バッハ BWV120『神よ、人はひそかに汝をほめ』徹底解説:成立・構成・演奏上のポイント
概要 — BWV 120とは何か
J.S.バッハのカンタータ BWV 120(独題:Gott, man lobet dich in der Stille、日本語では「神よ、人はひそかに汝をほめ」などと訳される)は、宗教的性格を持つカンタータの一つで、バッハのライプツィヒ在任期(1723年以降)に成立したと考えられている作品です。作曲年代や成立事情については確定的な史料が少なく、異稿・改作が存在する可能性も指摘されていますが、全体としては祝祭的な編成を持ち、合唱と独唱、管弦楽を用いた構成になっています。
成立背景とテクスト
BWV 120 のテクストは神への賛美や教会礼拝の主題に基づいており、具体的な詩人(リブレット作者)は未詳です。バッハはしばしば既存の詩や典礼文、讃美歌の詩句を取り込みつつ補作・改作する習慣があり、本作もその例に含まれます。成立年代は明確ではありませんが、当時のライプツィヒの典礼・祝祭の要求に応じて作曲・改作されたと考えられ、祝祭的な吹奏楽(トランペットやティンパニ)を伴うことから教会の特別な機会のための演奏が想定されます。
編成(楽器編成)と曲の規模
現存する写本や近年の版に基づくと、BWV 120 は合唱とソリスト(ソプラノ/アルト/テノール/バス)、弦楽合奏、通奏低音(チェロ、ヴィオラ・ダ・ブラッチョ/ヴィオローネ、チェンバロまたはオルガン)、および礼拝や祝祭にふさわしい管楽器(トランペット複数、ティンパニ、オーボエ類が加わる場合あり)を含む華やかな編成であることが多いとされます。こうした豪華な編成は祝祭日や特別な礼拝で使用される傾向にあります。
形式と主要な楽曲構成
バッハのカンタータに共通するように、BWV 120 も複数の小曲(コーラス、レチタティーヴォ、アリア、時にコラール)から構成されます。典型的には以下のような流れが考えられます(版により前後や追加・削除がある点に留意してください)。
- 序曲的な合唱(合唱とオーケストラが主導し、対位法と協奏的な要素を併せ持つ)
- ソロのレチタティーヴォ→アリア(感情の深化と個人的な告白的語り)
- 合唱や二重唱を交えた中間部(共同体的な賛美)
- 終曲:コラールまたは合唱による総括(教会音楽としての終結)
開幕合唱では対位的な書法とホモフォニックな強調が交互に現れ、テキストの重要語句で合唱全体が連携して応答する作りが見られます。アリアでは通常リトルネッロを伴う器楽の反復(協奏風)を用い、独唱者が内的な感情を細やかに表現します。
音楽的特徴と分析の視点
BWV 120 の魅力は、バッハが宗教的主題を扱う際に示す対位法的骨格と感情表現(affekt)とのバランスにあります。以下は聴取時・演奏時に注目すべきポイントです。
- テキストと音楽の対応:重要語句の強調にハーモニーやリズムで応答する箇所を探すと、バッハのテクスト解釈が見えてきます。
- 開幕合唱の構築:序奏的楽節→主題提示→発展→コラール風閉止、という大きな設計を念頭に置くと、細部の対位法的仕掛けが理解しやすくなります。
- リトルネッロと独唱の関係:器楽が繰り返す主題と独唱が織りなす対話は、バッハのカンタータ語法の核心です。
- 祝祭的色彩の扱い:トランペットやティンパニの使用は曲に高揚感を与えますが、バッハは華やかさと内省の対比を巧みに同居させます。
演奏上の注意点(実践的ガイド)
歴史的演奏慣習(HIP)と現代オーケストラ双方で演奏される機会があるため、演奏者・指揮者は次の点を検討するとよいでしょう。
- 編成と音量バランス:トランペットやティンパニを用いる場合、合唱と独唱のバランスを細かく調整する必要があります。小編成での透明な響きか、大編成での壮麗な響きかを演奏コンセプトで決めます。
- ピッチと調律:HIPではしばしばA=415Hzや古典的平均律に基づく調律が用いられます。現代ピッチ(A=440/442)では音色と響きが変わるため注意が必要です。
- テンポ設定:開幕合唱は荘厳さと推進力のバランスが重要です。アリアはテキストの内側にあるフレーズ感を優先し、器楽リトルネッロとの呼吸を揃えます。
- 奏法と音色:弦はガット弦かモダン弦か、木管はモダン奏法か古楽奏法かで表現が大きく変わります。指揮者の音楽観に沿って統一することが望ましいです。
- 合唱人数:近年の研究では「一声部一歌手(OVPP)」説もありますが、レパートリーや演奏会場、聴衆の期待に応じて適切な人数を選びます。
版と校訂・楽譜について
BWV 120 の正確なテクストと楽譜を確認するには信頼できる校訂版やデジタル・アーカイブを参照するのが良いでしょう。新バッハ全集(Neue Bach-Ausgabe)に基づく校訂や、Bach Digital の写本画像・履歴情報は学術的に重要です。現代の演奏用楽譜は校訂者による解釈の違いがあるため、複数の版を比較して演奏上の選択肢を明確にすることを推奨します。
演奏・録音を聴く際のおすすめの聴き方
初めて聴く場合は、次の順序で作品の構成と特徴を掴むと理解が深まります。
- まず通して聴いて大まかな構成を把握する。
- 開幕合唱だけを繰り返し聴き、対位法やモティーフの反復を確認する。
- 独唱アリアでテキストの解釈を追い、リトルネッロの役割に注目する。
- 異なる録音や版を比較し、テンポ、音色、合唱編成の違いがどのように音楽表現に影響するかを比べる。
学術的な位置づけと研究の焦点
BWV 120 に関しての研究は、(1)成立年月と版の系譜の解明、(2)使用された原資料と改作・編曲の有無の特定、(3)テクストの出所と典礼上の位置づけの解明、の三点に関して継続的に行われています。写本比較やオリジナル楽器による再現演奏は、作品理解を深める重要な手段です。
まとめ:BWV 120 を聴く意義
BWV 120 は祝祭的な色彩と内的な祈りの感情を同居させるバッハの手腕を示す作品です。対位法の堅牢さと器楽的な協奏性、テクストに対する緻密な音楽描写を楽しめるため、バッハ研究者のみならず演奏者・聴衆にとっても学びの多いレパートリーといえます。様々な版や録音を比較することで、バッハの多面的な表現世界をより深く味わってください。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery
参考文献
- Bach Digital - Werkregistrierung und Quellen (Bach Digital)
- Bach Cantatas Website(作品解説、コンサート情報、録音一覧)
- IMSLP Petrucci Music Library(スコア/写本へのアクセス)
- Bärenreiter / Neue Bach-Ausgabe(学術版)
投稿者プロフィール
最新の投稿
ビジネス2025.12.29版権料とは何か|種類・算定・契約の実務と税務リスクまで徹底解説
ビジネス2025.12.29使用料(ロイヤリティ)完全ガイド:種類・算定・契約・税務まで実務で使えるポイント
ビジネス2025.12.29事業者が知っておくべき「著作権利用料」の全体像と実務対応法
ビジネス2025.12.29ビジネスで押さえるべき「著作権使用料」の全知識――種類、算定、契約、税務、リスク対策まで

