Yamaha Motif ES徹底解説:音作り・演奏・制作で今も現役の理由
Yamaha Motif ESとは何か
Yamaha Motif ES(以下 Motif ES)は、2000年代初頭にヤマハが投入したプロフェッショナル向けワークステーション・シンセサイザーシリーズの一機種です。61鍵(ES6)、76鍵(ES7)、88鍵(ES8)の3タイプを展開し、ステージ用途からスタジオワーク、シーケンス制作まで幅広く対応する多機能機材として多くのミュージシャンやプロデューサーに支持されました。Motifシリーズの流れを汲む製品群の一つであり、後継機(Motif XS/XF等)へと続く技術基盤を確立したモデルです。
歴史的背景と位置づけ
Motif ESは、初代Motifの成功を受けて音色ライブラリや処理能力を拡張し、より現代的な制作ニーズに応えたモデルです。発売当時はリアルなピアノやアコースティック音色、シンセリード、ストリングスからエレクトロ系のサウンドまでカバーする幅広いプリセットを備え、ライブのメイン鍵盤機として採用されることが多かった点が特徴です。以降のヤマハ・ワークステーションの設計思想に影響を与えたことでも知られます。
主要ハードウェア仕様(概説)
ここでは仕様の概要を示します。細かな数値は機種のリビジョンやオプションによって差が出る場合があるため、詳細な仕様確認は各資料(後掲参照)を参照してください。
- 鍵盤バリエーション:ES6(61鍵)、ES7(76鍵)、ES8(88鍵:グレードド・ハンマーアクション搭載)
- 音源方式:サンプルベースのAWM2(Advanced Wave Memory 2)エンジンをベースにしたトーン生成
- ポリフォニーや同時発音数の拡張:先代より増強された処理能力により、複雑なマルチティンバーやエフェクト使用時でも安定した出音を保持
- 内蔵エフェクト:リバーブ、コーラス、各種マルチエフェクトを豊富に搭載
- 演奏支援:アルペジエーターやフレーズ/パターン、シーケンサー等の制作機能を備える
- 拡張性:音色拡張用のROMカードやサンプルのロード、メモリ拡張に対応(オプションにより増設可能)
音色とサウンド・デザイン
Motif ESの音色は「生楽器のリアリティ」と「シンセサイザー的表現力」を高いレベルで両立させた点が評価されています。ヤマハ独自のサンプリングとフィルタ/エンベロープ処理、モジュレーション設計により、ピアノやストリングスのダイナミクスが自然に表現され、さらにパッチレイヤーや外部コントロール(モジュレーションホイール、アフタータッチ等)を用いることで柔軟に音色を成形できます。
特に以下の要素が制作現場で重宝されました:
- 豊富なプリセット:ジャンル横断的に使えるクオリティの高いプリセットが多数収録されているため、即戦力として使える
- レイヤー構成:複数音色のレイヤーやスプリット設定が簡単に行え、複雑なスタックサウンドを鍵盤一つで鳴らせる
- エフェクト群の質:内蔵エフェクトのアルゴリズムが実用的で、外部機器に頼らずに完成形に近い音作りが可能
演奏性・パフォーマンス機能
ES6/7/8のラインナップにより、ライブやツアーの用途に合わせた選択ができます。ES8は88鍵のグレードド・ハンマーアクションを装備し、ピアニストにも違和感の少ないタッチ感を提供します。一方でES6はコンパクトさと軽さが利点で、移動の多いキーボーディストに適しています。
さらに、アルペジエーターやリアルタイムコントロール(スライダー、ボタン、ノブ)は即興演奏やライブでの音色切替をスムーズにし、複数の音色を瞬時に使い分けられる設計です。ライブでの安定性を重視したビルド品質も評価ポイントとして挙げられます。
制作ワークフローとシーケンサー
Motif ESはキーボード単体での音楽制作にも適したシーケンサー機能を備えています。フレーズやパターンのレコーディング、MIDIのプレイバック、トラックアレンジを本体で行えるため、アイデア出しからデモ制作までを現場で完結できます。DAWとの連携も一般的で、鍵盤からMIDIデータを送り、外部で編集・ミックスする形が多く用いられました。
拡張性と互換性
当時のワークステーションとして、Motif ESは外部音色やサンプルの追加、ROMカードによるライブラリ拡張に対応しています。これにより、ユーザーは時代の要請に合わせてサウンドをカスタマイズでき、長期的な運用が可能になりました。また、MIDI規格に準拠した入出力を持つため、シーケンサー/DAWや外部モジュールとの連携もスムーズに行えます。
実践的な活用例(スタジオ/ライブ)
スタジオでは:高品質なピアノとストリングスは仮録りや本録りのキー素材として重宝されます。プリセットの多様性により、手早くアレンジの骨格を作ることが可能です。また、内蔵エフェクトを利用してプリミックスを行い、DAWでの最終処理を効率化できます。
ライブでは:堅牢な筐体、直感的なコントロール、即戦力の音色群が利点となります。複数音色の切替やレイヤー構成をステージで瞬時に行えるため、ワンマンオペレーションやバンドでの省力化に寄与します。
中古での購入やメンテナンスのポイント
発売から年月が経過している機種のため、中古市場での購入を検討する際は以下に留意してください:
- 鍵盤の摩耗や接点不良:長年の使用で鍵盤アクションや接点が劣化する場合があるため、動作チェックを推奨
- 液晶やファームウェア:液晶表示の不具合や古いファームウェアに起因する操作制限がある場合があるので、可能なら最新のアップデートを確認する
- 拡張カードや付属品の有無:拡張ROMやフットスイッチ、サステインペダル等が揃っていると利便性が上がる
現代の音楽制作における価値
現代ではソフトウェア音源の進化が著しいため、ハードウェア・ワークステーションの役割は変化しました。しかし、Motif ESはその安定した鍵盤感触、直感的な操作性、ハードウェアならではのレイテンシの少なさと音色の即時性で、今なお現役で使われる理由があります。特にツアー中やネットワーク環境に依存しないスタジオ環境では、信頼できるメイン鍵盤としての価値が高いです。
まとめ:なぜMotif ESが選ばれ続けるのか
Motif ESは総合的なバランスに優れたワークステーションです。高品質な音色、実戦的な演奏機能、拡張性と堅牢性を兼ね備え、ライブ・スタジオの両面で長年にわたり支持されてきました。最新機材に比べて機能面で劣る部分はあるものの、その音作りの基礎と堅牢性は今でも有用であり、中古市場でも人気を保っています。もし本機を導入するなら、実機でのタッチ確認や動作チェックを行い、自分の制作・演奏スタイルに合うかを確認することをおすすめします。
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参考文献
- Yamaha Motif - Wikipedia
- Sound On Sound: Yamaha Motif ES review
- Vintage Synth Explorer: Yamaha Motif ES
- Yamaha公式サイト(ワークステーション製品ページ)


