エギ完全ガイド:種類・使い方・季節別攻略法とタックル選び
はじめに — エギとは何か
エギは日本で発展したイカ釣り用のルアー(餌木=えぎ)の呼称で、特にアオリイカを狙う「エギング」と呼ばれる釣りで使用されます。外見は小さなエビや甲殻類を模したボディに、底側に複数のカンナ(針状の突起)が付いているのが特徴です。浮力や形状、カラー、重心設計により多様な動きを演出でき、シャクリとフォールの組み合わせでイカにアピールします。
エギの歴史と進化
エギは伝統的に木(バルサ材など)や布を使った手作りの餌木が原型でした。近年はプラスチック成形や塗装技術、内部重心(タングステン調整や鉛芯)やUV・ケイムラ(紫外線反応)塗料の採用、夜光塗料の精度向上などで性能が大きく進化しています。また、カンナ形状・配置やアシストフックの追加、ティップラン専用設計など、釣法に特化したモデルも増えています。
エギの構造と主要なバリエーション
- サイズ(号数)
エギは号数で区別され、一般的に2.0号〜4.0号がよく使われます。2.5号や3.5号が汎用的ですが、場所やターゲットサイズにより小さい号数(1.5号〜)や大きい4.0号以上を選びます。号数は目安で、同じ号数でもメーカーにより重さや沈下速度は異なります。
- 浮力タイプ
浮く(フローティング)タイプ、沈む(シンキング)タイプ、スローシンキングや中速で沈むタイプなどがあります。浅場や根掛かりしやすいポイントでは浮く/スロータイプを、深場や潮流の速い場所では沈む/重めのタイプを選びます。
- ボディ素材と重心
バルサ材を使うモデルは自然な浮力とアクション、感度を持つことで評価されますが、樹脂一体成形のプラスチック製は耐久性と精密な重心設計が特徴です。鉛やタングステンのウエイトを内部やヘッドに配置し、キャストやフォール特性を調整します。
- カラーと光学特性
ナチュラル系(ベイトライク)、コントラスト系、ケイムラ(紫外線反応)、夜光(蓄光)など。水質や潮色、光量に合わせて使い分けます。クリアウォーターではナチュラルや抑えた色味、濁りや夜間では派手めや夜光が有効です。
- フック(カンナ)とアシスト
エギの底側には通常複数のカンナ(イカ掛け用の刺状フック)が付いています。近年はリアにアシストフックを追加したり、トレブルからシングルのアシストに交換するなど、フッキング率やバレ対策、イカの傷を減らすためのカスタムが一般的です。
エギの選び方 — ポイント別ガイド
- 水深と潮流
浅場や緩い潮なら2.5号〜3.0号を基準に。流れが速いか深い場所なら3.5号〜4.0号の沈むタイプを選ぶと底が取りやすくなります。
- 時間帯と光量
明るい日中はナチュラル系やケイムラを基準に、夕まずめ〜夜間は夜光や高コントラストカラーが効くことが多いです。ただし場所によって差があるため、まずは数色試すのが基本です。
- イカのサイズと群れの状態
新子(小型)が多い時は小さい号数でナチュラルに、産卵期や秋の大型狙いでは大きめの号数でアピール強めに。餌が豊富で活性が高いときはパターンを崩しても食わせられますが、渋いときはフォールの見せ方が重要になります。
基本アクションとテクニック
- 基本のシャクリとフォール
エギングの基本はロッドを使ったシャクリ(突き上げ)と、その後のフォール(落とし込み)です。シャクリでエギにダートや跳ねるような動きを与え、フォールで停止中に抱かせます。抱きつき(バイト)はフォール中やフォール後の初動で出ることが多いので、ラインテンションを緩めずにロッドを構えましょう。
- テクニカルなシャクリ
・ショートジャーク(小刻みでテンポよく) — 浅場や高活性時に有効。 ・ロングジャーク(大きく強めに) — ディープや大型狙い、リアクション狙い。 ・スラックを使った小さな揺らし(フォール中の微振動) — 渋い時の食わせ技。
- ティップラン(ティップランエギング)
ボートからラインテンションを張ってゆっくりとテクニカルに誘う釣り方で、軽いエギ(1.5〜2.5号前後)を使用。ロッドのティップでアタリを取るため、柔らかめのティップ特性を持つ専用ロッドが使われます。
季節ごとの狙い方(春・夏・秋・冬)
- 春(産卵接近期)
春は大型のアオリイカが浅場に寄りやすく、産卵に絡んで接岸するため良型を狙いやすい季節です。風や潮の影響が小さい日を狙い、3.5号前後でじっくり探るのが有効。産卵床周りや藻場、岩礁帯のエッジを重点的に狙いましょう。
- 夏
水温上昇で深場や沖側に散る傾向があります。夜釣りやディープレンジを意識した重めのエギ、またはボートでのティップランが有効です。夜間は夜光や高コントラストが好まれます。
- 秋(食いが立つ時期)
秋は餌を求めて活性が高くなるため、釣れる日が多いシーズンです。引きの強さを楽しめる時期で、サイズも期待できます。状況に応じて2.5〜3.5号を使い分けます。
- 冬(低活性期)
水温低下で食いが渋くなるため、ゆっくりと見せて抱かせる戦略が必要です。小さめのエギをスローに誘う、あるいは夜間の短時間勝負で効率よく狙うのが有効です。根掛かり回避のためラインテンション管理を徹底しましょう。
タックル(ロッド・リール・ライン)の選び方
- ロッド
エギング専用ロッドは長さ2.4m前後(8ft前後)がバランス良く汎用的。軽量で感度の良いティップ(先端)とバットの粘りが求められます。ティップラン用はよりしなやかなティップが特徴です。
- リール
スピニングリールの2000〜3000番クラスが一般的。ドラグ性能や巻き上げ比率、重量のバランスを見て選びます。
- ライン
メインラインはPEライン(0.4〜1.5号が主流)を使用し、視認性や飛距離、感度で号数を選びます。リーダーはフロロカーボンの1.5〜3号程度でガイドや潮流、イカのサイズを考慮して太さを調整します。
アクシデントとトラブル対策
- 根掛かり
根掛かりが多いポイントでは浮力のあるエギを使う、または根を避けるアクション(短いシャクリ+速めのリトリーブ)を心がけます。スローフォール中の根掛かりはラインテンション管理で回避できることがあります。
- バレ(取り込み中の外れ)
イカは柔らかいため、強引なやり取りでバラシや損傷が増えます。根に潜らせないようドラグ調整を適正にし、取り込み時はリールの逆転(ドラグ)を活用します。
- ラインのヨレや絡み
PEラインは撓りにくくヨレやすいので、ラインメンテと適切なスナップ・結び目管理が重要です。定期的なライン交換をおすすめします。
メンテナンスと長持ちさせるコツ
使用後は真水でしっかり塩抜きし、カンナや金具は乾燥・防錆対策を行いましょう。リアルカラーや夜光層の劣化を防ぐために直射日光は避け、エギ同士の擦れを防ぐ収納方法(ケースや個別ポーチ)で保管します。カンナの摩耗や錆が見られたら早めに交換や研ぎ直しを行うと釣果維持につながります。
環境配慮とマナー
イカの個体数保全や地域の漁業ルールを守ることは重要です。サイズ規制や漁期、立ち入り禁止区域があるため事前に確認してください。キャッチ&リリースを行う場合はイカのダメージを最小限にするため素早く、触手やエラを傷つけないように扱うこと。またゴミの持ち帰り、夜間照明や騒音への配慮も忘れずに行いましょう。
よくある質問(Q&A)
- Q: 初心者はどのエギから始めるべき?
A: 2.5号〜3.0号の汎用的な浮力または中速シンキングのエギを1〜2色揃えると良いです。周囲の釣況を見て夜光やケイムラ系を追加しましょう。
- Q: カラーは何色が万能?
A: クリアウォーターではナチュラル系(ベイトを模したカラー)、濁りや夜は夜光や高コントラスト色が有利です。ただしポイント差が大きいので現場でのローテーションが重要です。
- Q: フック(カンナ)は交換した方がいい?
A: 錆や摩耗がある場合は交換したほうが良いです。また、バレやイカへのダメージを減らすためにアシストフックに変更するアングラーも多いです。
まとめ
エギングは道具(エギ)と技術(シャクリとフォール)、環境(潮・季節・光量)を総合的に組み合わせて楽しむ釣りです。エギ選びは状況適応力が求められるため、まずは汎用的な号数とカラーから始めて、現場での反応を見ながら細かく調整していくのが上達の近道です。また、道具の手入れや地域ルールの順守を忘れず、長く釣りを楽しめるように心がけましょう。
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