Sequential(シーケンシャル)──伝説のシンセサイザーが音楽にもたらした革新と現在

Sequentialとは何か

Sequential(シーケンシャル)は、アナログ/ハイブリッド音源を軸に数多くの革新的シンセサイザーを生み出してきたブランド名であり、その歴史は1970年代の電子楽器黎明期に遡ります。創業者のデイブ・スミス(Dave Smith)は、マイクロプロセッサ制御とアナログ回路を組み合わせることで“パッチのメモリ化”という概念を実現し、音作りと演奏表現の在り方に大きな影響を与えました。現在のSequentialは、この系譜を受け継ぎながら現代的な機能を加えた製品群で注目されています。

歴史と系譜:1970年代からの流れ

Sequential Circuitsは1974年に設立され、1978年に登場したProphet-5は「完全にプログラム可能なアナログ・ポリフォニック・シンセサイザー」として大きな反響を呼びました。これまで手作業で調整していたアナログシンセのパラメータをデジタル制御で保存できるようにした点が革命的で、スタジオやライブでの運用性を飛躍的に向上させました。

その後の変遷では一度ブランドが消滅する時期もありましたが、創業者デイブ・スミスは2000年代にDave Smith Instruments(DSI)を設立し、再び斬新な設計でシーンに戻ってきました。2015年にはSequentialの商標を取り戻し、ブランド名をSequentialに戻して復活。伝統的なアナログ回路とデジタル技術を組み合わせた新世代のシンセを次々に投入しています。

技術革新と設計哲学

Sequentialがもたらした代表的な技術的革新は「マイクロプロセッサによるパッチメモリの実装」です。これによりライブやレコーディングで瞬時に音色を切り替えられるようになり、シンセが演奏表現の中心に据えられる契機となりました。また、アナログの暖かさを保ちつつ安定したチューニングと多機能化を両立させた設計思想も特徴です。

近年のモデルでは、アナログVCO/VCFとデジタルオシレーターやウェーブテーブル、サンプリング機能を組み合わせる「ハイブリッド」アプローチが進み、音色のレンジが劇的に拡張されました。同時にMIDIやCV/Gateなど拡張性の高い接続性を備え、ソフトウェア/ハードウェア双方のワークフローに適合します。

代表的な機種とその特徴

  • Prophet-5(オリジナル):完全プログラム可能な5音ポリフォニック・アナログ。初期の名機として広く知られ、80年代ポップや映画音楽に多大な影響を与えました。
  • Prophetシリーズ(現代版):伝統を受け継ぎつつ、Prophet-6やProphet-12、復刻版Prophet-5などが登場。いずれもアナログの特性を重視した設計で、現代的な機能(エフェクト、モジュレーション、拡張I/O)を備えます。
  • OB-6:トム・オーバーハイム(Tom Oberheim)との協働で開発されたモデル。クラシックなサウンドを現代的な信頼性で再現することを目指しています。
  • ハイブリッド機(例:デジタルオシレーター+アナログフィルター):デジタル領域の多彩な波形・ウェーブテーブルやサンプルをアナログフィルターで成形することで、幅広い音色を実現します。

音楽シーンへの影響

Sequentialの機種は1970〜80年代のポップス、ニューウェーブ、映画音楽などで幅広く使われ、いわゆる「80sサウンド」の形成に寄与しました。多くのアーティストやプロデューサーがProphet系のリードやパッドを用いてシグネチャーとなる音色を作り上げ、以降のシンセデザインや音楽制作の常識に影響を与えています。復刻や現代モデルは、レトロサウンドを求めるクリエイターと最新の表現を求めるミュージシャン双方に受け入れられています。

制作・演奏での運用ポイント

Sequentialの機器を使う際の実践的なポイントを挙げます。

  • パッチメモリを活用してライブでの切り替えを正確に行う。アナログ特性を生かすために微調整をメモしておくとよい。
  • アナログフィルターの挙動(カットオフやレゾナンス)を演奏で変化させることで有機的な表現が得られる。LFOやエンベロープのルーティングを工夫する。
  • ハイブリッド機ではデジタル波形の編集とアナログ成分のバランス調整が鍵。デジタル側で細かく波形キャラクターを作り、アナログ側で温度感や動きを付与する。
  • MIDI/CVの連携を活かしてモジュラー機材やDAWと組み合わせると表現の幅が増す。

コレクターズアイテムとしての価値

オリジナルのProphet-5などはヴィンテージ・シンセとして高い収集価値があります。往年のユニットは経年劣化や部品入手の問題があるため、復刻版や現代の製品で同等のサウンドや操作感を得られる点が支持されています。一方でオリジナル固有の経年変化や回路のクセを評価する愛好家も多く、市場では状態や改修履歴によって価格が大きく変動します。

現代のSequentialと今後の方向性

ブランド復活以降、Sequentialは伝統的サウンドを尊重しつつも現代的な機能を積極的に取り入れています。ハイブリッド設計、拡張されたモジュレーション、スタンダード化された接続性(MIDI、USB、CV/Gate)など、ユーザーのワークフローに合わせた進化が見られます。さらに、ソフトウェアとの連携やファームウェア更新による新機能追加が可能な点も、長期的な価値を高めています。

まとめ:伝統と革新の両立

Sequentialは単に「かつての名器」を復刻するだけでなく、アナログの音像美とデジタル制御の利便性を両立させ、現代の音楽制作に適した道具を提供し続けています。歴史的背景を知ることで、音色の持つ意味や機材選びの視点が深まります。ヴィンテージの質感を求めるのか、現代的な拡張性を重視するのか、用途に合わせた選択が重要です。

エバープレイの中古レコード通販ショップ

エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

エバープレイオンラインショップのバナー

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery

参考文献