増三和音(オーギュメント・トライアド)を徹底解説:構造・機能・実践的応用と楽曲での使い方
オーギュメント・トライアド(増三和音)とは
オーギュメント・トライアド(日本語では「増三和音」)は、長三度を二度重ねて作られる三和音で、根音(R)、長三度(M3)、増五度(aug5)から構成されます。代表的な例としてはC–E–G#(表記によってはC–E–A♭)が挙げられます。和音の記号としては「Caug」「C+」「C(#5)」などが用いられますが、文脈により意味が変わることがあるため注意が必要です。
構造と音程関係
増三和音は根音から見て4半音(長三度)とさらに4半音(長三度)という均等な積み重ねでできており、4+4+4で12半音=1オクターブを均等に分割する対称性を持ちます。この対称性のため、増三和音はいくつかの独特な性質を持ちます。例えば、ある増三和音を根音から見て転回したものは、実質的に同じ音組(ピッチクラス集合)になるため、和音の機能や識別が他の三和音に比べて曖昧になりやすいという特徴があります。
音楽理論的な性質(対称性と数の制約)
12平均律において、増三和音は4種類しか存在しません。これは、増三和音がオクターブを3等分(長三度=4半音ずつ)することにより、各和音が3つの転回形を通じて互いに重なり合うためです。音高クラスの集合で表すと、{0,4,8}, {1,5,9}, {2,6,10}, {3,7,11}の4つに分けられます。したがって、Caug, C#aug, Daug...のように見えても音集合としては4種類に収束します。
表記と記号の違い
増三和音を表す代表的な記号は以下のとおりです。
- Caug(augmented)
- C+(プラス記号)
- C(#5) または C+5(#5表記)
ただし、ジャズやポピュラー音楽の文脈では「C7(#5)」「Cmaj(#5)」など、テンションや和音種別(ドミナント、メジャー7含むなど)を示すために#5が付された形で登場することが多く、単純な増三和音とは機能が異なる場合がある点に注意が必要です。
響きの特徴(聴感)
増三和音は一般に〈不安定で浮遊感のある響き〉と形容されます。これは対称性と増五度(トライトーンとは異なるが不協和に寄る増えた五度)の含意によるもので、明確な機能的帰結(強い解決先)を一義的に指し示しにくい性質があります。一方で、和音自体に色彩的・空間的な広がりがあり、モダンな響きや幻想的な空間を作るのに適しています。
転回と音形(ボイシング)の扱い
増三和音は転回しても同じ音集合になるため、転回形ごとの差異は機能的には小さく、ボイシング次第で色彩が大きく変わります。最も重要なのは各声部の動き(voice-leading)で、隣接してステップ的に動かすことで和声の連続性を保ちつつ、増三和音特有の色彩を活用できます。
和声機能:古典派〜ロマン派における用法
古典派の厳密な機能和声では増三和音は制約されて用いられましたが、ロマン派以降は増三和音は転調や色彩付けの手段として頻繁に用いられます。特にリスト、ワーグナーなどの作曲家は、増三和音の半音的・長三度による変化を利用して大胆な移調や曖昧な調性を作り出しました。増三和音は一つの和音から複数の調へと滑らかに導く“橋渡し”的な役割を果たすことが多いです。
ジャズ/ポピュラー音楽での活用
ジャズでは増三和音は主に次のように使われます。
- ドミナント・コードの#5(例:G7(#5))として、トニックへの半音的導音を作るためのテンションとして
- 上声構成(upper-structure)として、別のルート上に積まれた増三和音を用いることで豊かなテンションを与える
- 単独で色彩的な使用(イントロや間奏のアクセント)
特に上声構成理論では、ピアニストやギタリストが右手で増三和音を弾き、左手またはベースで異なるルートを鳴らすことで複雑なテンションを簡潔に表現します。
スケールとの関係
増三和音は幾つかのスケールの中に自然に含まれます。代表的なものは全音音階(whole-tone scale)で、全音音階の中には増三和音が明確に現れます。また「オーギュメント・スケール(augmented scale)」と呼ばれる六音(ヘキサトニック)音階も存在し、これらのスケール構成音から増三和音が導き出せます。実践上は、増三和音を上に持つコードに対して全音音階やオーギュメント・スケールの一部をメロディやソロの選択肢として用いることが多いです。
解決とボイス・リーディングの例
増三和音は明確な解決を持たないことが多いですが、使い方によっては非常に効果的に目的和音へ導けます。代表的なボイス・リーディングの手法:
- 共通音を保ちながら残る声部を半音で近接させて解決する(半音進行による色彩的転換)
- 増五度の音を半音上または下に解決させて目的和音の重要な構成音に導く(例:GaugのD#をEへ動かしてC方向へ)
- 増三和音を媒介にして、ルートを大きく移動させることでモジュレーションを行う(3等分の対称性を利用した移調)
実際のスコアでは、ベートーヴェン以降の作曲家が半音的移動やクロマティシズムのために増三和音を用いており、声部の細かな動きによって効果が決まります。
楽曲での具体的な使用例(代表的な傾向)
増三和音は以下のような場面でよく見られます。
- 導入部や間奏での色彩的なアクセント(ポップス/映画音楽)
- テンションを強めたドミナント代替(ジャズ)
- 調性を曖昧にするためのモジュレーションの媒介(ロマン派以降のクラシック)
具体的な楽曲例を挙げると説明が分かりやすいですが、作品名の断定的な記述は様々な編曲や解釈があり得るため一般的な使用法の説明に留めます。増三和音は作曲家によって使い方が多様で、同じ和音でも文脈によって機能が変わることが重要です。
編曲・作曲での実践的アドバイス
増三和音を曲作りや編曲で使う際のポイント:
- その響きが〈不安定さ〉を与えることを意識し、使う位置を決める(解決を伴わせるか、むしろ不解決のまま響かせるか)
- ボイシングで重心を上下に動かすことで明確さを出す(低音に持ってくると重厚に、高音寄せだと色彩的)
- 全音音階などのスケールを意識してメロディを作ると、増三和音との親和性が高まる
- ジャズでは右手に増三和音を置き、左手やベースでルートを確保することでテンションを効果的に利用する
微分音やチューニングに関する注意
理論的には平均律以外の調律法(純正律など)では長三度の比率が異なるため、増三和音の響きや不協和感は変化します。現代の多くの実践(ジャズ、ポップス、現代クラシック)は12平均律を前提としているため、ここで説明した性質は平均律を基準にしています。
まとめ:増三和音の役割と可能性
増三和音は対称性と色彩性を併せ持つ特殊な三和音であり、過去の音楽史においては調性の境界を曖昧にするため、現代音楽では空間的・色彩的効果を狙うために活用されてきました。機能和声的な解決を明確に期待するより、増三和音は“道具としての色”、すなわち移調の媒介、テンションの導入、アクセントとしての役割に優れています。作曲や編曲においては、文脈に応じてボイシングやスケール選択を工夫することで、非常に多彩な効果を得られます。
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