ケヴィン・ソンダーソンの名作と聴き方:Inner City・KMS・デトロイト・テクノのコレクターガイド
序文 — ケヴィン・ソンダーソンとは
ケヴィン・ソンダーソン(Kevin Saunderson)はデトロイト・テクノのパイオニアの一人で、Juan Atkins、Derrick May と並ぶ「Belleville Three」の一角を成す存在です。シーンの中で最もダンスフロアとポップ・センスを巧みに結びつけた人物の一人であり、特にボーカル主体のプロジェクト「Inner City」での成功により、テクノをクラブからグローバルなチャート領域へと押し上げました。本稿では彼の代表作・注目のレコードを深掘りし、それぞれの聞きどころやコレクターとしての選び方を解説します。
おすすめレコード(厳選)
Inner City — Big Fun(アルバム)
なぜ聴くべきか:Inner City 名義のデビュー作で、タイトル曲「Big Fun」や「Good Life」など、テクノとハウスを親しみやすいポップ形式に昇華した楽曲群が並びます。ボーカルのParis Greyのソウルフルな歌唱と、ケヴィンのダンスフロア志向のプロダクションが両立しており、"クラブで踊れるポップ・テクノ" の典型です。
聞きどころ:メロディックなシンセのフック、反復するリズムとベースライン、ボーカルとリズムの配置。アルバム全体を通してのグルーヴの作り方に注目してください。
買うなら:オリジナルのLPはコレクターズアイテムですが、再発盤や公式リマスターも音質・入手性の面で優れています。DJ用途なら当時の12インチのオリジナル・ミックスを探すと、よりダンスフロア寄りの長尺バージョンが手に入ります。
Inner City — シングル「Big Fun」「Good Life」12インチ(オリジナル・シングル群)
なぜ聴くべきか:アルバム収録曲でもありますが、オリジナルの12インチ・リリースはダンスフロア向けにアレンジされたロングミックスやダブが収録されており、曲の核となる要素が研ぎ澄まされています。クラブ史的にも影響力が大きいシングルです。
聞きどころ:オリジナル・12インチではイントロ/アウトロのDJ向け構成、エクステンドされたブレイク、あるいはインスト/ダブの使い方が楽しめます。音の抜けやキックの押し出し方に注目してください。
買うなら:オリジナル盤はヴィンテージ市場で高値になることもあります。状態を重視するなら良好なオリジナル、音質と手軽さを優先するなら公式再発盤や高品質なデジタル配信での確認をおすすめします。
KMS Records(ケヴィンが主導したレーベル)関連の12インチやコンピレーション
なぜ聴くべきか:KMSはケヴィンが率いたレーベルで、彼自身の楽曲はもちろん、同時代のデトロイト〜シカゴ周辺のダンス・ミュージックの流れを知るうえで重要な作品群をリリースしました。個別アーティストの名曲や、レーベル・コンピを通して当時のムードを掴めます。
聞きどころ:KMS特有のハウス/テクノの交差点にあるサウンド、サブベースやシンセの使い方、リミックス文化の痕跡など。ケヴィンのプロダクション・スタンスがレーベル全体にどう反映されているかを聴き比べてみてください。
買うなら:レーベル・コンピや関連アーティストの12インチを掘ると、ケヴィン本人の手が加わったリミックス/プロダクションを発見できます。オリジナル盤は珍しいものもあるため、ディグってみる価値あり。
リミックスやコラボレーション音源(選りすぐりの12インチやコンピ収録曲)
なぜ聴くべきか:ケヴィンは他アーティストのリミックスや共同制作を数多く手がけており、そのなかにはクラブを変えたものや独自のアプローチが光る作品が多いです。単独名義よりも実験的/実践的な面が出ることが多く、プロダクション技術を見るには格好の素材です。
聞きどころ:原曲との差分(ビートの再構築、ベースラインの変更、シンセの差し替えなど)や、ケヴィン流の"楽曲をダンスフロア向けに翻訳する"手法に注目してください。
買うなら:特定のリミックス(12インチ)を狙うコレクターも多く、オリジナルのプロモ盤や限定盤が存在することも。リミックス名義やクレジットを確認してから購入すると良いでしょう。
ベスト/コンピレーション盤(Inner City / Kevin Saunderson関連の編集盤)
なぜ聴くべきか:初めて彼の音楽に触れる人は、ベストや編集盤で代表曲を一気に聴けるのが有益です。年代を跨いだ音の変遷や、ヒット曲の様々なバージョンを比較することで、ケヴィンの音楽的軌跡を俯瞰できます。
聞きどころ:収録曲の編纂がどこに重きを置いているか(オリジナル盤中心か、リミックス中心か)を見て、自分の目的に合った編集盤を選んでください。
音楽的特徴とプロダクションの掘り下げ
ケヴィンの作品を深掘りすると、次のような共通項が見えてきます。
- ダンスフロア志向の構造:曲の構成やミックスは、クラブでの流れを意識した作り。イントロ/ブレイク/ビルドの組み立て方が的確で、DJミックスに馴染みやすい。
- ボーカルと機械音の共存:Paris Grey のような歌モノを配して感情的なフックを作りつつ、シンセやリズムマシンの反復で機能的なグルーヴを作るバランス感覚。
- シンプルだが効果的なサウンドデザイン:多くのパートが単純なモチーフを繰り返すことで強い中毒性を生み、リズムやベースの微妙な変化で飽きさせない工夫がされている点。
- ジャンル横断性:テクノ/ハウス/ディスコ的要素を横断的に取り入れ、ポップ・チャートでも通用するサウンドを作っています。
コレクター/リスナー向けの具体的な選び方・聴き方のコツ
- まずは代表曲(「Big Fun」「Good Life」など)をオリジナルの長尺12インチで聴いて、曲のダンスフロア設計を把握する。
- アルバムで通して聴くと、彼の楽曲ごとの配置や流れ、プロダクションの違いが見えてくる。編集盤は導入に最適。
- リミックスや12インチのB面には掘り出し物が多い。ダブやインストの配置で新たな発見がある。
- 音質にこだわるなら状態(VG+以上)を重視。公式再発はノイズの少ない入手しやすい選択肢です。
- クレジット(プロデューサー/ミキサー/リミックス担当)を読むと、当時の同僚や影響関係が見えて面白いです。
まとめ — ケヴィンのレコードの楽しみ方
ケヴィン・ソンダーソンのレコードは、単なる"過去の名曲"という枠を超え、ダンス音楽の作法そのものを学べる教材でもあります。代表的なInner Cityの作品群から入って、KMS周辺のシングルやリミックスを掘ることで、デトロイト〜クラブ音楽の豊かな文脈が見えてきます。オリジナル盤の希少性や再発の利便性を天秤にかけつつ、自分の目的(コレクション/DJプレイ/純粋なリスニング)に合わせて選んでください。
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参考文献
- Kevin Saunderson — Wikipedia
- Inner City — Wikipedia
- KMS Records — Wikipedia
- Belleville Three — Wikipedia


