エリック・クラプトンの軌跡 — ブルースを受け継ぎロックを再定義したギターヒーロー

序章:ブルースの申し子、エリック・クラプトンとは

エリック・クラプトン(Eric Clapton)は、1945年3月30日にイングランド、サリー州リプリーで生まれた。若くしてブルースに傾倒し、その生真面目で感情表現豊かなギタープレイで世界的な評価を築いた。ヤードバーズ、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズ、クリーム、ブラインド・フェイス、デレク・アンド・ザ・ドミノスといったバンドを経てソロへ転じ、ロック/ブルース界に計り知れない影響を与え続けている。

幼少期と音楽的出発点

クラプトンは母パトリシア(Patricia)に生まれたが、幼少期は祖父母に育てられ、父親の存在は長らく知らされなかったという複雑な家庭環境で成長した。10代の頃からギターに没入し、アメリカ南部のブルース(ロバート・ジョンソン、マディ・ウォーターズ、B.B.キングなど)に深い影響を受ける。地元のバンド活動を経て1963年にヤードバーズに加入、ここで英米のブルースをロックへと消化する手腕を披露する。

1960年代:ブルースブームとスーパーバンドの結成

ヤードバーズ在籍中、バンドの方向性の違いから1965年に脱退し、ジョン・メイオール&ザ・ブルースブレイカーズに参加する。ここでクラプトンのサウンドはさらに研ぎ澄まされ、「ビッグ・ブルース・ギタリスト」として注目を集める。

1966年、ジャック・ブルース(ベース)とジンジャー・ベイカー(ドラム)とともにトリオ、クリームを結成。サイケデリック要素を含んだロックと即興演奏が合わさった演奏は大きな反響を呼び、クラプトンの名声は不動のものとなる。クリームは短命ながら『Fresh Cream』『Disraeli Gears』などでロック・ギターの新たな方向性を提示した。

1970年前後:デレク・アンド・ザ・ドミノスと“Layla”

クリーム解散後もクラプトンは多様なプロジェクトを経て、1970年にデレク・アンド・ザ・ドミノスを結成。アルバム『Layla and Other Assorted Love Songs』は、その情念的なタイトル曲「Layla」を含み、ギターの対話的なフレーズ(特にデュアン・オールマンとの共演)でロック史に残る名盤となった。この時期、クラプトンはジョージ・ハリスンの元妻パティ・ボイドに対する片想いを創作の原動力にしていたことが知られている。

ソロ時代と商業的成功

1970年代以降、クラプトンはソロ活動に専念。1974年の『461 Ocean Boulevard』収録のボブ・マーリー曲カバー「I Shot the Sheriff」が世界的ヒットとなり、ソロ・アーティストとしての地位を確立した。1977年の『Slowhand』には「Wonderful Tonight」「Cocaine(JJケイル作)」などが収められ、幅広いリスナー層に受け入れられる。

1992年に発表したアコースティック・アルバム『Unplugged』は大ヒットを記録し、シンプルに楽曲と歌・ギターの表現を前面に押し出すことで新しい評価を得た。同作に収録されたアコースティック版「Layla」と「Tears in Heaven」は特に強い印象を残す。

プレイスタイルと機材

クラプトンのプレイはブルースに根ざしつつメロディ重視で知られる。無駄を削ぎ落としたフレーズ選び、表現力に富んだビブラートと音色のコントロールが特徴だ。初期はギブソンのギターを好み、その後フェンダー・ストラトキャスターを愛用するようになる。特に“Blackie”と呼ばれるストラトキャスター(3本の中古ストラトを組み合わせた1本)は彼の代表的なギターで、2004年にチャリティオークションで販売され高額を記録した。

私生活と試練:依存症と喪失

クラプトンは1970年代から1980年代にかけて薬物とアルコール依存に苦しんだ時期があり、長期のリハビリを経て回復へと向かった。1991年には当時の恋人との間に生まれた息子コナーがニューヨークでの事故により4歳で逝去するという深い悲劇に見舞われる。コナーの死は「Tears in Heaven」をはじめ多くの作品に直接的な影響を与え、以後の活動や人生観に大きな刻印を残した。

社会貢献とクロスロード・センター

自身の依存症体験を踏まえ、クラプトンは1998年にアンティグアにリハビリ施設「Crossroads Centre」を設立し、回復支援に取り組んでいる。この施設を支援するために定期的にクロスロード・ギター・フェスティバルを主催し、世界中の著名ギタリストたちがチャリティ・ステージに参加している。

受賞歴と栄誉

クラプトンはキャリアを通じて数多くの賞を受けている。グラミー賞は複数回受賞しており(受賞回数は時点により増減するため公式の最新情報を参照いただきたい)、ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)にはバンド/ソロ双方で複数回にわたり関係者として迎えられているなど、その功績は広く認められている。

影響と遺産

クラプトンはブルースを英国の若者文化へと深く根付かせ、その表現をロックのメインストリームへ橋渡しした。後進のギタリストたち(スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ジョー・ボーナマッサらも含む)に大きな影響を与え、ギタリスト像の一つの基準を作り上げた。演奏スタイル、音色への拘り、曲作りの内省性はいまも多くのミュージシャンやリスナーに参照されている。

代表作と聞きどころ(入門ガイド)

  • 『Layla and Other Assorted Love Songs』(Derek and the Dominos)— 叙情的かつ激情的なロック・ブルースの名盤。
  • 『461 Ocean Boulevard』— ソロ転向後の代表作。ポップな側面とブルース感覚が融合。
  • 『Slowhand』— 「Wonderful Tonight」など、シンプルで心に残るメロディが光る。
  • 『Unplugged』— アコースティック編成での再評価作。「Layla」や「Tears in Heaven」は必聴。
  • 『From the Cradle』— 伝統的ブルースへの真摯なオマージュ。

まとめ:ブルースを継承し続ける表現者

エリック・クラプトンは、単なる技術的な名手にとどまらず、感情表現と楽曲の説得力で聴衆を惹きつけるアーティストである。成功と挫折、喪失と再生を経た彼の音楽は、多層的な深みを持ち、ロック/ブルース史における重要な位置を占めている。ギターを通して語られる彼の物語は、今後も多くの世代に受け継がれていくだろう。

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参考文献