DOOM 4の真実:開発史・ゲーム性・遺産を徹底解説
導入 — DOOM 4とは何だったのか
「DOOM 4」という呼称は公式タイトルではなく、id Softwareが2000年代後半から2010年代前半にかけて進めていた次期DOOMプロジェクトの通称としてゲーマーやメディアが用いた名前です。本稿では、その迷走した開発経緯、最終的に2016年に発表・発売された『DOOM』(通常はDOOM (2016) と区別されることが多い)への転換、そしてゲームデザインや技術的特徴、さらにその後のシリーズへの影響までを体系的に整理して解説します。
開発史の流れ — 迷走と再出発
DOOM 4と呼ばれたプロジェクトは、Doom 3(2004年)以降のid Softwareが次世代のDoomを模索する中で立ち上がりました。この時期、idはより「現代的」「映画的」な表現や、ストーリー志向の要素を強める方向も模索しており、そのデザインは従来の高速アクション志向のDoom像とは距離があるものになっていきました。
結果としてプロジェクトは長期間にわたり設計の揺れや再構築を繰り返します。複数回のリブートや方針転換が行われ、最終的には初期に目指していた方向性は破棄され、根本から作り直す決断がなされました。この過程には、id内部の体制変化や技術基盤の移行、そして業界全体のトレンド(トータルな没入演出やFPSのRPG的要素の台頭など)が影響しています。
開発チームと経営陣の間で方針が一致し、かつ作品としての核心(“DOOMらしさ”)を取り戻すべく再構築されたプロジェクトが、最終的に2016年に発売された『DOOM』です。開発中にidの重要人物であるジョン・カーマックがOculusへと移籍したこと(2013年)は、技術開発体制や組織面に影響を与えましたが、チームは新たなディレクションで再出発します。
デザイン哲学:なぜ『DOOM (2016)』は原点回帰になったのか
2016年版DOOM(以下、DOOM 2016)は、「push-forward combat(前進して戦う戦闘)」という設計方針を明確に打ち出しました。これは被弾を極力避けるのではなく、敵に接近して攻めることを促す戦闘設計です。プレイヤーは高い機動力と強力な武器を駆使して敵の群れを切り崩し、戦闘中に回復や弾薬を得る仕組み(グローリーキルでの回復・アーマー入手など)によってテンポある攻めのプレイが成立します。
この方針転換は、かつての『DOOM』シリーズのアリーナ的戦闘感覚を現代の技術・表現で再現する試みでした。レベルデザインは広めの戦闘空間と複数の進入経路を用意し、敵の配置・ウェーブ設計で“瞬時の判断と反応”が報われるように作られています。また、武器カスタマイズや装備のツリー的要素は最小限に抑えられ、純粋な技術と戦術が評価される設計となっています。
ゲームプレイの要素と特徴
- 高速な移動とフロー重視:ダッシュや二段ジャンプなどの機動要素で移動が戦術に直結。
- グローリーキル:ダメージを与えた敵に近づいて演出を伴うフィニッシュを行うことで体力やアーマーを回復するシステム。
- リチュアル的ではない進行:ミッションや遭遇が連続するアリーナ式のチャンクで構成されており、短い緊張と開放の繰り返しが快感を生む。
- 武器の個性と改造:各武器は明確な役割を持ち、装着型のモッドで一時的に性質を変化させることができる。
- マップと探索のバランス:主要ルートはテンポを重視しつつ、サイドエリアで探索や収集要素が用意されている。
技術面:エンジンとパフォーマンス
DOOM 2016はidの新世代エンジンを採用し、当時としては高品質のレンダリングとフレームレートを両立させることを目指しました。発売後にはPC向けにVulkan APIサポートが追加され、低レイテンシかつ高フレームレートを達成するための最適化が進められました。これにより、軽快な操作感とビジュアルの両立が実現されています。
また、マルチプラットフォームでの開発で安定した体験を提供するためのエンジン設計、ツールチェーンの整備、そしてSnapMapなどのユーザー側創作ツールの導入も技術面の大きな特徴です。SnapMapは非プログラマーでもマップやゲームモードを組めるツールとして評判を呼びましたが、機能面・受容は賛否両論でした。
サウンドトラックと演出
DOOM 2016のサウンドトラックはミック・ゴードン(Mick Gordon)による重厚かつ攻撃的なサウンドで高く評価されました。ギターや電子音、ノイズを組み合わせたトラックは戦闘のテンポと直結し、プレイヤーのアドレナリンを刺激するものです。サウンドデザイン全般も銃撃感やモンスターの肉感を強調する方向で作られており、演出的な面でもシリーズの核を現代的に再解釈しています。
発売後の評価と問題点
DOOM 2016は批評面で高評価を受け、特にシングルプレイの設計や戦闘の爽快感は多くの評論家・プレイヤーから称賛されました。一方で、導入されたマルチプレイヤーやSnapMapの一部要素には賛否があり、マルチは商業戦略やバランス面で批判を浴びることもありました。また、キャンペーンの長さや難易度調整に関する議論も見られます。
DOOM 4の教訓とシリーズへの影響
「DOOM 4」の迷走と『DOOM (2016)』への生まれ変わりは、ゲーム開発における方向性の重要性を再確認させる事例です。ブランドとしての核(速さ、直感的な攻撃性、瞬間的な達成感)を再定義し、それに合致したシステムと技術を選択することの重要性が示されました。
また、DOOM 2016の成功はシリーズを現代に復活させ、続編『DOOM Eternal』(2020年)へとつながります。DOOM EternalではDOOM 2016で確立されたコアを踏襲しつつ、新たなギミックやストーリー構築、より複雑な敵との相互作用を導入してシリーズを深化させました。
まとめ — DOOM 4が残した意味
「DOOM 4」と呼ばれた未完成プロジェクトの試行錯誤は決して無駄ではなく、最終的に生まれたDOOM 2016はその試行錯誤から学んだ結果の結晶です。ゲームデザインのコアを見失ったとき、ブランドの本質に立ち返ることの重要性、そして技術的選択が遊びの質に直結することを示した事例として、DOOMの近年の歩みは業界における貴重なケーススタディとなっています。
参考文献
- DOOM (2016) - Wikipedia
- id Software - Wikipedia
- John Carmack - Wikipedia
- Mick Gordon - Wikipedia
- Doom (franchise) - Wikipedia
- Doom Eternal - Wikipedia
- Bethesda公式サイト
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