ナット・キング・コールをレコードで聴く完全ガイド:代表作と聴きどころを網羅

イントロダクション — ナット・キング・コールという存在

ナット・キング・コール(Nat King Cole、1919–1965)は、ジャズ・ピアニストとしての出発から、豊かな中低音の歌声でポピュラー音楽の世界を変えたアーティストです。トリオでのスウィング感ある演奏、ストリングスを配した叙情的なバラード、ラジオやテレビを通した大衆への影響力──その幅広い表現が、レコードを通して今なお聴き継がれています。本稿では「レコードで楽しむ」視点から、代表的なアルバム/盤を深掘りし、各作品の聴きどころや収録曲、入手時に注目したい点を解説します。

ナット・キング・コールを聴くための観点

  • ヴォーカルの「語りかける」表現:中低域の柔らかさ、フレージングの余白が魅力です。歌詞の情感を細やかに伝える聴き方を意識すると、新たな発見があります。

  • ピアノ/トリオ・サウンド:初期のトリオ作品はピアノのスウィング感とギター・ベースのアンサンブルが核。ジャズとしての純度を楽しめます。

  • アレンジの違い:ゴードン・ジェンキンスやネルソン・リドルらアレンジャーとの共作で、オーケストラ仕立ての壮麗な作品にも多くの傑作があります。

  • 時代背景:1930〜60年代の録音技術やステレオ化の流れも音像に影響します。オリジナル盤とステレオ再録盤では印象が変わることがあるため、聴き比べが面白いです。

おすすめレコード(厳選)

  • After Midnight(“After Midnight”)

    おすすめポイント:トリオ編成のナットが最もジャズらしさを発揮する一枚。ピアノを中心にギターとベースが絡む演奏は、スウィング感と即興の軽やかさが魅力です。セッション・メンバーやゲストを迎えた数曲は、歌うナットとインストの両面を存分に味わわせてくれます。

    聴きどころ:ナットのピアノプレイとボーカルのバランス、リズム感。ジャズ・スタンダードの解釈や、間(ま)の使い方に注目してください。

  • Love Is the Thing

    おすすめポイント:ゴードン・ジェンキンスのリリカルなストリングスがナットの歌声を包む、ロマンティックなアルバム。バラード中心で、甘美かつ洗練されたスタジオ・サウンドが特徴です。デートや夜のリスニングにぴったり。

    聴きどころ:オーケストラのダイナミクスとナットの抑制された歌い回し。フレーズの一つ一つに宿る温度感を楽しんでください。

  • The Nat King Cole Story

    おすすめポイント:キャリアを総覧できるベスト的な企画盤。ただしオリジナルのモノラル録音をステレオで再録したトラックも多く、本作は「再録音による代表曲集」という性格を持ちます。音質と編成の違いを理解した上で聴くと興味深い作品です。

    聴きどころ:代表曲群を、60年代のスタジオ・センスで再構築したサウンド比較。初期シングルの雰囲気を知りたい場合は、オリジナル盤やモノラル盤との聴き比べが有益です。

  • Penthouse Serenade(あるいはピアノ中心の作品)

    おすすめポイント:ピアノを前面に押し出した録音で、ナットのジャズ・ピアニストとしての能力を堪能できます。艶やかなタッチと繊細なデリケートさ、そして時折見せるブルージーな色合いが魅力。

    聴きどころ:タッチの強弱、左手の伴奏パターン、シンコペーションの効かせ方。歌唱より演奏重視で楽しみたい方に。

  • Sings for Two in Love(あるいはバラード集)

    おすすめポイント:小編成や室内楽的なアレンジで、ナットの柔らかな歌声が近くで聴こえるような録音が多い一枚。パーソナルなムードが強く、リスナーと歌い手の距離が近いのが魅力です。

    聴きどころ:息づかい、語尾の処理、テンポ感の取り方。歌のニュアンスがダイレクトに伝わる盤です。

  • クリスマス関連(代表曲:「The Christmas Song」など)

    おすすめポイント:「The Christmas Song(Chestnuts Roasting on an Open Fire)」はナットの代名詞的楽曲で、冬になると必ず聴きたくなる名唱。クリスマス・アルバムやコンピレーションでそのバージョンを聴き比べるのも面白いです。

    聴きどころ:暖かさと包容力のある声が季節感を演出します。アレンジの差(弦の厚み、コーラスの有無)にも注目。

各アルバムの聞きどころをもう少し詳しく

  • トリオ録音(ジャズ寄り)を楽しむコツ

    ピアノのアタック音や弦の余韻に耳を澄ませると、ナットのタッチや即興感がはっきり分かります。歌が入るトラックでは、歌とインストの間の「会話」を追いかけると演奏の構造が見えてきます。

  • オーケストラを伴うバラードの楽しみ方

    ストリングスやホーンのアレンジとナットの歌声がどのように重なり合っているかに注目してください。ときにオーケストラが感情を補強し、ときに控えめに寄り添う—そのバランスが名盤の条件です。

  • 再録/再編成盤に対する理解

    『The Nat King Cole Story』のような再録企画は、オリジナルの味わいをそのまま再現するものではありません。録音時代やスタジオ機材、ステレオ化の意図が異なるため、「別解釈のベスト盤」として楽しむのがおすすめです。

ナット・キング・コールを聴くときのプレイリスト例(初心者〜愛好家向け)

  • 入門:代表曲を押さずに短時間で楽しむなら「Unforgettable」「Mona Lisa」「Route 66」「The Christmas Song」「Nature Boy」を中心に。

  • ジャズ派:トリオ曲や「After Midnight」収録曲を中心に。ピアノとリズム隊のインタープレイを重視。

  • バラード・愛の歌:ゴードン・ジェンキンス編曲の楽曲や「Love Is the Thing」から選曲。夜の静かな時間に。

注意点・購入のヒント(盤選びの観点)

  • オリジナル・モノラル盤と後年のステレオ再録盤では音の雰囲気が大きく異なります。オリジナルの「時代の音」を楽しみたいならモノラル盤、ステレオ的な空間表現を求めるなら再録/ステレオ編集盤が向く場合があります。

  • コンピレーションは選曲の意図が編集者によって異なるため、目的(代表曲をまとめて聴きたい、特定時代の演奏を深掘りしたいなど)を明確にして選びましょう。

  • アレンジャー名(Gordon Jenkins, Nelson Riddle など)や録音年代に注目すると、音作りの違いや歌唱法の変化がよりよく分かります。

代表曲と「ここを聴け!」ポイント

  • Unforgettable:情感のこもったフレーズと語尾の処理。シンプルだが心に残るメロディライン。

  • The Christmas Song:声の温度と語り口。季節感の出し方に天賦のものがあります。

  • Route 66:ナット作の名曲。リズムの推進力と歌の乗り方が気持ちいい一曲。

  • Mona Lisa:情緒的なボーカル表現とアレンジの統合力。映画的な色彩を帯びた歌唱です。

まとめ

ナット・キング・コールの魅力は「歌う人」としての確かな技巧と、「演奏者」としてのジャズ的素養が両立しているところにあります。トリオの即興と、オーケストラに乗る叙情性──これらをレコードで聴き比べると、時代ごとの表現の変遷やレコーディング文化の違いも含めて深く楽しめます。初めて聴く人は代表曲を集めた盤から入り、興味が湧いたらトリオ録音や個別アルバムに進むのが良い流れです。

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参考文献