ドラム式洗濯機 完全ガイド:選び方・使い方・お手入れ・長く使うコツ
はじめに — ドラム式洗濯機とは
ドラム式洗濯機は、前面に開く扉と横向き(水平)に回転するドラムを持つ洗濯機の総称です。欧州で広く普及した方式をベースに、日本市場向けに乾燥機能やコンパクト化、省エネ性能を高めたモデルが多数発売されています。縦型(縦回転式)洗濯機と比較して「水の使用量が少ない」「衣類にやさしい」などの特徴があり、近年ではファミリー層を中心に需要が伸びています。
仕組みと基本特性
ドラム式は「たたき洗い」ではなく、ドラム内で衣類を持ち上げて落とす“タンブル(tumble)”動作で汚れを落とします。回転方向・回転速度・停止位置を制御することで、洗浄・脱水・乾燥の各工程を最適化します。乾燥機能を内蔵した「洗濯乾燥一体型」も多く、熱交換器やヒーター、最近ではヒートポンプを採用したものも登場しています。
メリット
- 節水性:同じ洗濯量に対して縦型より水量が少なく済むことが多いです(ただし機種やコースによる)。
- 衣類へのダメージが少ない:タンブル動作は摩擦が少なく、型崩れや傷みを抑えます。デリケート衣類にも適しています。
- 高い脱水性能:回転数が高いモデルが多く、残り水分率(脱水後の含水率)が低くなり、乾燥時間の短縮につながります。
- 乾燥一体型で利便性が高い:洗ってすぐに乾かせる「洗濯→乾燥」一貫動作で家事の時短に寄与します(ただし乾燥性能は機種差あり)。
- 設置性:上部がフラットで上置きの収納や棚を活用できる点をメリットと感じる家庭もあります。
デメリット・注意点
- 価格が高め:本体価格は同容量の縦型より高いことが多いです。
- メンテナンス(カビ対策)が重要:ドア周りやゴムパッキンにカビが発生しやすいため、日常的なケアが必要です。
- 故障時の修理費用:ドラムやベアリング、モーター系統の修理は高額になりやすく、交換が難しい場合もあります。
- 設置条件:扉の開閉スペース、床の強度、給水・排水の配置など、設置前に確認が必要です。搬入経路(階段や廊下幅)も確認しましょう。
- 乾燥に時間がかかる場合:特にヒーター式乾燥の場合、乾燥時間や消費電力量が大きくなることがあります(ヒートポンプ式の方が省エネ)。
水量・電気・乾燥の実際(ポイント解説)
一般的にドラム式は縦型より洗濯に使う水量が少ないため、給湯に係るエネルギー(お湯で洗う場合)を抑えられることがあります。一方、乾燥機能を使うと電力消費が増えるため、乾燥方式によってトータルのエネルギー消費は変わります。
- ヒーター式乾燥:加熱に多くの電力を使うため、ランニングコストは高め。
- ヒートポンプ式乾燥:空気中の熱を移動させて乾燥するため省エネ性が高い。導入価格は高めだが運用コストは低い傾向。
日常の使い方と洗濯のコツ
- 適正量で運転:過積載は洗浄力や脱水効率の低下、故障の原因になります。機種ごとに推奨容量(kg)を守りましょう。
- 洗剤の量と種類:水量が少ないため、洗剤は規定量より多く入れすぎないこと。粉末・液体どちらも使えますが、溶け残りを避けるため適切な溶かし方やコース選択が重要です。
- デリケート衣類はネットを使用:ドラムにより衣類同士の摩擦は少ないものの、突起物やファスナーは衣類やドラムを傷つけることがあります。
- 脱水後の取り出しは迅速に:放置するとシワや臭いの原因になります。乾燥機を使うか、早めに干す習慣をつけましょう。
カビ対策・お手入れ方法(具体的手順)
ドラム式で最も多いトラブルは「カビ(洗濯槽やゴムパッキンの黒ずみ)」です。以下は基本的な対策と定期メンテナンスの例です。
- 毎日の習慣:運転後は扉を少し開けて内部を乾燥させる。ゴムパッキンやドアの内側に付着した水滴は柔らかい布で拭き取る。
- 週1回の簡易ケア:洗剤投入口やフィルターのゴミを取り除き、乾いた布で拭く。
- 月1回の槽内クリーナー使用:市販の「洗濯槽クリーナー」を指定量で使用し、槽洗浄コースを実行する。製品によっては塩素系/酸素系の使い分けがあるため取扱説明書を確認。
- 深刻なカビや臭いの除去:頑固な黒カビは、専用のクリーナーやメンテナンスサービスを利用する。ゴムパッキンの裏側など手の届きにくい場所はプロに依頼する方が確実。
故障・修理で多い項目と対処法
- 排水不良(排水フィルターの詰まり):まずフィルターの掃除。詰まりが無いのに排水できない場合は排水ポンプや配管のチェックが必要です。
- 異音・振動:不均一な衣類の偏り、床の不陸、輸送用ロックが外れていない等が原因の場合があります。設置業者に相談し、アンバランス取りや床補強を検討。
- ドラムベアリングの故障:寿命が来ると異音や回転不良を生じ、修理費が高額になりがち。保証期間や修理費用を事前に確認しておくと安心です。
- ドアロック・制御系:ロック不良や電子制御基板のトラブルは部品交換が必要なことが多い。メーカーサポートへ。
購入時のチェックポイント(失敗しないために)
- 容量(kg):家族構成と洗濯頻度に合わせて選ぶ。目安として、単身〜2人なら6〜8kg、3〜4人家族で8〜10kg以上を検討。
- 乾燥方式:ヒートポンプ式は電気代が抑えられるが価格は高め。衣類の乾き具合やランニングコストを比較。
- 設置スペースと搬入経路:扉の開閉スペース、幅・奥行き・高さ、搬入経路(エレベーターや階段)を事前に採寸。
- 消費電力量・水量の公称値:カタログの年間消費電力量や水使用量をチェックし、実際の使用パターンに近い条件で比較。
- 静音・振動対策:集合住宅や夜間運転が多い場合は静音仕様や振動抑制機能の有無を確認。
- 保証・アフターサービス:延長保証や出張修理の範囲、部品保有年数などを確認しておくと安心です。
長く使うためのライフサイクルと廃棄時の注意
一般的な洗濯機の耐用年数は使用状況にもよりますが約8〜12年と言われます。買い替えの目安は「故障修理費が高額」「異音や水漏れが頻発」「乾燥性能が落ちた」などが挙げられます。廃棄時はリサイクル法(家電リサイクル法)に基づき、適切に処分・リサイクルを行いましょう。
まとめ(選び方の結論)
ドラム式洗濯機は「節水性」「衣類へのやさしさ」「乾燥一体の利便性」といった強みを持ちますが、本体価格やメンテナンス、設置条件など考慮すべき点もあります。家族構成、設置スペース、乾燥の必要性、ランニングコスト(特に乾燥時の電気代)を踏まえ、ヒートポンプ式の採用や容量・騒音レベル・修理体制を比較して選ぶのが失敗しないコツです。購入後は日常の湿気対策と定期清掃を怠らないことで長く清潔に使えます。
参考文献
- ドラム式洗濯機 - Wikipedia(日本語)
- パナソニック:お手入れ・洗濯槽クリーナーの使い方(公式)
- 一般財団法人 省エネルギーセンター(ECCJ) — 省エネに関する情報(公式)
- 日立:洗濯機のお手入れ・お掃除(公式)
- 国民生活センター(消費者向け注意・相談情報)


