モーリス・ジャールの映画音楽をLPで聴く:アラビアのロレンスからインドへの道までのおすすめサウンドトラック7選
Maurice Jarre(モーリス・ジャール)とは:簡潔なイントロダクション
モーリス・ジャール(1924–2009)はフランス出身の映画音楽作曲家で、壮大なオーケストレーションと民族的な色彩を織り交ぜたスコアで知られます。アカデミー賞最優秀作曲賞を受賞した代表作に「アラビアのロレンス」(1962)、「ドクター・ジバゴ」(1965)、「A Passage to India(インドへの道)」(1984)があり、映画の叙情性を音楽で雄大に表現する手腕が高く評価されました。本コラムでは、レコード(LP)で聴くにふさわしいおすすめアルバムを深掘りし、各盤の魅力や聴きどころ、選び方の指針を解説します。
おすすめレコード(総覧)
以下はジャンルや時代を跨いで、モーリス・ジャールの作風を俯瞰できるおすすめ7選です。それぞれの作品について、映画的文脈、音楽的特徴、レコードとしての選び方(どの版・収録に注目すべきか)を解説します。
1. Lawrence of Arabia(アラビアのロレンス) — 1962
なぜ聴くべきか:ジャールの名を世界に知らしめた代表作。広大な砂漠と主人公の孤高さを反映する、開放感と哀愁を併せ持つメインテーマは映画史的にも名高い。
- 音楽的特徴:オーケストラの壮大さ、モチーフの反復による叙事性、中東的色彩の導入(しかし過剰な民族模倣ではなく映画ドラマに特化した表現)。
- 聴きどころ:メイン・テーマのドライヴ感、クライマックスにかけてのダイナミクスの変化、細かな管弦楽のアーティキュレーション。
- レコード選びのヒント:オリジナル盤(60年代LP)は当時の音場やカッティングが楽しめますが、音質重視なら近年のリマスター/再発盤(公式リマスターや映画音楽専門レーベルの再発)がおすすめ。盤によって曲順・編集(映画版/アルバム版)が異なるため、完全収録や拡張版を探す場合は盤のクレジットを確認してください。
2. Doctor Zhivago(ドクター・ジバゴ) — 1965
なぜ聴くべきか:映画を象徴する「ラーラのテーマ(Lara's Theme)」はポピュラーにも拡散した不朽のメロディ。ロマンティックで切ない旋律美が際立ちます。
- 音楽的特徴:ロマンティックな旋律線、弦楽のレガート、雪景色や追憶を想起させる色彩感。
- 聴きどころ:ラーラのテーマの各バリエーション、弦と管の絡み、情緒表現の緻密さ。
- レコード選びのヒント:オリジナルのサウンドトラックLPや、後年の拡張版/リマスターは収録曲や音質に差があります。収録時間の制約からアルバム版は映画の完全再現でないことが多いので、スコアの全貌を楽しみたい場合は拡張CDやデジタルのコンプリート版情報もチェックしてください。
3. A Passage to India(インドへの道) — 1984
なぜ聴くべきか:ジャールが再びアカデミー賞を受賞した作品。西洋オーケストラとインド的な音色を結びつけ、文化的緊張感と精神性を描きます。
- 音楽的特徴:オーケストラの叙情性に、インド風のモチーフや管楽器・打楽器的な色彩が時折差し込まれる。映画の人間ドラマを音楽で丁寧に追う作り。
- 聴きどころ:テーマの成熟した展開、異文化感の音響的表現、サウンドデザインの繊細さ。
- レコード選びのヒント:80年代の録音なので比較的ダイナミックレンジは広く、オリジナルLPでも現代リマスターでも楽しめます。サントラの流通量が限られる場合があるため、信頼できる再発盤や公式再録を探すと良いでしょう。
4. The Year of Living Dangerously(危険な年) — 1982
なぜ聴くべきか:ピーター・ウィアー監督とのコラボレーション作。東南アジアの空気感と抒情が交差するスコアで、ジャールの感情表現の幅がよく出ています。
- 音楽的特徴:メロディの抒情性、情緒を補強するオーケストラレーション、地域色のさりげない導入。
- 聴きどころ:主題の反復によるドラマの高まり、静かな場面での音響的余白。
- レコード選びのヒント:映画音楽ファン向けに再発が行われていることがあるため、トラックリストや収録時間(映画版とアルバム版の差)を確認してください。
5. Witness(ウィットネス) — 1985
なぜ聴くべきか:都市と田舎、暴力と静謐という対比を音楽で描いた作品。モーリス・ジャールの70〜80年代以降の成熟がうかがえます。
- 音楽的特徴:現代的な和声感、場面に応じた抑制の効いたアレンジ、ラテン〜スラヴ風の色彩が時折現れる点。
- 聴きどころ:緊迫感のある場面音楽と、静かな情緒パートとのコントラスト。
- レコード選びのヒント:80年代中盤の録音で音質は良好。オリジナルスコアに興味があるなら拡張版の有無をチェックすると良いでしょう。
6. The Message(メッセージ) — 1976
なぜ聴くべきか:中東を舞台にした映画のため、民族的なモチーフと大編成オーケストラの融合が試みられています。ジャールの異文化表現へのアプローチが興味深い一枚。
- 音楽的特徴:中東的モチーフを映画的に調理したサウンド、祭礼的・叙事的なパートの併存。
- 聴きどころ:民族風フレーズの扱い方、オーケストラの重層的編成。
- レコード選びのヒント:映画のテーマ性上、オリジナル盤や信頼できる再発で音色のテクスチャーを確認するのがおすすめ。
7. Lion of the Desert(砂漠のライオン) — 1981
なぜ聴くべきか:歴史的・叙事的作品にふさわしいスコアで、中東的・北アフリカ的色彩を映画的に描写。壮麗さと悲劇性が同居するスコアです。
- 音楽的特徴:英雄叙事詩的なテーマ、民俗楽器風のフレーズ、広がりのあるオーケストレーション。
- 聴きどころ:テーマの雄渾さ、戦闘や追走シーンでのオーケストラ運用。
- レコード選びのヒント:映画盤は入手難易度が変動します。音質重視のリマスター盤や公式再発があればそれを優先すると安心です。
モーリス・ジャールの“聴き方”とコレクション方針
モーリス・ジャールのスコアは「映画と結びついた叙情性」が命です。以下の点を参考にレコード選びをすると良いでしょう。
- 映画版 vs アルバム版:当時のサントラLPは映画の流れに合わせて編集されることが多く、完全版を求めるなら拡張CDやスコア全集の情報を確認する。
- オリジナル・リリースの魅力:初期のカッティングやパッケージ(ライナーノーツ、写真、クレジット)はコレクター価値が高い。ただし音質面では現代のリマスターが優ることもある。
- 再発・限定盤:映画音楽専門レーベル(Silva Screen、La-La Land、Intrada 等)による再発や限定盤は、拡張音源や未発表トラックを収録している場合があり、スコアの全容を知るのに有益。
- クレジット確認の習慣:指揮者、オーケストラ、録音日などの情報は音楽的解釈に直結します。可能であれば盤のクレジットを確認して選ぶと聴き方が深まります。
聴き比べの楽しみ方(レコードならでは)
同一スコアでも初出LPとリマスター/拡張版では編集やミックスが違うことがあります。以下のポイントで聴き比べを楽しんでください。
- テーマの楽器配置やバランス:オリジナルは当時のミックス感、再発はより近代的なバランスになりがち。
- 曲順の違いによる印象変化:アルバム版の編集でドラマの流れが変わることがあるため、映画本編の場面と照らし合わせると面白い発見がある。
- 未発表トラックや拡張スコア:補完音源を聴くことで作曲意図やモチーフの変遷が見えてくる。
購入・探索の実践アドバイス(簡潔)
- まずは代表作(Lawrence of Arabia、Doctor Zhivago、A Passage to India)を押さえる。
- 入手難の盤は信頼できる専門店やレーベルの再発を狙う。ディスクユニオン、Record Store、専門オンラインショップでの検索が有効。
- 盤情報(収録時間、曲順、マスターの種類、リリース年)を確認して、自分が求める「映画の雰囲気」か「音質」のどちらを優先するか決める。
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参考文献
- Maurice Jarre — Wikipedia
- Maurice Jarre — AllMusic(ディスコグラフィー/レビュー)
- Maurice Jarre — Discogs(リリース一覧・詳細)
- Maurice Jarre — IMDb(フィルモグラフィ)


