TORIENAの音楽世界を深掘りする:可愛さと暴力性の狭間で鳴るエレクトロニカの現在

TORIENAとは──概要と位置づけ

TORIENA(トリエナ)は、日本のエレクトロニック・ミュージックシーンで注目されるプロデューサー/DJ/ライブアクトの一人で、ポップなメロディとアグレッシブなビートを同居させる独自のサウンドで知られています。ネットを中心に活動を始めた世代に属し、チップチューンやハードコア、ブレイクコア、そしてJ-POP的な「かわいい」要素を融和させる手腕が特徴です。近年のインターネット発の音楽潮流──ハイパーポップやジェイポップと電子ダンスミュージックの接合──の文脈で読み解くと、TORIENAはその最前線にいるアーティストのひとりといえます。

音楽的特徴:可愛さと暴力性の融合

TORIENAのトラックを聴けばまず印象に残るのは、ポップなシンセや少女的なボイスサンプルが持つ“可愛さ”です。その一方で、ドラムやベースの極端に速いテンポ、歪んだキックやスネア、細切れのブレイクビーツなど“攻撃的”な要素が強烈に重ねられます。この対比が彼女の音楽のコアで、リスナーに〈心地よいメロディ〉と〈身体を揺さぶる衝撃〉の両方を同時に与えることで、聴覚的な緊張と解放を作り出しています。

音色面では、FM音源や8bit系のチップチューン音色、さらにはハードコア系のベースやノイズ処理が混在します。極端なコンプレッションや歪み、フィルターワークで音像を加工し、エモーショナルなメロディを“過剰演出”することで独特の鮮烈さを獲得しています。

制作手法とサウンドデザイン

制作環境としてはDAWを中心にシンセ、サンプラー、プラグインエフェクトを駆使した現代的なプロダクション手法が想定されます。楽曲構成では短いフレーズの反復や、転調をともなうメロディ展開、急激なテンポチェンジやリズムの断片化が多用され、クラブ用途だけでなくライブでのドラマ性も重視されています。

サウンドデザインのポイントは以下のとおりです:

  • 高域寄りのシンセとボイスサンプルで“かわいさ”を演出
  • 低域に厚みを与える歪んだキックやサブベースで躍動感を確保
  • 細かいリズム編集(クオンタイズの崩しや微妙なタイミング調整)で生的なグルーヴを作る
  • 過剰なリバーブやディレイで空間の拡大と瞬間的な前後感を強調
  • ノイズやレイヤーを重ねてサウンドの密度を高め、聴覚的な“圧”を演出

ライブ/DJでの表現

TORIENAのライブやDJプレイは、トラックのポップ性とハードコア性を現場でどのように共存させるかにフォーカスしています。セットではテンポの急激な上げ下げや、楽曲同士の衝突を恐れないブレンドが行われ、観客にエネルギッシュなカタルシスを与えます。また、ライブではボーカル処理やサンプラー操作、即興的なエフェクト処理を加えることで、レコーディング音源とは異なる“現場限定の瞬間”が生まれます。

影響/参照先として考えられるもの

TORIENAの音楽は単一のジャンルに収まらず、多様な参照点が混ざり合っています。考えられる影響源としてはチップチューン、ハードコア/ガバ、ブレイクコア、J-POPのメロディライン、インターネット発のハイパーポップ/PCミュージック系の実験性などが挙げられます。これらの要素を彼女なりに再解釈し、現代日本のアンダーグラウンド・シーンに接続している点が重要です。

作品/リリースの受容とシーンでの位置

ネット経由で拡散される音楽が主流となった現在、TORIENAのようなプロデューサーは国境を越えてリスナーを獲得しています。国内のクラブ/フェスティバルや海外のネットコミュニティで評価を受けることが多く、従来のジャンル分けでは測れない“横断的な人気”を築いているのが特徴です。批評的には、ポップ性と前衛性を併せ持つ点が高く評価される一方、過度な処理やノイズの多用を好まない層からは賛否が分かれることもあります。

聞き方ガイド:初めて聴く人に向けて

初めてTORIENAを聴く際は、以下のポイントを意識すると理解が深まります:

  • 可愛いメロディと激しいビートの“ずれ”を楽しむ:両者のギャップが魅力の核です。
  • 細部に注目する:ノイズ、フィルター、エフェクトによる瞬間的な変化が曲のドラマを作ります。
  • ライブ映像やDJミックスもチェックする:レコーディング音源とライブでの違いが強烈です。
  • プレイリストに入れて繰り返し聴く:最初は刺激が強く感じられても、反復でメロディが定着します。

シーンへの貢献と今後の展望

TORIENAのようなアーティストは、ジャンル横断的な音楽表現を通じて「何がポップで何が前衛か」という線引きを曖昧にします。結果として、若い世代の音楽表現の幅を広げ、新しいイベントやコラボレーションを生み出す触媒の役割を果たしています。今後は、より多様なメディア(映像、ファッション、ゲームなど)との連動や、国際的なフェス/レーベルとの協働を通じて活動領域を拡張していく可能性が高いでしょう。

まとめ

TORIENAは、ポップなメロディとアグレッシブなサウンドデザインを融合させることで、聴覚的な緊張と解放を生み出すアーティストです。ネット発の表現を巧みに取り込みつつ、ライブやDJを通じて現場でのインパクトも重視しており、現代のエレクトロニックシーンにおいて重要な存在であり続けています。作品を楽しむ際は、その両義性に注意を払い、レコーディング音源と現場音源の差異も含めて体験することをおすすめします。

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参考文献