Chicago — ホーンが切り拓いたアメリカンロックの系譜と進化
Chicagoとは
Chicago(シカゴ)は、1967年にアメリカ・シカゴで結成されたロックバンドで、管楽器をバンドの中核に据えたサウンドで世界的な成功を収めてきました。オリジナル名は "Chicago Transit Authority" でしたが、シカゴの公共交通機関との名称問題により1969年に現在のバンド名に変更されました。ジャズ、ロック、ポップ、クラシックの要素を融合させた独自のスタイルで1970年代以降多くのヒットを生み、商業的にも評価され、世界でのレコード売上は1億枚を超えると言われています。
結成と初期のサウンド(1967〜1971)
Chicagoは、ロバート・ラム(キーボード/歌)、テリー・カス(ギター/歌)を中心に、ウォルター・パラザイダー(木管)、ジェームズ・パンコウ(トロンボーン)、リー・ロウネイン(トランペット)、ダニー・セラフィン(ドラム)、ピーター・セテラ(ベース/歌)らが結集して結成されました。初期の作品では、ブラス・セクションを前面に押し出し、ジャズの即興性とロックの躍動感を合体させたサウンドを提示しました。
1969年のデビュー・アルバム『Chicago Transit Authority』は批評家の評価も高く、続く1970年の『Chicago II』で“25 or 6 to 4”などの代表曲を生み出します。初期のChicagoは、組曲的な長尺曲や複雑なアレンジを取り入れる一方で、ポップなシングルも両立させる器用さを持っていました。
黄金期と商業的成功(1970年代後半〜1980年代前半)
1970年代を通じてChicagoはコンスタントにアルバムを発表し、ラジオやチャートでの露出を高めました。1972年の「Saturday in the Park」や1970年の「25 or 6 to 4」など、時代を代表するロック曲を次々と送り出します。1976年にはバラード「If You Leave Me Now」が全米No.1となり、バンドに新たな商業的ブレイクをもたらしました。この楽曲はグラミー賞も受賞し、Chicagoの名をポップス・シーンにも確立させました。
1970〜80年代にかけては、プロデューサーや外部のソングライターと連携することで、楽曲の幅を広げていきます。この時期の変化は、バンドが単なるブラス・ロックにとどまらず、ソフトロックやアダルトコンテンポラリー市場での成功も追求したことを示します。
音楽的特徴とアレンジの巧みさ
Chicagoの特徴は何と言ってもホーン・セクションをバンドの中心に据えた編成です。トランペット、トロンボーン、サックス/フルートといった管楽器がリフやメロディ、カウンターラインを担い、ギターやキーボードと緻密に絡み合います。これにより、和声的な厚みとリズムの躍動感を同時に実現している点が他バンドと一線を画します。
また、個々のメンバーが作曲・編曲能力を持っていたため、1曲ごとに異なる表情を見せるアルバム構成が可能でした。ロバート・ラムのピアノ主導のポップ曲、ピーター・セテラの伸びやかなバラード、テリー・カスのブルージーかつハードなギター、パンコウやロウネインらの管楽器によるブラス・アンサンブルが組み合わさることで、独特の多層的なサウンドが生まれました。
メンバーの変遷と重要事件
長いキャリアの中でメンバー交代と悲劇的な出来事も経験しています。代表的なものを挙げると:
- テリー・カスの死(1978年)— オリジナル・ギタリストであり中心的存在であったカスは、事故による銃の暴発で不慮の死を遂げ、バンドにとって大きな衝撃となりました。
- ピーター・セテラのソロ転向(1985年)— セテラはソロ活動に集中するためバンドを去り、その後のChicagoは音楽性の再編と継続的なメンバー補強を余儀なくされました。
- プロデューサーとの協働— ジェームス・ウィリアム・ゲルシオ(James William Guercio)との初期の協働がバンドのクラシックな時代を形成し、1980年代にはデヴィッド・フォスター(David Foster)との仕事によって洗練されたバラード路線が確立されました。
これらの出来事はバンドの音楽的方向性に直接影響を与え、1970年代のブラス・ロックから1980年代のアダルト・コンテンポラリーへと変化する要因となりました。
批評と評価:賛否両論のダイナミクス
Chicagoは長年にわたり批評家から賛否両論を受けてきました。初期の実験的かつ技巧的なアルバムは高い評価を得る一方で、1970年代後半から1980年代にかけての商業主義的な曲作りやバラード志向に対しては、コアなロック・ファンや一部の評論家から批判もありました。
一方で、商業的成功と大衆性は否定しがたく、多くのヒット曲を残したこと、そしてホーン主体のバンド・フォーマットをロックの文脈で確立した意義は音楽史上大きな価値があります。2016年にはロックの殿堂(Rock & Roll Hall of Fame)への殿堂入りが決まり、その功績が正式に評価されました。
Chicagoの影響と後世への遺産
Chicagoが残した遺産は多方面に及びます。まず第一に、ロック・バンドにおけるブラス・アンサンブルの可能性を広げた点が挙げられます。ジャズやR&Bの要素をロックに持ち込むことで、後続のバンドや編成に影響を与えました。
また、シングル曲の質とアルバム全体の構成を両立させる姿勢は、商業性と芸術性のバランスを図るサンプルとして参照されることが多いです。70年代の組曲的なアプローチや、80年代のプロデューサーとの協働による洗練されたサウンド設計など、時代ごとに異なる手法を取り入れ続けた柔軟性も学ぶべき点です。
現代における活動とファン層の広がり
結成から半世紀以上が経過した現在も、Chicagoはツアーを続けており、往年のヒット曲を求める中高年層のファンに留まらず、新しいリスナー層にも届く演奏を行っています。リユニオンや企画ツアー、リマスター再発などを通じて、過去の名作が再評価される機会も増えています。
一方で、バンドの核となるオリジナルメンバーは次第に減少しており、歴史的なサウンドをどのように現代に継承していくかが今後の課題です。ツアーやライブの現場では、管楽器の生演奏を重視したアレンジが受け継がれており、Chicagoの音楽性は比較的忠実に保存されています。
まとめ:Chicagoの音楽的意義
Chicagoは、ブラス・セクションを中心に据えた独自のロック語法を築き、商業的成功と音楽的挑戦の両面で長いキャリアを保ってきました。時代ごとに変化する音楽市場に柔軟に対応しながらも、バンド固有のサウンド・アイデンティティを持ち続けた点が彼らの強みです。過去の名曲は今もライブで輝きを放ち、多くのミュージシャンやリスナーに影響を与え続けています。
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参考文献
- Wikipedia: Chicago (band)
- AllMusic: Chicago Biography
- Rock & Roll Hall of Fame: Chicago
- Official Site: Chicago
- Wikipedia: If You Leave Me Now
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