コラールとは何か：起源・形式・作曲技法から現代への影響まで徹底解説

2025年12月13日 最終更新日時 : 2025年12月13日 エバープレイ編集部

コラールとは何か

コラールは主にドイツ語圏のキリスト教礼拝で用いられる賛美歌（典礼的な聖歌）を指し、その名はドイツ語のChoralに由来します。広義には単なる宗教歌曲の旋律（コラール・メロディ）を意味し、狭義には合唱や器楽用に編曲された四声体のハーモナイズされた楽曲（いわゆる四声コラール）やオルガンのための前奏曲（コラール前奏曲）などを含みます。コラールは「会衆の歌」としての機能を持ち、テキストの明瞭さ、旋律の親しみやすさ、反復される詩節構造などが特徴です。

歴史的背景と発展

コラールはルネサンス後期からプロテスタント宗教改革（16世紀）と深く結びついて発展しました。マルティン・ルターは典礼言語をラテン語からドイツ語へと移行させ、会衆参加を重視して多くの賛美歌（テキストや旋律の開発）を奨励しました。ルター自身が歌詞や旋律の編作に関わった例もあり、代表的な名称として「Ein feste Burg ist unser Gott（我らが神は堅き砦）」や「Vom Himmel hoch」などが知られます。

16世紀以降、コラール旋律は教会音楽の素材として作曲家に利用され、ヴォーカルの合唱曲、器楽編曲、オルガンの前奏曲、さらには大規模な教会カンタータやミサにおける主題にも取り入れられました。17〜18世紀のドイツ・バロック期には、特にヨハン・ゼバスティアン・バッハがコラールを用いた作品を大量に残し、コラールは西洋音楽における重要なジャンルとなりました。

形式と旋律的特徴

多くのルター派コラールは節（スタンザ）ごとに歌われる叙唱的・ひとまとまりの旋律を持ち、詩節は同じ旋律で反復されることが一般的です。形式上は中世の詩形から受け継がれた「バー形式（AAB）」が多く見られ、このA部分を「ストレン（Stollen）」、B部分を「アプゼザング（Abgesang）」と呼びます。バー形式は中世のミンネザングからルネサンス、宗教改革期の賛歌まで広く用いられました。

旋律の特徴としては、以下の点が挙げられます。

  • 母音に合わせた明瞭なテキスト設定（ほとんどが一音節一音節のシラビックな設定）
  • 音域は会衆が歌いやすいように比較的狭いことが多い
  • モード（教会旋法）に基づく旋律的要素と、後の調（トーナリティ）への整理が混在

コラールのハーモナイゼーションと作曲技法

コラール旋律を四声合唱（通常はソプラノに旋律）でハーモナイズする技法は、バロック期に体系化され、特にバッハの四声コラールは作曲技法と教則の双方向として高く評価されます。バッハは現存する四声コラールを多数残しており、それらは和声進行、声部連結、対位法的処理の学習素材として広く用いられます（一般に「バッハの四声コラール」は約371曲とされます）。

ハーモナイゼーションの基本的なポイントは以下の通りです。

  • 基礎和音の明確化（I–IV–V–I のような機能進行）
  • 声部間の平行五度・八度の回避と、自然な接続を重視した声部の独立性
  • テンションや装飾（経過音、転回、サスペンション）を用いた内声の動き
  • 終止形（完全終止、半終止、フリギア終止など）を用いた句の締め

特にフリギア終止（短調における第六音-第五音の進行を利用した半終止）はバロック系コラールでよく見られる表現です。コラール前奏曲では旋律を引き延ばしたり、複雑な対位法的テクスチャで旋律を装飾したりすることが一般的です。

オルガン作品と主要な例

コラールは器楽、とくにオルガン音楽に深く根付きました。ヨハン・セバスティアン・バッハの代表的なコラール関連作品には以下があります。

  • オルガン用小品集「オルガン小曲集（Orgelbüchlein）」BWV 599–644（計46曲のコラール前奏曲を意図した）
  • 「シューベラー・コラール（Schübler Chorales）」BWV 645–650（カンタータの合唱を編曲したオルガン独奏曲6曲）
  • 「大オルガン前奏曲（Great Eighteen Chorale Preludes）」BWV 651–668（後年のリビジョンを含む主要な前奏曲群）

これらの作品は、コラール旋律を素材にさまざまな対位法的・和声的処理を施した例で、バロックのオルガン音楽における到達点とされています。

代表的なコラールと作曲家

代表的なコラール旋律と関連作曲家の例を挙げます。

  • "Ein feste Burg ist unser Gott"（我らが神は堅き砦）— テキストはルター由来とされ、プロテスタントの代表的賛歌
  • "Wachet auf, ruft uns die Stimme"（目を覚ませ）— フィリップ・ニコライ（Philipp Nicolai, 1599）のメロディをバッハがカンタータ等で取り上げる
  • "Nun komm, der Heiden Heiland" — 既存のラテン典礼旋律（Veni redemptor gentium）をドイツ語に翻案した例

歴史を通じてコラールを扱った作曲家には、ハインリヒ・シュッツ、パッヘルベル、ブクステフーデ、バッハの後にはメンデルスゾーンがバッハの復興に貢献し、19世紀以降の作曲家たちも宗教的・象徴的なコラール風素材を作品に取り入れました。20世紀以降でもマックス・レーガー、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの後継的影響を受けた作曲群が、コラール的な和声進行や合唱写しを利用しています。

聴きどころと分析の視点

コラールを聴く際の分析ポイントは次のとおりです。

  • 旋律とテキストの関係：語句配列やアクセントの合わせ方
  • 和声進行の機能：主要三和音と率直な cadential パターン
  • 声部の独立性：内声に注目すると対位法的手法が見える
  • 編曲の意図：合唱版・器楽版・オルガン前奏曲それぞれの役割の違い

例えば、バッハのコラールでは旋律自体はしばしば簡潔でも、和声と内声の動きに深い神学的・表現的意味を読み取ることができます。宗教的テキストの内容が和声選択やモチーフの処理に反映されることが多く、作曲家の信仰や礼拝観が音楽的に体現されています。

現代への影響と応用

コラールの伝統は単に歴史的な遺産にとどまらず、現代音楽にも影響を与え続けています。宗教音楽だけでなく、合唱曲や器楽作品、映画音楽や国民的歌曲に至るまでコラール的な和声進行や対位法的素材が引用されることがあります。また教育面では、西洋音楽の和声・対位法の入門教材としてコラールハーモナイゼーションが広く用いられています。

実践的なコラール学習のヒント

コラールを学ぶ際の実践的アプローチ：

  • まずは原旋律を歌ってテキストと旋律の関係を体感する
  • シンプルな四声和声付けを行い、声部別の動きを確認する
  • バッハの四声コラールを模写して和声進行や終止法を習得する
  • オルガンや鍵盤でコラール前奏曲を弾き、対位法的な装飾の仕組みを理解する

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献

カテゴリー
クラシック
前の記事
マントコート徹底ガイド：歴史・素材・着こなし・選び方まで（保存版）
2025年12月13日
次の記事
アノラック徹底ガイド：歴史・素材・選び方・コーディネートと手入れ
2025年12月13日