Art Farmerの歌心とフリューゲルホルンを紐解くLP名盤ガイド:おすすめジャズ盤厳選
Art Farmer — イントロダクション
Art Farmer(1928–1999)は、ミュートやフリューゲルホルンを巧みに使い、柔らかく叙情的なフレージングで知られるジャズ・トランペッター/フリューゲルホルニストです。ハードバップ期に頭角を現し、Benny Golson と結成したジャズテット(The Jazztet)での活動を含め、長年にわたり多彩なメンバーと共演しながら独自の美学を築きました。本コラムでは、LP(レコード)で聴く際におすすめしたい代表作をピックアップし、それぞれの魅力と聴きどころを深掘りして紹介します。
Art Farmer の演奏の特徴(簡潔に)
音色:柔らかく丸みのある音。特にフリューゲルホルンでの演奏は温かみがあり、メロディを歌うような表現が特徴。
フレージング:無駄がなくエレガント。モチーフを丁寧に展開し、呼吸の取り方や間(ま)を効果的に使う。
選曲感覚:ハードバップ然としたリズム感を持ちながら、しばしばラジカルすぎない「歌心」を重視する選曲をする。
おすすめレコード(名盤ピックアップ)
下記は時期や編成の異なるおすすめLPです。各盤の「なぜ聴くべきか」「代表曲」を併せて解説します。
"Meet the Jazztet" — The Jazztet (Art Farmer & Benny Golson)
なぜ聴くか:Art Farmer と Benny Golson のコンビネーションが結実した代表作。アンサンブルの緻密さとソロの詩情が同居しており、ジャズテットという小編成の長所が生かされています。
聴きどころ:Benny Golson 作の「Killer Joe」「Whisper Not」など、テーマの強さとソロ展開のバランスが絶妙。ホーン・ハーモニーやブラスのアレンジにも注目。
"Big City Sounds" — The Jazztet
なぜ聴くか:都会的で洗練されたアレンジと、メンバー各自の個性が際立つ作品。Jazztet期の演奏スタイルを知るのに最適です。
聴きどころ:メロディ・アレンジの美しさ、バンド内での対話(トランペットとテナーなど)の掛け合いを楽しんでください。
"Farmer's Market"(初期リーダー作群)
なぜ聴くか:Art Farmer の初期(1950s)のプレイが色濃く残る一群の録音群は、ハードバップ期のエネルギーと彼のメロディー感覚を堪能できます。LPで残っているオリジナル・テイクは音の勢いや空気感が魅力です。
聴きどころ:ブルージーな側面とバップ的技巧のバランス。若き日のアイディアがフレッシュに聴こえます。
"Modern Art"(ソロ/小編成作)
なぜ聴くか:より洗練された編成で、Art Farmer の「歌う」側面が際立つアルバム。ピアノやギターとの対話が深く、フリューゲルホルンの柔らかさをじっくり味わえます。
聴きどころ:ソロのフレーズ選択、テンポ感の揺らぎ、音と音の余白(間)を楽しむこと。
ヨーロッパ期のリーダー作(1970s–1980s)
なぜ聴くか:Art Farmer は60年代後半以降ヨーロッパに長く拠点を置き、地元のミュージシャンとも多く演奏・録音しました。成熟した音楽性と穏やかな表現が特長で、LPのサウンドは温度感があります。
聴きどころ:枯淡の境地ともいえる音楽表現。曲の選び方や演奏の深みを楽しめます。
コラボレーション盤(例:Jim Hall 等との共演)
なぜ聴くか:ギタリストやピアニストとのデュオや小編成での共演は、音色の繊細な相互作用を聴くのに最適。特にJim Hall のような伴奏者とは相性が良く、会話するような演奏が魅力です。
聴きどころ:伴奏楽器との「間」の取り方、レスポンスの速さ、ハーモニーのささやかな変化。
代表曲(押さえておきたいタイトルトラック)
Killer Joe(Benny Golson) — Jazztet の定番。テーマのカッコよさとグルーヴが際立つ。
Whisper Not(Benny Golson) — ミディアム~バラード系でArt の歌心がよく出る。
(スタンダード系)Autumn Leaves、My Funny Valentine など — Art の解釈で味わうと新鮮。
LPで聴く際の楽しみ方(音楽的ポイント)
1曲1曲を「演劇」のように聴く:テーマ提示→ソロ→テーマ回帰の構造を意識すると、演奏の物語性が見えてきます。
ホーンのアンサンブルに注目:Jazztet 期などはハーモニーの設計が巧み。複数管の掛け合いを追ってみてください。
フリューゲルホルンの音色変化:ミュートや楽器の違いで色合いが変わるのも楽しみの一つ。
ソロの「省略」を読む:Art は音数を抑えることが多いので、あえて出さない音にも意味があります。
入手と盤の選び方(簡単に)
オリジナル・プレスが入手できれば音の厚みやダイナミクスが魅力ですが、リイシュー盤でもマスターを丁寧に扱ったものは充分に楽しめます。
ライナーノーツやクレジットを確認すると、共演者や録音年代が分かり、聴きどころが増えます。
まとめ
Art Farmer の魅力は「歌うような音楽性」と「無駄のない美しいフレージング」にあります。Jazztet 時代のエッジの立ったアンサンブルから、フリューゲルホルンで聴かせる成熟したバラードまで、LPで通して聴くと彼の演奏の連続性と変化がよく分かります。本稿で挙げた数枚を入り口に、自分だけの“お気に入り盤”を見つけてください。
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