バッハ『BWV 121 Christum wir sollen loben schon』深掘りコラム:成立・構成・演奏上のポイントとおすすめ盤

概要:BWV 121 とは何か

BWV 121『Christum wir sollen loben schon(われらキリストを讃えまつらん)』は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハが作曲した教会カンタータの一つで、クリスマスの祝日に関連する作品です。本稿では、この作品の成立事情、歌詞(テキスト)と宗教的背景、楽曲構造と音楽的特徴、演奏・楽譜上の注意点、そして代表的な録音や版について、可能な限り一次資料と標準的な研究に基づいて詳述します。

成立と歴史的背景

バッハはライプツィヒで教会音楽の職務を務めていた期間中、多くの祝祭用カンタータを作曲・上演しました。BWV 121 は、クリスマス礼拝のために作られた作品の系列に属しており、典礼の内容や賛美歌(コラール)を基にして編まれた点が特徴です。典礼年度に沿ったテキスト選択や、既存の詩篇・讃美歌を用いる習慣はバッハの教会カンタータに共通する要素であり、本作もその一例です。

テキストとコラールの源流

BWV 121 のタイトルが示す通り、中心となるのは賛美歌(コラール)「Christum wir sollen loben schon」(直訳すると「われらキリストを讃えまつらん」)です。この種のコラール・カンタータでは、詩人(多くは匿名、あるいは当時のライプツィヒの教会詩人)がコラールの節を自由詩に置き換えつつ、終節に原詩の一節を用いる手法が取られることが多く、BWV 121 でもコラールのテクストと説教的・ロジカルな独唱部分が交互に配置されていると考えられます。コラール旋律の起源はルター派の伝統に連なるもので、聴衆に馴染みのあるメロディとテキストを通じて宗教的主題を強調します。

編成(楽器編成・声部)と様式

バッハの教会カンタータに典型的な編成として、独唱(ソプラノ/アルト/テノール/バス)、混声合唱、弦楽器、通奏低音(チェロ、ヴィオローネ、オルガン/チェンバロ)、そして時に木管楽器(フラウト、オーボエ)や金管が加わります。BWV 121 も、このような典型的編成を踏まえつつ、コラール主体の緊密な対位法や、アリアでの器楽的装飾、合唱での和声的充実を特徴としています。

楽曲構成と主要部の分析

  • 序章(合唱/コラール):コラール主題を掲げる合唱で始まり、共同体的な賛美を提示します。ここでは合唱が主題の提示役を担い、対位法的処理や和声進行の妙で聴衆の注意を引きます。
  • 独唱アリア:ソロ声部が器楽伴奏を得て、個人的な信仰告白や感情表現を展開します。器楽伴奏(たとえばヴァイオリンや木管)はアリアの情感や語感に応じて色彩を与えます。
  • レチタティーヴォ(語り):テキストの語義を明瞭に伝える場で、説教的・解説的な役割を果たします。バッハはここでも和声を効果的に用い、語りと伴奏の対話を設計します。
  • 最終コラール:聴衆も含めた総体的な合唱で終結し、旋律の明確な再提示により礼拝的な締めくくりを行います。

これらの区分はカンタータ全般の定型に沿いますが、バッハは各部分で独自の技巧を凝らし、同一のコラール旋律を様々な視点から再解釈します。たとえば、初めの合唱で提示された主題がアリアや独唱の動機として変奏されることもあります。

和声と対位法の特徴

バッハは伝統的な和声進行と高度な対位法を組み合わせて感情と論理を同時に表現します。BWV 121 においても、コラール旋律を基盤に置きながら、対位旋律が和音の色彩を変え、転調や短調の挿入で緊張感を生み出す手法が見られます。特に、コラール節の受け渡し部分では一時的な不協和が説教的なニュアンスを強めるために用いられることが多いです。

演奏上の実践的ポイント

  • テンポ設定:合唱部は礼拝における賛美の性格を反映させるため、過度に速くせず言葉の明瞭さを重視します。アリアは歌手と器楽が対話する場で、歌手の呼吸とフレージングに合わせた柔軟なテンポルバート(rubato)が効果的です。
  • ピッチと楽器選定:バロック実演慣習に基づく低めのピッチ(例えばA=415Hz)や古楽器編成は、現代の楽器に比べて倍音構成や音色が異なるため、宗教的な素朴さや透明感を生み出します。オルガンやチェンバロの通奏低音の扱いも、合唱とのバランスで重要です。
  • 合唱の音色:歴史的には教会合唱団が中心でしたが、現代では混合合唱と小編成アンサンブルのどちらでも成立します。コラールの明瞭な和音を重視するならば清澄で柔らかい音色を、対位法や輝かしさを強調するならば輪郭のはっきりした発声を選ぶとよいでしょう。

楽譜と校訂版

BWV 121 の原典資料や初期写本は各地に分散しており、近代の校訂版(Bärenreiter、Breitkopf & Härtel 等)のいずれかを参照するのが一般的です。音符写本の差異やコラール旋律の配置に注意が必要で、演奏前には信頼できる校訂版と原典写本の対照を行うことを推奨します。公開スコア(IMSLP や Bach Digital のデータベース)も参考にできます。

代表的な録音と聴きどころ

BWV 121 の録音は専門合唱団・演奏団体によるものが複数存在します。古楽器アプローチ(A=415Hz、原典奏法)を取るものは透明感とリズムの躍動を与え、近代管弦楽と混声合唱による演奏は豊かな和声と声の厚みを強調します。聴く際のポイントは次のとおりです。

  • コラール旋律の提示と後続する展開の関連を見る(動機の回帰や変形)。
  • ソロ・アリアでの器楽句と歌唱句の呼応、特に装飾やカデンツァの扱いを聴き取る。
  • 最終コラールがもたらす礼拝的結語の響きをじっくり味わう。

学術的な位置づけと意義

BWV 121 はバッハの宗教音楽創作の中で、コラールを中心に据えた表現の典型例と見なせます。地域の典礼や賛美歌の伝統を背景に、個人的な信仰告白(アリア)と共同体的な讃美(コラール)を対置させるバッハの手法は、彼の神学的・音楽的思索を体現しています。音楽学的には、旋律の変形、和声の配列、対位法の応用が研究対象となります。

まとめ

BWV 121『Christum wir sollen loben schon』は、バッハのカンタータ群におけるコラール中心の作品として、信仰の共同体性と個人の感情表現を巧みに織り合わせています。演奏・聴取の際には、テキストの意味、コラール旋律の由来、そしてバッハが駆使する対位法と和声的色彩に注意を向けることで、より深い理解と感動が得られます。

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参考文献