M-Audio BXシリーズ徹底解説:特徴・音質・選び方と実践的チューニング法
イントロダクション — BXシリーズとは何か
M-AudioのBXシリーズは、プロ向けハイエンドではなく、ホームスタジオやプロジェクトスタジオ向けに設計されたアクティブ(パワード)近接モニター(ニアフィールド・スタジオモニター)のシリーズです。コストパフォーマンスに優れ、扱いやすいサイズ感と必要十分な音響特性を備えているため、作曲・編曲・ミキシングのエントリーユーザーから中級エンジニアまで幅広く支持されています。本コラムではBXシリーズの設計思想、音質的な特徴、セットアップとチューニングの実践的手法、競合製品との比較、購入時のチェックポイントまで詳しく深掘りします。
シリーズの基本設計と目的
BXシリーズは「現実的な作業結果を得られること」を第一目的に設計されています。一般的な特長は以下の通りです。
- 2ウェイのアクティブ設計(ツイーター+ウーファー)で、各ドライバーに専用アンプを内蔵している。
- 中低域と高域のバランス重視で、リファレンス的な定位と音像の把握を意識したチューニング。
- 近接モニタリングを前提にした指向性と音場設計により、デスク上や小型ルームで実用的に使える。
- 実用的な入出力(バランスXLR/TRS、アンバランスRCA等)を備え、多様なオーディオインターフェイスと接続できる。
主要モデルと世代
BXシリーズは複数のサイズ(ウーファー径)と世代が存在します。一般的にプロダクションでは5インチ級(BX5 相当)と8インチ級(BX8 相当)が人気で、小型モデルをラインナップに含む場合もあります。サイズによって低域の伸びやダイナミックレンジが変わるため、用途(音楽ジャンルや制作環境)に応じた選択が重要です。
サウンドの特徴
Bxシリーズは「モニターとして使いやすいフラットさ」と「音楽制作での判断を妨げない色付けの少なさ」を目指した音作りがされています。具体的には:
- 中域の明瞭さ:ボーカルやギターなどの重要な周波数帯域の解像度が高く、ミックスの定位や処理(EQ/コンプ)を判断しやすい。
- 高域の扱い:シビランスやハイハットの輪郭が十分に把握できる一方、過度に強調されていないため長時間のモニタリングでも疲れにくい特性。
- 低域の表現:同サイズのスタジオモニターと比べて十分だが、非常に低い周波数(サブベース域)の解像度・エネルギーはサイズ依存。深い低域が必要な場合はサブウーファーの併用を検討すると良い。
入出力とオンボードコントロール
BXシリーズの特徴として、現場で使いやすい入出力と調整機能が挙げられます。ほとんどのモデルがXLRとTRSのバランス入力、RCAのアンバランス入力を持ち、ボリュームやハイ/ローの簡易的なトリム(ルーム補正用のスイッチ)が背面にあります。これらは設置する部屋の特性に応じて高域や低域の過剰さを補正するのに有効です。
設置とルームチューニングの実践的アドバイス
どれだけ良いモニターでも、ルームや設置が不適切だと正しい判断ができません。BXシリーズを使う際の基本的なポイントは次の通りです。
- リスニングポジション:三角形の頂点に頭が来るように、左右のスピーカーと頭で等辺三角形を作る。距離はモニターの指示レンジと部屋のサイズに応じて調整。
- 高さと軸の調整:ツイーターが耳の高さに来るように配置し、多少のトーイン(内向きの角度)を付けることで定位とステレオイメージが安定する。
- バス反射対策:スピーカーと壁の距離(特に背面のポート位置)に注意。低域のブーミーさを避けるために、背面ポートを持つモデルは壁から適切に離す。部屋のコーナーに近づけると低域が増強される。
- 初期反射の制御:ディフューザーや吸音材をファーストリフレクションポイント(側面、天井、デスクトップ上)に配置することで、音像の凝集性と定位感が向上する。
- サブの導入:低域が重要なジャンル(EDM、ヒップホップ等)ならば、サブウーファーを導入してクロスオーバーと位相調整を行う。BXシリーズはサブとの連携でも比較的扱いやすい。
ミキシングでの使い方と限界
BXシリーズはミキシング作業に十分使えるモニターですが、プロのマスタリング機材や高価格帯のモニターと比べると解像度・ダイナミクスの余裕で差が出ます。実務上のポイント:
- 最終チェックは複数の再生環境(ヘッドホン、カーステレオ、スマートフォン等)で行い、BXでの判断だけに依存しない。
- 微細なEQやステレオイメージの最終微調整は、よりリファレンス志向のモニターやアコースティックに優れた環境で行うと精度が上がる。
- ただし、日々の作業(アレンジ、バランス取り、粗いEQ処理)ではBXシリーズの音像とレスポンスは非常に実用的である。
ライバル機との比較(Yamaha HS / KRK / PreSonus 等)
BXシリーズは同価格帯の他ブランドと比較されることが多いです。傾向としては:
- Yamaha HSシリーズ:HSはフラットで癖が少ないことを重視しており、トランジェントの明瞭さや高域の硬さが特徴。BXはやや音楽的でリスニング耐性が高い傾向。
- KRK Rokitシリーズ:Rokitは低域にパンチを持たせたモデルが多く、EDM等の制作で好まれる。BXはよりバランス重視で中域の判断がしやすい。
- PreSonus Erisシリーズ:Erisはクセの少ないモニターでコストパフォーマンスに優れる。BXとErisは好みによる差が大きく、部屋との相性が使い勝手を左右する。
アフターケアと長期使用の注意点
長く使う上での基本的なケア:
- 音量管理:過度な音量での長時間駆動はアンプやドライバーに負担をかける。定期的に休ませること。
- 埃対策:フロントグリルやドライバーに埃が溜まると音の散らかりを招く。柔らかいブラシで清掃する。
- 接続の点検:バランスケーブルを優先的に使い、接触不良がないか定期確認する。電源環境が不安定な場合はサージプロテクタを導入する。
購入ガイド — 何を基準に選ぶべきか
BXシリーズを選ぶ際の優先順位は以下のとおりです。
- 作業スペースのサイズ:小さな部屋なら5インチ級、広めの部屋や低域の確認が必要なら8インチ級を検討。
- 音楽ジャンル:低域が支配的なジャンルか、ボーカル中心のロック/ポップスかで選択が変わる。
- 接続端子の互換性:使っているオーディオインターフェイスやDACとの接続方法を確認する。バランス接続が可能なら推奨。
- 予算と付帯サービス:保証やサポート、実機の視聴が可能かどうかも重要。
実践テクニック — BXで良いミックスを作るために
実作業で役立つ具体的なテクニックを紹介します。
- 基準トラック(リファレンストラック)を用意して、ミックスの基準音量とEQ感覚を合わせる。BXの癖を掴むのに有効。
- 高域の過不足はEQで極端に補正せず、位置やボリュームでまず調整。微調整はシェルビングやパラメトリックEQの少しのブースト/カットで。
- 位相チェック:ステレオ兼用素材や低域の位相が問題になる場面では、ステレオをモノラルに切り替えてチェックする習慣をつける。
よくあるQ&A
Q:BXシリーズだけでマスタリングはできますか?
A:短答すると「部分的には可能」ですが、本格的なマスタリングを行うなら、より高解像度で広帯域なモニターや音響処理されたルームが望ましいです。BXはミックスの仕上げや修正に十分に使えます。
Q:サブウーファーは必要?
A:ジャンルや目的次第です。深いサブベースの有無が作品の重要ポイントなら導入を検討してください。導入時は位相とクロスオーバーの合わせ込みが肝心です。
まとめ
M-AudioのBXシリーズは、コストパフォーマンスと実用性を両立したニアフィールドモニターです。絶対的な“ハイエンド”ではないものの、家庭や小規模スタジオにおいて日常的な制作ワークフローを支える堅実な選択肢となります。導入時には部屋のセッティングやリファレンストラックを活用してBXの特性を理解し、必要に応じてサブウーファーやルームトリートメントで補完することで、より信頼できるモニタリング環境を構築できます。
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