Cream — ブルースからサイケデリックへ、ロック史を変えたスーパーグループの全貌

序章:なぜCreamは特別だったのか

Creamは1966年にロンドンで結成されたエリック・クラプトン(ギター)、ジャック・ブルース(ベース/ボーカル)、ジンジャー・ベイカー(ドラムス)によるトリオで、わずか数年の活動期間ながらロック史に大きな足跡を残した「最初のスーパーバンド」として知られています。ブルースを基盤に持ちながら、ジャズ的な即興演奏、サイケデリックな音響処理、当時としては異例の楽曲の長尺化やライブでの拡張演奏を導入し、ハードロックやヘヴィメタル以降の多くのジャンルに影響を与えました。

結成と初期〜音楽的背景

3人はそれぞれ豊かなブルース/ジャズ経験を持っていました。クラプトンはブルースをルーツに持つギタリストとして既に注目を集めており、ジャック・ブルースはジェフ・ベックやジョン・マクルーアといったシーンで経験を積み、ジンジャー・ベイカーはポリリズムやジャズ志向のドラムで知られていました。1966年に出会った3人は、単純なブルース・カバーを超えた新しい表現を模索し、短期間で独自のサウンドを確立していきます。

主要作品とその特徴

Creamの公式スタジオ・アルバムは代表的なものだけでも数枚あり、それぞれ異なる側面を示します。

  • Fresh Cream(1966) — ブルースの直系を保ちつつトリオのダイナミクスを示したデビュー作。
  • Disraeli Gears(1967) — サイケデリック要素とポップ性を融合させた傑作。プロデューサーのフェリックス・パッパラルディの関与によりアレンジの幅が広がり、代表曲の一つとなる“Sunshine of Your Love”や“Strange Brew”を含む。
  • Wheels of Fire(1968) — スタジオ・ディスクとライブ・ディスクから成る二枚組で、スタジオでの洗練とライブにおける即興性の両面を提示。ライブでは長尺化した即興演奏が顕著で、後のハードロックやジャム・バンドの先駆けとなった。
  • Goodbye(1969) — 解散直前に発表された作品で、スタジオ曲とライヴ音源を収録。グループとしての終結を示す記録でもある。

代表曲と音楽的分析

代表曲は多数ありますが、特に“Sunshine of Your Love”、“White Room”、“Crossroads(ロバート・ジョンソン曲の演奏・編曲)”はバンドの多面性を端的に示す曲です。クラプトンのギターはブルース・フレーズを基調にしつつ歪みを活かしたリードを展開し、ジンジャー・ベイカーのドラムはロックの常識を超える多層的なリズムを刻みます。ジャック・ブルースは高音域のベース・ラインや力強いボーカルでメロディとリズムの双方を担い、3人の個性が相互に溶け合うことによってサウンドが完成します。

ライブと即興性

Creamはスタジオ作品と同様にライブでの即興演奏で名を馳せました。短い曲を延長して10分〜20分に及ぶインプロヴィゼーションに発展させることが多く、各メンバーのテクニックや相互作用が前面に出る場となりました。このアプローチは、ロックにおける演奏技術の鑑賞的側面を提示し、後のプログレッシブ・ロックやジャム・バンド文化に繋がります。

プロダクションとサウンド形成

特に《Disraeli Gears》以降、フェリックス・パッパラルディのプロデュースが重要な役割を果たしました。彼はアレンジ面での提案やオーケストレーション的な要素を導入し、サイケデリックなテクスチャーを取り入れることでバンドの音像を拡張しました。また、クラプトンのアンプ・セッティングやピックアップ選択、エフェクトの使用が独特なギター・トーンを生み出し、それがギター・ロックの一つの基準になりました。

内部の軋轢と短命な活動

Creamの活動はわずか数年に留まりましたが、これは当時の彼ら自身の関係性や音楽的要求の相違が原因でもありました。特にジャック・ブルースとジンジャー・ベイカーの確執は公然のもので、ツアーやレコーディングのストレスが増す中で関係は悪化しました。また、各メンバーがソロ活動や他プロジェクトへの興味を持ち始めたことも分裂の一因です。1968年に解散を決定し、その後アルバム『Goodbye』などで一連の活動の終わりを迎えました。

再結成と評価の変遷

解散後もメンバーはそれぞれソロキャリアで成功を収めましたが、1993年にはロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)入りを果たし、当時の評価が体系化されました。2005年にはロイヤル・アルバート・ホールでの再結成公演が行われ、オリジナル・メンバーによる演奏は大きな話題となりました(その後公式にライブ盤も発売)。その後、ジャック・ブルースは2014年に、ジンジャー・ベイカーは2019年に他界しましたが、Creamの音楽的遺産は継続して研究・再評価されています。

影響と遺産

Creamの影響は多方面に及びます。三人編成のトリオでありながら音の厚みとダイナミクスを実現した点は、多くのパワー・トリオ(後のディープ・パープル、レッド・ツェッペリンの初期など)に影響を与えました。即興演奏と高度な演奏技術をロックの中心に据えたことは、演奏中心のロック文化を深化させ、ギター・ヒーロー像の形成にも寄与しました。さらに、ブルース曲の現代的な解釈やサイケデリックな音響表現により、ロック音楽の表現領域を拡大しました。

ディスコグラフィ要点

  • Fresh Cream(1966)
  • Disraeli Gears(1967)
  • Wheels of Fire(1968)
  • Goodbye(1969)
  • その他:各種ライブ盤や編集盤、2005年ロイヤル・アルバート・ホール公演のリリースなど

演奏技術と各メンバーの役割

ジャック・ブルースはベースを単なるリズム楽器以上に扱い、メロディックなラインや高域を多用してバンドの中心的旋律を担いました。ジンジャー・ベイカーはジャズ志向のフィルや複雑なビートを取り入れ、ロック・ドラマーの表現域を拡張しました。エリック・クラプトンはブルースを基礎に確かなフレージングとタイム感を持ち込み、歪みやトーンで新しいギタースタイルを提示しました。三者の相互作用がCreamの“音”を作り上げている点は聴きどころです。

現代への示唆

Creamの活動から得られる教訓は多いですが、特に「短期間で強烈な影響を残す」ことの意味が重要です。音楽的な新機軸を追求する際、個の才能が衝突しがちである一方、衝突が革新を生むことも示しました。現代のバンドやプロジェクトにとって、演奏技術・即興性・スタジオ・プロダクションのバランスをどう取るかは重要な課題であり、Creamの事例はその一つの参照点となります。

結び:短命ゆえに鮮烈な伝説

Creamは活動期間が短かったために人物像や伝説が際立ちやすく、その音楽は断片的な名演と傑作アルバムとして歴史に刻まれました。解散から長い年月が経過した今も、彼らの楽曲や演奏は新しい世代のミュージシャンやリスナーに影響を与え続けています。ブルースを出発点としながらロックを新境地へ押し上げたCreamの足跡は、20世紀後半の音楽史における重要な章です。

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参考文献