

3. The Supremes — Where Did Our Love Go / The Supremes A' Go-Go(シングル/アルバム、1964–65)

なぜ重要か:モータウンを代表する女性グループの大ヒットで、Gordyが築いたA&Rとプロモーションの成功例。Gordyはチームを統括し、ヒットメイカー(Holland–Dozier–Hollandなど)を育てた。

  • モータウン・サウンドがポップ市場を制していく様子を象徴する作品群。
  • 聴きどころ:洗練されたコーラスワーク、緻密なリズムアレンジ、スタイリングとビジュアル戦略の一体感。

4. The Temptations — Cloud Nine(1968)

なぜ重要か:60年代中盤のモータウンが音楽的に変化・拡張していく過程を示す作品。Gordyは従来のヒット方程式に変化を許容し、プロデューサー(Norman Whitfield等)に新しい実験の余地を与えた。

  • サイケデリック・ソウルへの転換点。商業性と芸術性の両立を模索した記録。
  • 聴きどころ:エフェクトを多用したサウンドスケープ、群像的なヴォーカル配分、社会的メッセージの挿入。

5. Marvin Gaye — What's Going On(アルバム、1971)

なぜ重要か:Gordyが最初はリリースに慎重だった逸話が有名なアルバム。Marvin Gayeのセルフ・プロデュース作品で、モータウンがラジオ向けの“ヒット”から、表現性の高いアルバム作品へと舵を切る過程を象徴する。

  • 社会問題、個人的苦悩を取り扱ったコンセプトアルバム。Gordyが最終的にリリースを許可したことは、レーベルの懐の深さを示す。
  • 聴きどころ:流れるような曲間、レイヤーされたアレンジ、メッセージ性の強い歌詞。

6. The Jackson 5 — ABC / I Want You Back(シングル/アルバム、1969–70)

なぜ重要か:モータウンの新しいスター発掘とブランディングの成功例。Gordyは若いグループの才能をプロデュース陣と結びつけ、国民的な人気を確立させた。

  • 少年性を活かしたプロモーション戦略、テレビ出演など“スター化”のモデルケース。
  • 聴きどころ:完璧に設計されたファンクネスとポップなメロディ、キャッチーなコーラス。

7. Smokey Robinson & The Miracles — The Tracks of My Tears(シングル、1965)

なぜ重要か:Gordyが育てた作家兼アーティストのひとり、Smokey Robinsonの代表曲。モータウンのメロディメイキングと感情表現の精度が光る一曲。

  • モータウン・ソングライティングの美学、細やかなリリカルワークを学べる。
  • 聴きどころ:繊細なリリックとコーラスの重なり、ポップスとしての完成度。

8. Stevie Wonder — Innervisions / Songs in the Key of Life(1973, 1976)

なぜ重要か:Stevie Wonderがより大きな創作自由を得て生み出した傑作群。Gordyはタレントとの契約・交渉や、ある程度の裁量を与えることで、アーティスト側の実験を可能にした点で貢献している。

  • アーティスト主導の長尺アルバムが商業的にも成功し得ることを示した例。
  • 聴きどころ:多様なジャンルの統合、サウンドデザイン、個人的かつ社会的テーマの融合。

9. コンピレーション — Hitsville U.S.A. / Motown: The Complete Singles(ボックスセット)

なぜ重要か:Gordyの遺産を網羅的に理解するには年代順のコンピレーションが便利。A面のヒットだけでなく、B面やプロダクションの変遷を俯瞰できる。

  • モータウンの歴史、作家/プロデューサー陣の変化、音づくりの推移を学ぶうえで有効。
  • 聴きどころ:時代ごとのプロダクション傾向、ソングライティング・チームの特徴。

各レコードを深く聴くための視点(Gordyの観点から)

単に「好きな曲を選ぶ」以上に、以下の視点で聴くとGordyの関与と影響がより鮮明になります。

  • 制作体制を見る:クレジット(ソングライター、プロデューサー、Wrecking Crew的ハウスバンド)を追い、Gordyがどの点で介入または許容したかを想像する。
  • ブランディングと映像戦略:ジャケット、歌手の衣装、テレビ出演歴など、楽曲の「売り方」も作品の一部として観察する。
  • 時代背景を読む:社会的メッセージやリズムの変化(ゴスペル→R&B→サイケデリック・ソウル→ファンク)に注目すると、Gordyが時代に応じて方針を変えた意味が見えてくる。
  • 作家・編曲チームの移り変わり:Holland–Dozier–Holland、Smokey Robinson、Norman Whitfield、Stevie Wonderなど、重要人物とGordyの関係性を辿る。

聴く順番のおすすめ(入門→深掘り)

  • 入門:The Supremesの初期ヒット、Jackson 5の代表曲(ポップで入口が広い)
  • 中級:Barrett StrongやSmokey Robinsonで作曲の基礎を感じる
  • 上級:What's Going OnやInnervisionsのようなコンセプト/アルバム作品でモータウンの成熟を味わう
  • 網羅:Hitsvilleやコンピレーションで時代の流れを確認する

まとめ — Berry Gordyの“力”とは何か

Berry Gordyの真価は、一人のクリエイターとしての才能だけでなく、チームと仕組みを設計し、商業性と芸術性を両立させた点にあります。今回挙げたレコード群は、Gordyの多面的な影響(ソングライティング、A&R、プロダクション方針、プロモーション戦略)がどのように音楽として結実したかを知るための良い手がかりです。単体の名曲を聴くだけでなく、クレジットやリリース時の文脈を併せて聴くと、より深くその時代と人物像が見えてきます。

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参考文献