Nat Adderleyの歌心と温かな音色が彩るハードバップ名コルネット奏者—Work Songを中心に紐解くジャズ伝説
Nat Adderleyとは
Nat Adderley(ナット・アダーリー、1931年3月25日–2000年1月2日)は、アメリカのジャズ・コルネット奏者/作曲家。ジャズ・サックスの巨匠Julian “Cannonball” Adderleyの実弟としても知られ、兄弟で結成したCannonball Adderley Quintetの中で重要な存在となりました。ハードバップやソウルジャズの文脈で数多くの名演を残し、特に彼の代表作「Work Song」はジャズのスタンダードとなっています。
演奏スタイルと音楽的特徴
Nat Adderleyの音楽的魅力は、単に技巧に秀でているだけでなく、「歌うような」フレージングと温かい音色、そして身近に感じられるメロディ作りにあります。以下に主な特徴を挙げます。
- コルネットの選択と音色:トランペットよりも丸みのあるコルネットを主に用い、柔らかく豊かな倍音を持つ音で歌心を表現します。音の温度感が高く、ブルースやゴスペル的な要素が自然に滲み出ます。
- メロディ重視の即興:スケールやフレーズの装飾よりも「メロディライン」を重視する即興が多く、聴き手に伝わりやすい“主題の発展”を得意とします。
- グルーヴ感とリズムの推進力:ハードバップ/ソウルジャズの土台となるブルージーなリズムを意識し、曲のドライブ感やダンサブルな側面を引き出します。
- アンサンブル志向:兄キャノンボールのサックスと自然に掛け合う形で、対位的なソロやハーモニーでバンド全体の色彩を豊かにします。リズム・セクションとの呼吸も非常に良いです。
- 作曲センス:短く覚えやすいモチーフ、繰り返しの強化、コール&レスポンスの構築などポピュラー性の高い楽曲設計を行い、ジャズと大衆性の橋渡しをしました。
代表曲・名盤(おすすめ)
- 「Work Song」
Adderley自身の代表作にして不朽のスタンダード。ブルースに根ざしたメロディとリズミックなフレーズが特徴で、多くのアーティストにカバーされています。Natの作曲家としての才覚がよく表れた一曲です。
- 「Jive Samba」
ラテン的なリズム感を取り入れたナンバーで、楽曲の中に明快なフックがあり、ライブでの盛り上がりにもよく使われました。
- The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco(Cannonball名義の名盤)
1960年代初頭のライブ作で、Cannonball Quintetの人気が爆発した代表的アルバム。Natのコルネットもバンド・サウンドの重要な要素として際立っています。聴くことで当時の熱気やコンボの相互作用がよくわかります。
- Work Song(Nat Adderleyリーダー盤)
タイトル曲を含むNatの名盤。彼の作曲性とリーダーシップを堪能できる一枚で、ソウルフルな味わいが濃く出ています。
- Mercy, Mercy, Mercy(Cannonball Sextetでのヒット)
Joe Zawinul作のヒット曲ですが、Adderley兄弟が演奏したこの路線は、ソウルジャズの魅力を広く伝え、Natの柔らかな表現も味わえます。
聴きどころ(聞くときのポイント)
- トーンの温かさ:コルネットの倍音や唇の震え、息づかいに注目するとNatらしさがよく伝わります。
- メロディの“歌い回し”:即興でも旋律が失われないところ、テーマの再解釈の仕方を追うと演奏の構築感が見えます。
- 兄弟の掛け合い:Cannonballとの対話的ソロやユニゾン部分を聴くと、アンサンブルとしての完成度が実感できます。
- グルーヴと間(ま):リズム隊との間合い、アクセントの置き方でダンス感や聴衆とのコミュニケーションが生まれます。
影響と評価
Natは兄弟コンビとしてだけでなく、ジャズ作曲家/リーダーとしても高く評価されてきました。彼の書いたテーマはヴォーカルや他楽器編成にも向く普遍性を持ち、ハードバップ以降のソウルジャズ、さらにはポピュラー音楽寄りのリスナーにも受け入れられる橋渡し役となりました。多くの後進奏者が彼のメロディ感覚や温かな音色を手本にしています。
人となり・コラボレーション
音楽家としては控えめで人柄は温厚、バンド内では“心地よい支柱”のような存在でした。CannonballをはじめJoe Zawinul、Sam Jones、Louis Hayesなど当時の名手たちと切磋琢磨しながら、ライブでの即時性を重視した演奏で人気を博しました。晩年も演奏活動や後進の指導を続け、ジャズ界に長く貢献しました。
魅力の総括
Nat Adderleyの最大の魅力は「耳に残るメロディ」と「人の胸を打つ歌心」です。技巧に走ることなくメロディとリズムで直球に訴える姿勢は、ジャズ初心者から玄人まで幅広く惹きつけます。また、兄弟のアンサンブルやバンドにおける「色づけ」の巧みさは、コルネットという楽器の魅力を改めて提示してくれます。ナットの録音を通じて、ジャズが持つエモーショナルな深みと日常性の両方を味わってください。
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