Underworldの軌跡と影響:革新的エレクトロニック・デュオの深層解析
Underworldとは何者か
Underworld(アンダーワールド)は、主にカール・ハイド(Karl Hyde)とリック・スミス(Rick Smith)を中心とするイギリス出身のエレクトロニック・ミュージック・ユニットであり、1990年代以降のクラブ/ダンス・ミュージック、ブレイクビーツやテクノ、プログレッシブ・ハウスに対して大きな影響を与えてきた存在です。ユニットはもともと1980年代にカールとリックが在籍したバンド「Freur」から発展し、1986年以降の活動を経て独自のサウンドを確立していきました。彼らの音楽は長尺のトラック、反復するグルーヴ、即興的なライブ演奏、そしてカールの独特な語りや詩的な歌詞が特徴です。
結成からブレイクまで:経緯と転換点
Underworldの初期はポップ寄りのシンセポップ路線とクラフト志向のバンド活動が混在していましたが、1990年代初頭にダレン・エマーソン(Darren Emerson)が参加して以降、よりクラブ向け、DJ文化に根ざしたサウンドへとシフトします。1994年のアルバム『dubnobasswithmyheadman』は、そのシフトが明確に現れた作品で、長尺の展開、ベースラインの強調、環境音やサンプルの積み重ねといった手法で、クラブやラジオ双方に強いインパクトを与えました。
転機となったのは映画『トレインスポッティング』(1996年)で使用され、広く知られることになった楽曲「Born Slippy .NUXX」です。本作は映画の成功と相まってUnderworldを国際的に知らしめ、メインストリームとアンダーグラウンド双方での評価を高めました。
主要アルバムと音楽的変遷
- dubnobasswithmyheadman(1994):クラブ的要素とロック的アティテュードが融合した重要作。ドラムの打ち込みと生演奏のブレンド、長尺のモジュール化されたトラックが特徴。
- Second Toughest in the Infants(1996):さらに実験的でドラマティックなサウンドスケープを展開し、クラブだけでなくアルバムとしての完成度も評価された。
- Beaucoup Fish(1999):シングル「Push Upstairs」「Jumbo」などを含み、よりダンスフロアを意識しつつも多層的なテクスチャを維持した作品。
- A Hundred Days Off(2002):ダレン・エマーソン脱退後、カールとリックによるデュオ体制で制作された初のスタジオ作。冷静さとメロディアスなアプローチが目立つ。
- Oblivion with Bells(2007)/Barking(2010)/Barbara Barbara, We Face a Shining Future(2016):2000年代以降も発展を続け、特に2016年作『Barbara Barbara…』は批評家からの高評価を受け、2017年のグラミー賞(Best Dance/Electronic Album)を受賞するなど、キャリア後期においても創造性を保ち続けている。
メンバーとそれぞれの役割
カール・ハイドはボーカル、ギター、詩的なリリックとステージ・パフォーマンスを担当し、言葉とリズムの関係性を追求する語り手としての特徴を持ちます。リック・スミスはプロデューサー兼サウンドデザイナーとして、シンセサイザー、サンプラー、ミキシングの技術でUnderworldの音の核を支えます。ダレン・エマーソンは1990年代のブレイクに大きく寄与したDJ兼プロデューサーで、クラブのフロア感覚を持ち込み、サウンドの方向性をダンスミュージック寄りに強めました(1990年頃加入〜2000年脱退)。
サウンドの特徴と制作哲学
Underworldの音楽は、反復するループと微細な変化を重ねることで聴き手を徐々に別世界へ導く「長時間での変奏」を得意とします。カールのボーカルはしばしばストリーム・オブ・コンシャスネス(意識の流れ)的で、単純な歌詞の繰り返しがリズムの中で詩的に作用します。制作面ではサンプラーやアナログ/デジタルのシンセを併用し、曲のスケッチをライブで何度も再構築していく手法を取ることが多いです。これによりスタジオ作でも「ライブ感」が保たれ、コンサートとアルバムが相互にフィードバックする関係を築いてきました。
ライブ・パフォーマンスの重要性
Underworldは“ライブ・バンドとしての電子音楽”というモデルを確立してきました。DJセットとは異なり、トラックをそのまま流すのではなく、演奏中にリアルタイムで展開や改変を行う即興性が重視されます。長尺のトラックを用いて観客の集中を作り上げる手法、視覚・映像と同期したセット構成、そして反復によるトランス的高揚を生む点で、彼らのライヴは単なるダンスショーを超えた演劇的・儀式的な体験を提供します。
文化的影響と評価
1990年代以降、UnderworldはUKクラブ・シーンのみならず国際的なエレクトロニック・ミュージックの潮流に影響を与えました。長尺トラックや曲内での段階的な変化、ポエトリー的なボーカルの取り入れ方は後の多くのプロデューサーやバンドに受け継がれています。また、映画やメディアでの楽曲使用が彼らの認知度を押し上げ、クラブ以外のリスナー層へも広がりました。晩年のアルバムが評価されグラミーを受賞したことは、長期にわたる表現の継続性と革新性が改めて認められた証と言えるでしょう。
批評的視点:強みと限界
Underworldの強みは、クラブ的ノウハウと作曲的な深みを両立させた点にあります。トラックはダンスフロアで機能する一方、アルバム単位で聴いたときにも物語性や情緒を保ちます。一方で、長尺で展開に時間を要するために即効性のあるヒットを狙いにくい面もあり、ポップス指向のリスナーにはとっつきにくいこともあります。しかし彼らはそのスタンスを貫き、独自のリスナー層を確立してきました。
現状とこれからの展望
2010年代後半以降もUnderworldは活動を続け、新作の発表やワールドツアー、フェスティバル出演などで現役感を保っています。電子音楽の制作環境は変化し続けていますが、彼らの核心である“ライブ感”と“言葉の力”は時代を超えて通用する要素です。今後も過去の手法を見直しつつ新しいコラボレーションやメディア表現を模索していく可能性が高く、若い世代のアーティストとも相互作用を続けるでしょう。
聴きどころ(初心者向けガイド)
- まずは「Born Slippy .NUXX」—映画『トレインスポッティング』で知られる代表曲。
- アルバム単位で体験するなら『dubnobasswithmyheadman』と『Second Toughest in the Infants』を連続で聴くと、90年代の変革がよくわかる。
- ダレン・エマーソン在籍期とその後のデュオ期で音の作りが変わるので、比較して聴くのも面白い。
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参考文献
- Underworld - Wikipedia
- Underworld Biography - AllMusic
- Underworld | NME
- Underworld — Grammy.com
- Underworld Official Site


