Yamaha S90徹底解剖:サウンド、鍵盤感触、ライブ/スタジオでの活用法
Yamaha S90とは
Yamaha S90は、Yamahaがプロフェッショナル用途を想定して展開したSシリーズのステージキーボードのひとつで、ピアノ音色の表現力とシンセサイザー的な拡張性を両立したモデルとして知られています。コンサートやツアー、スタジオレコーディングなど幅広い現場で使われてきたため、操作性・音質・耐久性のバランスに優れている点が高く評価されています。
歴史的背景とシリーズの位置づけ
SシリーズはYamahaの中でもステージ用途に重点を置いたラインで、S90はその中核を担うモデルの一つでした。グランドピアノに迫る表現力を目指したピアノサウンド、豊かなパッドやエレピ、オルガンサウンドを搭載し、当時のライブキーボーディストにとって「現場で頼りになる1台」を目指して設計されています。発売当初からプロからの支持が厚く、後継機や派生モデルが出るまで長く現場で使われました。
サウンドエンジンと音質傾向
S90のサウンドは、サンプルベースの音色を基礎に、フィルタリングやエンベロープ、エフェクトで肉付けをする形が中心です。特にピアノ音色は複数のダイナミックレイヤーやサンプルセットを組み合わせることで、打鍵の強弱やペダルワークに対する応答性が高められています。また、エレクトリックピアノ(エレピ)やオルガン、ストリングスなどの定番音色も充実し、ジャンルを問わず使える汎用性の高さが魅力です。
鍵盤タッチと演奏性
S90は88鍵(モデルにより差異あり)フルサイズの鍵盤を備え、重さ感のある鍵盤タッチが特長です。ステージ向けのキーベッドは、演奏時の安定感とダイナミクスの幅を重視して設計されており、ピアニスト志向のプレイヤーにも違和感の少ない弾き心地を提供します。ハンマー感や重さの感触はアコースティックピアノとは異なりますが、ライブでの演奏に必要な感触とリターンが得られるよう調整されています。
パネルと操作性
フロントパネルは視認性と操作性を重視した作りで、音色の選択、スプリット、レイヤー操作、エフェクト設定などが直感的に行えるように配置されています。ライブ中に素早く音色を切り替えたり、スプリットポイントを変更したりする場面でも安定して操作できるのが強みです。MIDIやフットコントローラーを使った外部制御にも対応し、ステージセットアップに柔軟に組み込めます。
エフェクト/プロセッシング
S90にはリバーブ、コーラス、ディレイ、EQ、アンプシミュレーション的な処理など、実用的なエフェクト群が搭載されています。これらは音色ごとに適用・調整でき、サウンドメイクの幅を広げます。特にピアノやストリングスに対するリバーブ設定や、エレピの位相感を変えるコーラスなどは、ステージでの存在感を作る上で重要です。
接続性と拡張性
ライブ機器としての接続性も重視されており、ステレオ出力のほかにラインアウト、MIDI端子、ヘッドフォン端子などを装備しています。外部エフェクトやPAへの接続も容易であり、MIDI経由で他の音源をコントロールすることも可能です。モデルや年式により装備の詳細は異なりますが、現場で必要となる基本的な入出力は揃っていると考えてよいでしょう。
サウンドデザインの実践的アプローチ
S90を使いこなすためには、各パラメータの役割を理解しておくことが大切です。以下は実用的なサウンドメイクのポイントです。
- ピアノ音色:ダンピング(ペダル)やレイヤーのバランスを微調整して、低域の濁りを抑えつつアタックを明瞭にする。
- エレピ:コーラスとステレオ幅を活かして温かみを出す。ローエンドはEQで整理する。
- パッド/ストリングス:リバーブとロングディケイを使い、背後でサウンドを支える役割に設定する。
- オルガン:レスポンスやクリック感を調整して、ライブでのブライトネスと太さを両立させる。
ライブでの使い方とセットアップ例
ライブでは1台で複数の楽器役割をこなすことが求められます。S90はスプリット機能やレイヤー機能を用いて、右手にピアノ、左手にベース音色、フットスイッチでオルガンを切り替えるといった使い方ができます。プリセット管理を工夫して曲ごとのセットリストに合わせたプログラム変更を事前に用意しておけば、演奏中のトラブルを減らせます。
スタジオでの位置づけ
スタジオではS90の生音的なピアノや質感のあるパッドが重宝されます。マイク録りしたアコースティックピアノと比べると質感は異なりますが、手早く高品質なピアノサウンドやシンセサウンドを録音したい場面で有用です。外部EQやコンプと組み合わせることで、ミックスにも埋もれない存在感を作りやすくなります。
メンテナンスと注意点
長年にわたって良好に使うためには、定期的なメンテナンスが重要です。鍵盤の動作確認、接点のクリーニング、ペダル機構の点検、端子の腐食チェックなどを行ってください。搬送が多いステージ機器であるため、ケースやスタンドの品質にも気を配ると故障リスクを減らせます。
中古市場と投資価値
S90はプロユースとして長く使われてきたため、中古市場では一定の需要があります。状態や付属品(ケース、マニュアル、フットスイッチなど)によって価格が変動します。購入時は鍵盤の反応、ノイズ、端子の状態、内部メモリの消去などをチェックしましょう。修理履歴やファームウェアの有無も確認ポイントです。
現行機種との比較と選び方
最新のステージキーボードはサンプリング解像度の向上、モデリング技術の進化、拡張性の強化が進んでいます。S90に魅力を感じる点はその音色バランスと操作性ですが、最新機種ではより細かなピアノの表現、拡張シンセ機能、USBオーディオ/MIDI統合といった利点があるため、用途に応じて選ぶと良いでしょう。レトロなサウンドや特定のフィーリングを重視するならS90、中核となる最先端の機能やワークフローを重視するなら現行モデル検討をおすすめします。
まとめ:Yamaha S90が向くプレイヤー像
Yamaha S90は、ライブやスタジオで幅広い音色を求めるプロフェッショナルに向いた楽器です。ピアノ中心の表現力とシンセ的な拡張性を両立しており、操作性や信頼性も高く評価されています。中古で手に入れる場合でも、適切なメンテナンスで長く使える良機種と言えるでしょう。
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