バスフルート入門:特徴・歴史・奏法・選び方を徹底解説
バスフルートとは
バスフルート(bass flute、バス・フルート)は、フルート属の中でソプラノ(通常のC管)より1オクターブ低く鳴る低音域担当の横笛です。調はCで、楽器の実音は記譜より1オクターブ低く聞こえるため、見た目の譜面は高めに書かれます。オーケストラの標準編成には必ずしも含まれない特殊な楽器ですが、フルートアンサンブル、現代音楽、室内楽、映画音楽などで色彩的に用いられることが多く、柔らかく深い音色が特徴です。
歴史と発展
バスフルートの起源は19世紀から20世紀初頭にかけてのフルート・ファミリー拡張の流れにあります。フルートの多様化(アルトフルート、コントラバスフルートなど)とともに、低音域を補うために開発されました。つくりや奏法の発展は20世紀の管楽器製作技術の向上と連動しており、特に20世紀後半以降、銀や銀メッキ材で精密に作られたモデルが普及しました。現代では日本やアメリカ、ヨーロッパの主要メーカーがバスフルートを製造しています。
構造と製作上の特徴
バスフルートは管長が長く径も大きいため、通常の横笛よりも全体が大きく、重量も増します。演奏しやすくするためにカーブしたヘッドジョイント(カーブドヘッド)やJ字型のヘッドを採用する機種が多く、これにより唇までの距離を短く保てます。キー配列は基本的にC管フルートと同様ですが、低音部の機構や支柱の補強が追加されることがあります。素材は銀(スターリングシルバー)や銀メッキのニッケルシルバー、時に木製(コンサートフルートには珍しい)やプラスチック系合金を用いることもあります。
音域と記譜
一般的なバスフルートの標準的な最低音はC3(コンサートピッチでのC、通常のフルートの最低音C4の1オクターブ下)で、上域は奏者の技量によってC6やそれ以上に到達します。楽譜は実音より1オクターブ高く記譜されることが一般的で、これは可読性と視認性を高めるためです。メーカーやモデルによっては低音にB(半音下)まで伸ばした仕様を持つものもありますが、これは珍しく、オプション扱いであることが多いです。
音響特性と奏法上の注意点
バスフルートは低域での豊かな倍音構成と柔らかい音色が特徴ですが、反面、立ち上がり(アタック)が遅くなりがちで、ピッチ(特に低音域)や音の均一性の管理に注意が必要です。主な奏法上のポイントは次のとおりです。
- ブレスコントロール:大容量の空気を安定して供給するために支持筋(横隔膜や腹筋)の使い方が重要です。速いフレーズでは息の瞬間的なコントロールが必要になります。
- エンブシュア(口の形):低域では少し拡げた口元と柔らかいエッジで共鳴を増やす一方、高域では口径をやや縮める必要があります。
- アーティキュレーション:舌の位置やタング・ポイントを調整し、低音のもたつきを防ぐ。スタッカートや短い音符では息の放出量と舌の短い接触が鍵となります。
- 音程の調整:低音は管の物理特性上、フラットになりやすい傾向があるため、息の速度・角度や管の立ち位置(ヘッドジョイントの微妙な調整)で補正します。温度や湿度の影響も大きいです。
- サポート機構:長時間演奏時の腕や手首、肩の負担を軽減するために、肩掛けストラップや床に置く支え(フルート用スタンドや小型ピン)を使う奏者もいます。
編成とレパートリー
バスフルートは単独のソロ楽器としてのレパートリーは限られるものの、フルートアンサンブル(フルートオーケストラ)では低音域を補う重要な役割を担います。また、現代音楽の作曲家はその独特な色彩を好んで使用することが多く、映画音楽やポピュラー音楽においても特殊効果的に登場します。オーケストラ作品では必須ではないものの、色彩的・効果的パートが要求される場面で用いられることがあります。多くの現代作曲家がバスフルートを含むフルート・ファミリーのための作品を作曲しています。
代表的な製造メーカーと選び方のポイント
主要なフルートメーカー(Yamaha、Muramatsu、Powell、Haynes、Pearl、Miyazawaなど)は、時にバスフルートをラインナップしています。選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- ヘッドジョイントの形状:直管/カーブド(J字)で吹きやすさが変わるため、自分の体格や演奏姿勢に合わせて選びます。
- 素材と仕上げ:銀材は音の豊かさと応答性が良い一方、価格は高め。銀メッキや合金はコストパフォーマンスに優れます。
- 機構の堅牢性:大型のキーや支柱に由来する緩みやズレを防ぐ補強が施されているか確認します。
- 重量と携帯性:長時間演奏する場合の負担、運搬時のケースの堅牢性も重要です。
- 調整やアフターサービス:大抵は専門の調整が必要になるので、修理や調整に対応できる販売店かどうかを確認してください。
メンテナンスと保管
バスフルートは管長が長く、湿気や汚れが内部に溜まりやすいので、演奏後はスワブ(内側を拭く布)で丁寧に水分を拭き取ります。キーまわりの機械部分には定期的なオイル注入や調整が必要です。また、木製ヘッドや木材使用モデルは湿度管理に特に注意してください。大きくて繊細な楽器なので、専用の堅牢なケースで保管し、輸送時の衝撃対策を行うことが肝要です。
教育と習得のコツ
バスフルートを学ぶ際は、まずは基本となるロングトーンで低域の安定した音を出す訓練を重ねることが重要です。通常のフルートのテクニック(スケール、アルペジオ、タンギング)を低域に移行させるには、息の支持力とエンブシュア調整の練習が必要です。指使い自体はC管とほぼ同様ですが、キーの重さや反応の遅さに慣れるために、ゆっくりしたフレーズで練習量を増やすとよいでしょう。
まとめ
バスフルートは深みのある柔らかな音色と独特の響きを持つ魅力的な楽器です。取り扱いや楽器の重さ、低音域の特性に慣れるまで時間はかかりますが、フルート・ファミリーに豊かな低音を加えることでアンサンブル全体の色彩を広げてくれます。購入やレンタルを検討する際は、必ず試奏し、ヘッドジョイント形状や素材、サポートアクセサリの有無を確認してください。
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参考文献
- Wikipedia「バスフルート」
- Encyclopaedia Britannica - Flute
- The International Flute Association(公式サイト)
- Yamaha - フルート(製品情報)
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