Neumann KH 120徹底解説:プロが語る小型モニターの実力と使いこなし術

Neumann KH 120とは

Neumann(ノイマン)のKH 120は、コンパクトな2ウェイのアクティブ・ニアフィールド・スタジオモニターとして幅広い制作現場で採用されているモデルです。小型ながら設計思想は“モニタリングの基準(reference)”に沿っており、音像の正確さ、位相特性の整合、指向性制御など、スタジオ用途に求められる要件をバランスよく備えています。ホームスタジオやプロのポストプロダクション、放送スタジオなど多様な環境で信頼される理由を、本稿では回路設計、筐体と波面制御、ルーム補正や設置の最適化、実践的なモニタリング方法、そして他機種との比較を交えて詳しく掘り下げます。

設計の要点と音響的アプローチ

KH 120は“フラットで偏りの少ない再生”を目標に設計されています。ドライバー配置やクロスオーバー特性、ツイーターの波面整形(波導=ウェーブガイド)により、オン・アクシス(正面)での平坦さだけでなくオフ・アクシス(角度)での周波数特性の一貫性を重視しています。これにより、リスニングポジションが多少ズレても高域や中域のバランスが大きく崩れにくく、ミックスの「空間情報」やパンニングの判断が安定します。

筐体とドライバー、クロスオーバー

筐体は内部定在波や共振を最小化するために堅牢に設計されており、フロントバッフルや内部仕切り、適切なダンピング材の配置によって低域の不要なピークやローミッドの濁りを抑えます。ツイーターは高域の分散制御を行うための波導を備え、ウーファーとのクロスオーバーは位相整合を考慮した設計で、トランジェントや音像の輪郭が明瞭に維持されます。これらの設計要素が総合的に働くことで、定位が明確でモニターとしての信頼性が高くなっています。

入力・制御系と実用機能

KH 120はプロ用モニターとしてバランス入力(XLR)を備え、ノイズに強く安定した接続が可能です。さらに、実際の現場で使いやすいようにルーム補正系のトリムやハイ/ローのイコライジング(減衰スイッチ)を搭載している点が特徴です。これにより、スピーカーをデスク上に置いた場合や壁際設置時に発生する低域の過補正や高域の反射による強調を簡易に調整できます。こうした物理的な補正は、部屋全体の専用処理(ルームチューニングやDSPルーム補正)を導入する前の初期対応として非常に有効です。

実際の音像と周波数バランス

リスニング上の印象としてKH 120は中域の解像度が高く、ボーカルやピアノ、アコースティック楽器の音像が自然に前に出てくる傾向があります。低域は過剰にブーストされることなく、タイトでコントロールされた輪郭を保つため、ベースやキックの相対的なエネルギーの把握がしやすいです。ただし小型のニアフィールドであるため、非常に低い周波数成分(超低域)はフルサイズの大型モニターやサブウーファーと比べると量感で劣るため、電子音楽や映画音響制作など低域の扱いが重要な用途ではサブウーファー併用が推奨されます。

設置とルーム補正の実践ガイド

KH 120を使う際に音を最適化する基本手順は次の通りです。

  • スピーカーの高さを耳の高さに合わせ、ツイーターが耳の高さに来るよう調整する。
  • 左右とリスニング位置で正三角形(スピーカー間距離=スピーカーと耳の距離)を基本にセッティングする。
  • デスクや壁からの距離による低域のブーストをルーム補正トリムで補う。特にデスク面反射は中高域の定位に影響するため、吸音や拡散の対策を検討する。
  • 可能であればルーム測定(フリーソフト/RTA)を用いて周波数特性や初期反射を確認し、スピーカー位置やトリートメントの効果を客観的に評価する。

測定と耳の使い分け

プロの現場では測定器(測定用マイクとソフト)と耳の併用が基本です。KH 120は比較的フラットな再生を提供しますが、測定によって見える部屋固有の癖(ピーク、ディップ、初期反射の時間差)はしばしば耳だけでは判断しづらいことがあります。測定で問題点を洗い出し、物理トリートメント/スピーカー位置調整/トリムで対処する流れが最も安定した結果を生みます。

他機種との比較(概念的な観点)

KH 120を競合機種と比較すると、概ね次のような特徴が挙げられます。

  • GenelecやAdamなどの同クラス・小型ニアフィールドと比べ、KH 120は中域の自然さと定位の安定性に優れるという評価が多い。
  • ハイエンドの大型2way/3wayと比べると低域の再生限界は劣るが、ニアフィールドでのミックスの判定力は十分に高く、参照用途として信頼できる。
  • 価格対性能比が高く、商用ワークフローでも導入しやすいバランスが取れている。

長所と短所(実務ベース)

  • 長所:高い中域解像度、安定した定位、実用的なルーム補正スイッチ、堅牢な筐体設計。
  • 短所:極端に低い周波数の再生はサブウーファーに頼る必要があること、小型ゆえに音場の広がりや“包み込むような低域”は大型モニターより劣る。

おすすめの周辺機器と組み合わせ

用途に応じて次の機器を組み合わせると有効です。

  • サブウーファー:低域拡張が必要な場合、同社製や信頼できるメーカーのサブを追加してクロスオーバー調整を行う。
  • オーディオインターフェイス:高品質なアナログ出力(バランス出力)を持つものを選ぶことでモニターの性能を引き出せる。
  • ルーム測定用マイクと測定ソフト:客観的なチューニングを行うために必須といえる。

メンテナンスと故障対策

堅牢な設計ですが、長期間使用する際は入力端子の接触、筐体の汚れ、周辺温度や換気に注意してください。高出力で連続使用するケース(放送やライブのモニタリングなど)では、熱的な余裕を持たせた設置や適切な電源供給が重要です。故障時はメーカー正規のサービスに依頼することを推奨します。

どんなユーザーに向いているか

KH 120は次のようなユーザーに特に適しています。

  • ホームスタジオやプロジェクトスタジオで、正確な中域と定位でミックスの判断をしたいエンジニア。
  • 放送やポストプロダクションなど、予測可能で安定したモニタリング環境を必要とする現場。
  • 予算と設置スペースに制約があるが、高品位なリファレンスが欲しいユーザー。

導入前に試聴する際のチェックポイント

試聴時は以下を確認すると導入後の満足度が高まります。

  • 自分の制作する音源(楽曲)を数曲持参して再生し、ボーカルとドラム/ベースのバランスを確かめる。
  • スタジオの環境(机や壁との距離)を実際に想定したセッティングで試聴する。ショールームの広い空間と自分の部屋での印象は異なり得る。
  • 調整スイッチ(ルーム補正)の効果を確認し、実際の設置条件に応じたセッティングを試す。

まとめ:KH 120の位置づけ

Neumann KH 120は、コンパクトながらスタジオモニターとしての基礎性能が高く、正確なモニタリングを求める現場において非常に有用な選択肢です。絶対的な低域量や音場の大きさでは大型機に及ばないものの、ミックスの判断材料として重要な中域の明瞭さ、位相とディテールの表現に優れているため、多くのプロフェッショナルや制作現場で採用されています。導入に際しては部屋の処理やスピーカー位置、必要に応じたサブウーファーの併用を検討することで、その実力を最大限に引き出せます。

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参考文献