ファイナルファンタジーVIIのセトラ(古代種)徹底解説とゲーム化の展望

はじめに:『ファイナルファンタジーVII:セトラ』という表記について

まず重要な確認です。2024年6月時点で「ファイナルファンタジーVII:セトラ(Final Fantasy VII: Cetra)」という正式タイトルのゲームはスクウェア・エニックスから発売・発表されていません。したがって本稿では、「セトラ(Cetra/古代種)」という概念を中心に、シリーズ本編やコンピレーション作品における描かれ方、テーマ的な解釈、ゲーム表現の可能性などを事実に基づいて深掘りし、最後に“もし『~:セトラ』が制作されるとしたら”という明確に仮説であるパートを併記します。

セトラとは何か(定義と起源)

セトラ(英語ではCetra、和訳では「古代種」「セトラ」など)は、『ファイナルファンタジーVII』の世界観に登場する特殊な民族・種族的カテゴリです。セトラは大地(星=Planet)との精神的・霊的な結びつきを持ち、ライフストリーム(Lifestream)と呼ばれる星の生命流と交流できるとされます。シリーズ本編においてセトラは、自然との共生を重視する民族であり、古代文明の痕跡や遺跡、言語・歌(=セトラの歌)と結びつけて語られることが多いです。

『FFVII』本編におけるセトラの役割

  • 主要人物との関係:最も象徴的なのはエアリス(Aerith)で、彼女はセトラの血筋を引く女性として物語に深く関わります。エアリスの能力や最期のシーンは、セトラという存在を物語の宗教的・倫理的テーマと結びつける役割を果たしました。

  • 設定上の機能:セトラは星と会話し、星の意思に沿って癒しや導きを行う存在として描かれます。これによって“自然と技術(特に神羅社によるマコ/魔晄の搾取)”という対立構図が浮かび上がります。

  • プロット上の象徴性:セトラは“古代の知恵”や“失われた調和”の象徴として扱われ、物語の根幹にある「星の死と救済」という大きな命題に関わります。

コンピレーション・オブ・FFVIIや外伝作品での描写

『FFVII』本編以外にも、クリエーション作品群(いわゆる「コンピレーション・オブ・ファイナルファンタジーVII」)やリメイク/外伝でセトラや古代種の描写は補強・拡張されてきました。『クライシスコア』や『アドベントチルドレン』、『CC』系の作品群、それにリメイクシリーズの中でエアリスや古代種、ライフストリームの描写が細部にわたり掘り下げられています。これらは世界設定の補強だけでなく、登場人物の動機や世界観の哲学的側面を補完する役割を果たしています。

テーマ分析:セトラが投げかける問い

  • 自然とテクノロジーの対立:セトラは星の声を聴く存在として、無制限の資源搾取がもたらす弊害を象徴します。神羅カンパニーの“魔晄”利用と対比されることで、環境倫理の問題が浮かび上がります。

  • 宗教・スピリチュアリティ:セトラには宗教的・儀礼的な側面が色濃く、信仰や儀式、祈りといった要素が物語に深みを与えます。ただし、作中は“絶対的な善”として扱うよりも、誤解や利用、政治的道具化の危険性も示しています。

  • アイデンティティと他者性:セトラの“特殊性”は差異化を生み、同時に差別や歴史の抹消といったテーマを喚起します。エアリス個人の物語は、能力や血筋が個人の運命を規定するのかという問いを含んでいます。

ゲーム表現としてのセトラ:これまでとこれから

ゲームデザインの観点から見ると、セトラという概念は物語表現だけでなくゲームプレイにも多様な応用が可能です。例えば:

  • ライフストリームとの直接的なインタラクション:プレイヤーが“星の記憶”にアクセスして過去の断片を探索するアドベンチャー要素。

  • “歌”や“儀式”を用いた環境変化システム:特定の場面でセトラの祈りが環境を変化させるギミック(パズルやフィールド制御)として機能。

  • 価値観の選択を問うストーリーテリング:自然保護と産業発展のどちらを優先するか、複数の派閥間の選択がゲームの結末や世界状態に影響を与える分岐システム。

ファン文化とセトラ像の変遷

エアリスの人気、そして“セトラ”というキーワードは、長年にわたりファン作品や考察の対象になってきました。ファンコミュニティでは、セトラを先住民的・シャーマニックなイメージで再解釈する動きや、ジェノバ(Jenova)や古代文明との関係性をめぐる議論が絶えません。こうした二次創作・考察活動は、公式作品が提示した断片を補完し、多層的な解釈を生み出しています。

もし『ファイナルファンタジーVII:セトラ』が作られたら(仮説)

以下は明確に仮説の領域です。仮に「セトラ」を題材にしたスピンオフや単独作品が制作されるとすれば、ゲームは次のような方向性を持つ可能性があります。

  • 時代設定:古代(現在のFFVII世界の遥か以前)を舞台にするプリクエル的アプローチ、あるいはエアリスの過去やセトラの記憶を辿る現代パートと過去パートを往復する構成。

  • ゲームジャンル:アクションRPGに加え、探索重視のアドベンチャー、選択による物語分岐を重視したシネマティックRPG、あるいは“儀式”や“歌”を使った独自のゲームシステムを持つ作品など。

  • テーマとメカニクスの融合:環境回復をゲーム進行のコアに据え、プレイヤーの選択で環境が再生されるメタファーをゲーム上で体験させる設計。

  • 倫理的ジレンマの導入:セトラの保護を掲げる勢力とセトラの力を利用して世界を変えようとする勢力の間で揺れる物語性。プレイヤーの選択が“保存”か“積極的介入”かを問うことになるでしょう。

注意点とリスク:文化的表象の取り扱い

セトラという概念は「先住民」「自然信仰」的なイメージと結びつきやすく、扱いを誤るとステレオタイプ化や文化の断片化を招く恐れがあります。仮に独立した作品で深掘りするなら、文化的配慮と多様な視点(制作陣における倫理観・歴史観の共有など)が重要になります。

まとめ:セトラがFFVII世界にもたらすもの

セトラは『ファイナルファンタジーVII』という物語に倫理的・哲学的な深みを与える象徴的要素です。自然との共生、生命の継承、個と共同体の関係、そして技術と環境の均衡といった普遍的なテーマを提示することで、ゲーム体験を物語的に豊かにしています。現時点で「ファイナルファンタジーVII:セトラ」という公式タイトルは存在しませんが、セトラという概念が持つ物語的・ゲーム的ポテンシャルは今後も多くの議論と創作を呼び続けるでしょう。

参考文献