細骨材(砂)徹底ガイド:種類・物性・品質管理・コンクリートへの影響と最新動向

細骨材とは — 基本定義と役割

細骨材(さいこつざい、以降「細骨材」)は、コンクリート・モルタル・アスファルト混合物などの混合材料に用いられる骨材のうち、ふるい目(一般には4.75mm、No.4相当)を通過する粒径を持つ粒子群を指します。コンクリートでは粗骨材(砕石など)と組み合わせて骨格を構成し、体積の約30〜40%を占めることが多く、作業性、強度、耐久性、乾燥収縮など多くの性質に影響します。

分類:天然砂、砕砂、再生細骨材など

細骨材は主に供給源や製造方法により分類できます。

  • 天然砂(河川砂・海砂・湖砂): 天然に堆積した砂。粒形や粒度は比較的丸みを帯びるが、含有する粘土・有機物・塩分などの不純物に注意が必要。
  • 砕砂(人工砂・クラッシュドサンド): 岩石を破砕して作る砂。粒形は角張りやや粗いが、粒度を制御しやすく品質の安定化が図れる。近年は河砂代替として普及。
  • 再生細骨材(リサイクル砂): 解体コンクリートや建設発生材を破砕・選別して得られる砂。資源循環の観点から注目されているが、混合物の品質管理が重要。
  • 特殊細骨材: 微細骨材(0.075mm以下の細粒分を多く含むもの)、セラミック砂、溶材由来の骨材など用途特化型。

物理的性質と重要指標

細骨材の物理的性質はコンクリート性能に直結します。主な指標は以下のとおりです。

  • 粒度分布(ふるい分け): 粒径ごとの質量割合を示す。均一すぎると目詰まりしやすく、粗すぎると分離しやすい。適切なグラデーションが望ましい。
  • 細度係数(Fineness Modulus): 粒度分布を代表する数値(一般に細骨材は約2.3〜3.1が標準域)。値が小さいほど細かく、大きいほど粗い砂を示す。
  • 比重(真比重): 一般的な岩石由来の砂は2.6〜2.75程度。比重は配合設計の体積換算に影響する。
  • 吸水率(吸水): 表面粗さや内部微細孔に依存。0.2〜3%程度の幅がある。吸水率が高いと、混練時の有効水量が変化するため調整が必要。
  • 表面形状・粒形: 角張った砂は摩擦が増え、単位水量の増加や単位セメント量の増加を招きやすい。丸い砂は流動性が向上する。
  • 含泥分・有機物・塩分: 粘土や有機物はセメントの水和や付着を阻害する。塩化物は配筋腐食のリスクとなる。

化学的性質と反応性

細骨材に含まれる化学成分や鉱物組成は長期の耐久性に影響します。主要ポイントは次の通りです。

  • アルカリ骨材反応(ASR): 骨材中の反応性シリカがコンクリート中のアルカリと反応しゲルを生成、膨張・ひび割れを引き起こす。特に水ガラス成分や一部の火山岩系砂に注意。
  • 硫酸塩の存在: 一部の粘土鉱物や含有塩類が硫酸塩をもたらすと、エトリンガイト等の生成により体積膨張が起きうる。
  • 塩化物イオン: 塩分を多く含む海砂などは鉄筋腐食のリスクが高い。多くの設計基準で含有限度が定められている(例として目安0.03%程度がしばしば示される)。
  • 有機物: 腐植物質はセメントの硬化を阻害し、強度低下・遅延を招く場合がある。

品質試験と現場でのチェック項目

細骨材の品質管理は混合材の品質を担保するために不可欠です。一般的に行われる検査は以下です。

  • ふるい分析(Sieve analysis): 粒度分布と細度係数を求める基本試験。
  • 含泥分・砂含水率の測定: 洗浄試験や懸濁試験(サンドイング法、比重差法など)。含泥分は作業性と強度に大きく影響。
  • 塩分・塩化物イオンの測定: イオン分析や簡易試験で把握。鉄筋の腐食抑止のために管理。
  • 吸水率・比重測定: 配合計算や有効水量の見積に用いる。
  • 有機物試験・pH測定: 有機物存在は色や懸濁物の有無、pHの変動から把握。
  • 活性シリカ・ASRリスク評価: 必要に応じて鉱物学的分析や標準養生試験で反応性を評価。

細骨材がコンクリートに与える影響(フレッシュと硬化)

細骨材の性状はコンクリートの多くの面に影響を与えます。

  • 作業性(ワーカビリティ): 細かい砂や角砂は水分要求量を増やす。丸みのある砂や適切な粒度の混合は流動性を高める。
  • 分離・出血(ブルーディング): 過度に細かい細骨材や不適切な配合は分離しやすくなる。適正な粒度分布で防ぐ。
  • 初期圧縮強度と長期強度: 細骨材自体の強度よりも密実性(間隙率)や水セメント比制御が大きく影響。良好な粒度グラデーションは強度向上に寄与。
  • 乾燥収縮とクラック: 細粒分が多いと水分保有量が増え、乾燥収縮が増大する可能性がある。吸水率の高い砂も同様。
  • 耐久性(凍結融解、塩害、化学侵食): 不純物(塩化物、硫酸塩、粘土など)が耐久性低下を招く。ASRのリスク管理も必要。

配合設計上の留意点

配合設計では細骨材が次の点で操作変数となります。

  • 有効水量の調整: 吸水率と含水率を正確に把握して、実際に水和に利用可能な水量を計算する。
  • 単位水量・空気量の最適化: 細骨材の形状・微粒分量により要求水量や空気量が変化するため、これらを考慮した調整を行う。
  • 細度係数と粗骨材とのバランス: 粒度分布が適切であることにより、単位セメント量を抑えつつ所要強度を得やすくなる。
  • 高性能コンクリートでの配慮: 高強度・超流動化を目指す場合、微細分の制御や化学混和剤との相互作用を理解しておくことが重要。

製造・施工面での管理方法

品質を現場で維持するためには供給・貯蔵・処理の各段階で管理が必要です。

  • 採取・製造時の選別: 元材(母岩)の選択、破砕・篩分プロセスで目的粒度を得る。
  • 洗浄処理: 含泥分や塩分を低減するための洗砂工程。海砂は特に洗浄を行い塩分除去を徹底する。
  • 貯蔵・搬送: 混入汚染や湿度変化を避けるための屋根付き貯蔵、層別管理(ロット管理)を実施。
  • 現場搬入時の受入検査: 一定頻度でふるい分け・含水率・塩分などをチェックし、必要に応じて調整(洗浄・乾燥・混合)を行う。

環境・資源と社会的背景

河川砂の過剰採取による生態系破壊や景観問題、採取規制の強化により、砕砂や再生骨材の需要が高まっています。また、持続可能性の観点からリサイクル骨材の利用や掘削残土の有効利用技術が注目されています。都市部の需要増に伴い、安定供給・品質確保技術の整備が課題です。

最新技術と実務上のトレンド

近年の動向としては以下が挙げられます。

  • 高品質製造砂(クラッシュド・サンド)の進化: 破砕技術と洗浄プロセスの改善で、天然砂に近い流動性と低含泥分を実現。
  • 再生骨材の性能向上: コンクリート廃材の破砕・分級・表面処理により再生砂の品質が向上し、構造用コンクリートへの適用が拡大。
  • 微細分の機能化: 微細骨材を機能性材料として活用(熱伝導制御・軽量化など)する研究が進む。
  • 品質管理のデジタル化: 粒度分布のオンライン測定、IoTによるロット追跡、試験データのクラウド管理などが普及。

現場で使えるチェックリスト(推奨事項)

  • 供給源と採取・製造履歴を確認し、ロット管理を徹底する。
  • 受入時にふるい分け・含水率・含泥分・塩分の簡易試験を実施する。
  • 吸水率を配合設計に反映し、実際の有効水量を計算する。
  • 海砂や含塩骨材は十分な洗浄後、塩化物イオン濃度を測定する。
  • 再生砂利用時は付着モルタルや有害物質の除去・評価を行う。
  • ASRリスクがある骨材は事前に鉱物学的評価と長期試験で確認する。

まとめ

細骨材はコンクリートの「見えにくい」重要構成要素であり、その粒度、形状、吸水性、不純物含有量がフレッシュから硬化後の性能まで広く影響します。現場での受入管理、適切な供給源選定、そして最新の製造・洗浄技術や再生利用の導入が、品質向上と持続可能な資源利用の両立につながります。設計者・施工者は試験データに基づく配合調整とリスク管理を継続して行うことが重要です。

参考文献