Dorico徹底解説:作曲・編曲・楽譜制作に強い記譜ソフトの全貌と実践的使い方

はじめに — Doricoとは何か

Doricoは、Steinberg社が開発・販売するプロフェッショナル向けの楽譜作成(記譜)ソフトウェアです。かつてSibeliusの開発を主導していた開発者チームの中心人物であるダニエル・スプレッドベリー(Daniel Spreadbury)らが中心となって開発を進め、2016年に初版が公開されて以来、楽譜の自動組版品質やワークフローの革新で注目を集めてきました。DoricoはWindowsとmacOSに対応し、無料版・簡易版・プロ版といったエディションを通じて、趣味の作曲から商用出版レベルまで幅広い用途をカバーします。

開発の背景と設計思想

Doricoの設計思想は「高品質な自動組版」と「音楽制作と印刷の両立」にあります。従来の記譜ソフトでは、細かな手動調整に多くの時間を割かれることがありましたが、Doricoは初期状態でもプロ仕様のレイアウトを生成することを重視しています。また、スコアの論理構造(players、flows、systemsなど)を明確に区別することにより、複雑な編成やコントラバスパートの譜面整理、合唱とオーケストラの混在などにおいても柔軟に対応できるようになっています。

主要な機能概要

  • 高精度な自動組版: 拍子・音価・音符配置・歌詞やディレイの自動配置などが高度に制御され、短時間で美しいスコアを生成できます。
  • モード分割されたワークフロー: Write(記譜)、Engrave(組版)、Play(再生)などのモードにより、入力・調整・再生を分けて作業できます。
  • Flows(フロー)概念: 楽曲を複数の独立したセクション(フロー)として扱えるため、交響曲や歌集のような長大な作品でも柔軟に管理できます。
  • Players/Parts管理: 楽器編成を論理的に扱い、スコアとパート譜を自動生成。パート譜の凝縮(condensing)機能で合奏の見やすさを向上できます(エディションにより機能差があります)。
  • 豊富な入力方法: MIDIキーボード入力、ステップ入力、パネル式やマウスでの入力、テキストからの歌詞入力など複数の入力手段をサポートします。
  • 再生エンジンとVST統合: HALionやVST3規格に対応し、内蔵音源や外部ライブラリ(NotePerformerなど)を用いたリアルな再生が可能です。VST Expression Mapsを用いた表現マッピングにも対応します。

楽譜制作での強み(実務面)

出版物クオリティの楽譜を短時間で作る点が最大の強みです。デフォルトの組版ルールが洗練されているため、初期設定のままでも読みやすい譜面が出力されます。さらにEngraveモードでは、細かな字送り、横幅の調整、音符周りの余白管理、システム間の位置調整など、印刷前の最終仕上げが可能です。複雑なスコア(オーケストラ譜、合唱+オーケストラ、ピアノ連弾+ソリストなど)でも、プレイヤーの割当てや表示方法を柔軟に切り替えられるため、出版物の要件に合わせた出力がしやすい設計です。

再生・演奏表現の実用性

Playモードは単なるMIDI出力に留まらず、表現のためのVelocity、CC、テンポカーブなどをスコアに紐づけて操作できます。NotePerformerのようなサードパーティ音源と組み合わせれば、ほぼそのままのサウンドでデモ・スコアを作成できます。さらにVSTプラグインをホストすることで、シンセや特殊効果を加えたスコア作成も可能です。ただし、最終的なミックスや本格的な音楽制作はDAWで行うのが一般的で、Doricoは楽譜ベースの表現に強みがあります。

他ソフトとの相互運用性

DoricoはMusicXMLやMIDIのインポート/エクスポートをサポートしており、他の記譜ソフトやDAWとのデータ受け渡しが可能です。PDF出力や画像出力にも対応しているため、楽譜の配布や印刷にも便利です。ただし、MusicXMLの仕様差や表現の違いにより、他ソフトからの変換時には細かな手直しが必要になるケースがある点は留意してください。

エディションと価格帯(概要)

Steinbergは用途に合わせたエディションを用意しています。フル機能を搭載するPro版、機能を絞ったElements版、そして一部条件下で利用できる無料のSE版などがあり、導入目的や予算に応じて選べます。教育用の割引やアップデートポリシーも用意されているため、最新情報は公式サイトで確認するのが確実です。

導入・運用の際の注意点

  • 学習曲線: 高機能ゆえに最初は操作がやや複雑に感じられることがあります。公式ドキュメントやチュートリアル、コミュニティの情報を活用することを推奨します。
  • プラグイン/音源の互換性: VSTや外部音源と組み合わせる際は、それぞれのバージョンと互換性を確認してください。
  • バージョン管理: プロジェクトを共有する場合、相手側のDoricoのエディションやバージョンによっては機能差で表示が崩れることがあるため留意が必要です。

実践的な使い方とワークフローの提案

推奨ワークフローの一例は、まずWriteモードでフロー単位で素早く素材を入力し、Playモードで基本的な再生確認を行い、Engraveモードで最終的な見た目を整える手順です。大編成の場合はPlayersの設定を先に固め、パート譜の出力ルール(表示の省略・凹字体・オクターブ記号など)をテンプレートとして保存しておくと効率的です。また、テンポやダイナミクスをPlayモードのAutomationで調整し、必要に応じてDAWへMIDIやオーディオをエクスポートすると制作がスムーズになります。

Doricoを選ぶべき人・向かない人

推奨ユーザー: 楽譜出版を目指す作曲家、編曲家、教育機関、放送や映画音楽のスコア制作を行うプロ。美しい組版と高度なパート管理を求めるユーザーに特に向いています。向かない可能性があるユーザー: 単純なリードシートやコード譜だけを作るユーザーで、かつ低価格・即時操作性を最優先する場合は、より軽量な別ソフトが合うことがあります。

コミュニティと学習リソース

Steinbergの公式マニュアルやフォーラムに加え、有志によるチュートリアル動画、ブログ記事、Q&Aが充実しています。特に公式マニュアルは機能ごとに詳細に記載されているため、疑問点はまず公式ドキュメントを参照するのが確実です。また、NotePerformerやHALionのようなサードパーティ製品の導入事例も多く、サウンド面の改善事例を学べます。

まとめ — Doricoの評価と今後

Doricoは楽譜組版とスコア制作において現在もっとも洗練された選択肢の一つです。高品質な自動組版、柔軟なプレイヤー管理、強力な再生機能を兼ね備えており、プロユースにも耐える設計になっています。導入時には学習コストを見積もり、目的に応じたエディション選択と外部音源の整備を行うと良いでしょう。今後も楽譜制作と音楽制作の連携が深まる中で、Doricoは重要なツールであり続ける可能性が高いと言えます。

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参考文献